「超人手不足」の物流業界はどう変わる?2030年近未来物流の展望(5)|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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「超人手不足」の物流業界はどう変わる?2030年近未来物流の展望(5)

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画像素材Graphs / PIXTA

 

seminarロシアで開催されているサッカーW杯。
日本代表が当初予想を覆す快進撃で2大会ぶりの決勝トーナメント進出を果たしました。
筆者は前世がアルゼンチン人ではないかと自身で疑うほどに、アルゼンチン代表のファンなのですが、残念ながら1回戦でフランスに敗れてしまいました。
4年に一度の世界サッカーの祭典もここにきて盛り上がってきましたね。
しばらく睡眠不足が続きそうです。

4年に一度といえば、国土交通省が4年に一度作成する「総合物流施策大網」という物流政策の基本方針をご存知でしょうか。

最新版は昨年7月に作成された「総合物流施策大網(2017年度~2020年度)の概要」です。
(http://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000337.htmlより本資料をダウンロードできます)

本資料によると、社会状況の変化や新たな課題に対応できる「強い物流」を構築するために、物流の生産性向上に向けた、以下6つの視点からの取組を推進していくのが示されています。

 

<1.サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革>
(1)連携・協働による物流の効率化
(2)連携・協働を円滑化するための環境整備
(3)アジアを中心としたサプライチェーンのシームレス化・高付加価値

 

<2.物流の透明化・効率化とそれを通じた働き方改革の実現>
(1)サービスと対価との関係を明確化
(2)透明性を高めるための環境整備を進める
(3)付加価値を生む業務への集中・誰もが活躍できる物流への転換

 

<3.ストック効果発現等のインフラの機能強化による効率的な物流の実現>
(1)モーダルコネクトの強化等による輸送効率向上
(2)道路・海上・航空・鉄道の機能強化
(3)物流施設の機能強化
(4)物流を考慮した地域づくり

 

<4.災害時のリスク・地球環境問題に対応するサステイナブルな物流の構築>
(1)災害時のリスクに備える
(2)地球環境問題に備える

 

<5.新技術(IoT・BD・AI等)の活用による”物流革命” + 物流分野での新技術を活用した新規産業の創出>
(1)IoT・BD・AI 等の活用によるサプライチェーン全体最適化の促進等
(2)隊列走行及び自動運転による運送の効率化
(3)ドローンの活用
(4)物流施設の自動化・機械化
(5)船舶のIoT化・自動運航船

※BD=ビッグデータのこと

 

<6.人材の確保・育成 + 物流への理解を深めるための国民への啓発活動等>
(1)物流現場の多様な人材の確保や高度化する物流システムのマネジメントを行う人材の育成
(2)物流に対する理解を深めるための啓発活動

 

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※国土交通省作成の「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)の概要」を基に筆者作成

 

注目すべきは6つめの取組です。“物流への理解を深めるための国民への啓発活動”とあります。
過去こうした国民への啓発活動が、物流施策大網に盛り込まれたことはありませんでした。
国が昨今の物流危機に社会全体の問題として本格的に改善に乗り出した証拠ではないでしょうか。
物流の課題を物流業者だけの問題としてではなく、社会全体で解決すべき問題であるということを広く啓蒙してくことは、とても大切なことだと考えています。
再配達や待機時間の問題が根本的に解決するには社会全体の協力が不可欠です。

今回は、筆者がもう一つ気になっている5つ目の“新技術を活用した物流革命、新規産業の創出”について本資料の内容を参考にしながら、2030年近未来物流の展望を考察してみたいと思います。

 

*** 革命的に変化する ***

 

本稿のテーマは2030年近未来物流の展望を予測しようというものですが、これをより深く考察するにあたって、興味深い書籍を見つけました。
「2030年の情報通信技術」というNTT技術予測研究会が書いた本です。

情報通信技術は21世紀に目覚ましい発展を遂げていて、PCや携帯端末だけでなく、身の回りの様々なデバイスがネットワークを通じて相互につながる時代になっています。

本著では、IoT技術の発展により、日常生活で利用する様々な家電製品や工業製品から大量のデータが取得されるようになると書かれています。

IoT・ビックデータ・AI(人工知能)等の利用については、コンピューターの処理能力の向上、無線通信によるデータインフラの普及によって、より低コストで高度な情報アクセスが可能となってきています。

このような状況になると、一部の人にのみ活用されるビッグデータも存在するようになると考えられます。
例えば、その企業の中だけで取得される様々なデータは、その企業で働く人たちにとっては有用であっても、それ以外の企業ではあまり役に立たないといったことも考えられます。

こうした限られた空間で収集されるビッグデータを活用する為に、一企業でも大規模分散処理技術を活用する時代が来るでしょう。

その結果、その企業で働く社員やドライバーの勤務パターンや運行状況、天候等に合わせた最適な運行シフトを自動的に組むことが可能になります。より効率的でより安全な無駄なのないシフトが実現されるのです。

またトラックの使用頻度、使用履歴に基いて必要な消耗品や交換部品などを自動手配したりすることも可能になるでしょう。

これらの新技術を活用して物流分野における膨大なデータを収集・解析することにより、飛躍的な物流の効率化とサプライチェーン全体の最適化を図ることが可能となります。
このような新技術が現在の物流の在り方を根底から覆し、革命的な変化をもたらす日は遠くないでしょう。

 

*** 状況に応じた複雑な対応が必要な物流業務 ***

 

物流業務は比較的単純作業の多いルーチンワークが多い領域だと考える人が多いようですが、実は全くその逆です。

出荷先や扱い品目によって荷姿や納品ルールが異なる為、単純作業の反復ではなく、状況に応じた的確な対応が必要とされます。
とくにピッキング作業や荷造り作業などは、機械化や自動化が難しい領域です。
大量の商品を扱う大きな物流センターの方が意外と自動化しやすく、逆に中小企業の小さな倉庫での物流業務は複雑で属人的なアナログ作業が沢山あり、自動化は難しいのです。

しかし、こうした新しい技術を活用した革命的なデータ活用によって、属人的なアナログ作業を非属人化させることが可能になるとともに、より精度の高い、安全で効率的な作業を実現できるようになるのです。
また物流領域でのこうしたデータ活用によってこれまでになかった付加価値を創出し、荷主や社会に還元できる時代がやってきます。

物流事業者間、荷主と物流事業者の間において、荷物データやトラックの位置データ等を共有することで、より正確な需給のマッチングを図ることが可能になります。
その結果、物量の平準化、待機時間の削減、積載率の向上等が期待出来ます。

 

*** 最後に ***

 

物流領域における新技術の活用を推進する上で、国に強く期待することとしては、こうした新技術の活用による補助制度の強化、インフラ等のデータ活用事業環境の整備です。
新技術の活用によって我が国の産業の国際競争力強化が進むことを期待します。

 

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