トラック運送業の適正な運賃収受の実現は可能か?国が進める対策と今後について|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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トラック運送業の適正な運賃収受の実現は可能か?国が進める対策と今後について

 

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画像素材:PIXTA

 

***国際貿易でトレンドとなりつつある適正取引 ***

 

最近よく耳にする「フェアトレード」。みなさんはご存知ですか?
フェアトレードチョコやフェアトレードコーヒーなどがあるそうです。アパレル業界ではフェアトレード専門ブランドまで立ち上がっています。

子どもの頃、目の前に出された朝食を無言で食べようとすると母親に「感謝して、いただきますといってから食べなさい。」とよく叱られました。
目の前に出された食べ物は、沢山の自然の恵み、生産者やモノを運ぶ人の労働によってそこにあるのだと教えてくれました。

その頃はあまり理解できず「はい、はい」と言って適当に受け流していましたが。

 

私達は日常生活で当たり前のように、南米で作られたコーヒーを飲み、アフリカで作られたココアを飲んでいます。
しかし、こうした飲み物や食べ物が作られる過程において、原産国の労働が犠牲になっているなんてことは、殆どの人が知りません。

発展途上の原産国では、1日働いて、その日の食事もまともに出来ないわずかな賃金を受け取って貧しい暮らしをしている人たちが沢山います。

私達はそんなことはつゆ知らず、日頃スーパーに買い物にいってつい安い商品を求めてしまいます。
消費者心理からすれば当然のことです。

企業も利益を出す為に原料を買い叩きます。それでも納期や品質には厳しい要求をします。
利益を出すことを目的としている企業ではそれを当然の行為だと思ってやっているのですが、行き過ぎた利益の追求は必ず末端で犠牲が生まれます。

 

フェアトレードとは発展途上国で生産された原料や商品を適正な価格で継続的に取引し、生産者の生活向上につなげようとする取り組みのことです。

フェアトレード商品には下記のマークがついています。
類似商品と比較すると価格が高くなりますが、購入することで原産の発展途上国の人々の生活の向上に貢献できるという仕組みです。

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消費者はフェアトレード商品を購入することで「フェアな取引をしている」という心理的な満足感を得ることができます。

フェアトレードの取り組み自体にはまだまだ多くの課題も残されています。
生き残りをかけたビジネスの世界で「どこまできれいごとが通用するのか」といった批判的な意見もあれば、末端の生産者に流れるはずのお金を中間の業者が窃取するケースも少なからずあるようです。

下記はフェアトレードについて分かり易く紹介した動画です。(※YouTubeで開きます)

https://www.youtube.com/watch?v=2NlAsvOsPlQ

 

***荷主が提示する運賃がベース***

 

国際貿易でトレンドとなりつつあるこうした適正取引の考え方が国内取引でも必要だと感じます。
筆者は仕事の関係上、多くの物流企業と関わっていますが現場が殺伐としていると感じることが多いです。
生き残りをかけた厳しい競争に日々奔走する経営層の危機意識が過剰なポテンシャルを生み出し、現場まで浸透してしまっているようです。

運送事業者と荷主との間では以前から「適正運賃」についての問題があります。
東ト協連が発表した「運賃動向に関するアンケート調査」によると、「運賃が希望よりも低い」と回答した企業は9割もいました。

こうしたトラック運送の事業環境の改善に国が本腰を入れて動き始めています。

国土交通省は「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」を設置して運賃や料金についての検討を始めました。
本検討会で整理された資料では、運賃・料金に関しトラック事業者からよく聞かれる意見として、

1.目安となる運賃を定めて欲しい。

2.原価計算に基づく受注を徹底すべき。

3.運送以外のコストを適切に収受できるようにして欲しい。

と記載されています。

同検討会が実施した「取引先と運賃を決める方法」についてのアンケート調査によると、「取引先が提示する運賃・料金をベースに決定している」と回答した企業が39.1%と最も多い回答でした。

ヤマト等の宅配業者の運賃値上げにより、運送会社と荷主の形勢逆転がトレンドとなりそうな予感もありますが、実際にはまだまだ荷主主導で運賃が決定されているのが実状のようです。

 

国土交通省では、これまでも「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」の策定や改訂を行ってきましたが、今後もより適正な取引の普及につながるガイドラインになるよう改訂を行っていく予定です。

また運送以外の付帯作業の料金についても適正に収受できるように「標準貨物自動車運送事業約款」の改正も検討中です。
告示の施行は平成29年11月を予定しています。

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***まとめ***

 

荷造り・検品、待機時間、荷卸しや棚入れ等の物流の派生業務の費用を荷主側と運送側のどちらが持つのかといった議論はこれまで常につきまとってきました。
しかしこうした議論はこれまで配送を発注する荷主側が優位になりがちな商慣行がありました。

運送事業者のおよそ3割が積み込みや待機時間などの付帯作業の料金を荷主から収受できていません。また待機については、配送全体の46%におよび、平均待ち時間は1時間45分に上っています。

こうした問題に国が本腰を入れて動いてくれるのは大変喜ばしいことですが、それだけでは根本解決にはなりません。

あくまで収受するきっかけをつかめるだけであって、現場の折衝においてどれだけ効力を発揮するかについては疑問が残ります。

お互いが相手の立場を思いやり、助け合うフェアトレードの精神を養わなければ、真の解決の糸口は見えてこないのではないでしょうか。

 

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