経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第十一回-|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第十一回-

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画像素材:StanislauV / PIXTA

 

*** ご用心!胃腸トラブルは万病のもと ***

 

なんか、最近体調がすぐれない。風を引きやすくなった。肌荒れやにきびが気になる。
実は、こうした症状の原因が胃腸のトラブルにあることは珍しくないそうです。
胃腸は免疫力と深い関係があり、身体全体のバランスを整える重要な器官なのです。
肩こりや疲れやすいのも胃腸が原因の場合もあるそうです。
それを知って以来、筆者もヤクルトを毎日飲むようにしています。

かつて、ナポレオンは、情報機能を頭脳活動、ロジスティクス機能を胃腸の活動として喩えました。
彼の作戦は常に情報機能とロジスティクス機能の分析を基礎として策定され、実行されたのです。
情報機能により、情勢を正確に把握し、ロジスティクス機能により、戦略の実行に必要な物質的支援を行いました。

情報機能とは、情報の収集・蓄積・分析であり、ロジスティクス機能とは物質的資材の必要量を計算し、調達・蓄積・輸送の実行です。

ナポレオンは、必要な武器や用具は自国で準備し、兵糧は敵国で現地調達する作戦を主に実践しました。
これは、孫子の兵法の作戦篇にある「用を国に取り、糧を敵による。ゆえに軍食足るべきなり」というロジスティクス戦略の実践です。

現代のサプライチェーンに置き換えると、コアな商品や部品は国内で準備し、それを海外の製造工場に送って最終工程を行うイメージでしょうか。

ナポレオンと聞くと、天才的なひらめきや、絶対的なリーダーシップで戦争に強かったという印象を持ちますが、実際は大量の武器や資材、食糧などの効率的運用がとても巧みであったと言えます。これは以前紹介した豊臣秀吉と共通します。
※参考:秀吉の賤ヶ嶽の戦いから学ぶロジスティクス

近代の戦争を見てみても、第一次世界大戦以降、戦場は広域化し、大量の人員と弾薬が使用され、胃腸活動としてのロジスティクスはその重要性を増大させました。
第一次世界大戦は石油による戦争ともいわれ、戦艦や戦車、トラック、航空機など石油がなければただの鉄の塊です。
第二次世界大戦では、物量戦の様相がさらに強まり、日米の戦いに限ってみても太平洋諸島の攻防戦はロジスティクスの戦いでした。

米軍は、独自のコンセプトに基づいて、ロジスティクスを科学的に戦略に活かしました。
例えば、硫黄島作戦の時には、戦車・火砲・弾薬から、戦死者の墓に使う木の十字架やトイレットペーパーまで現地に輸送しました。
また、一億本の紙巻きタバコも硫黄島に揚陸しています。
対して、日本軍のロジスティクスは「現地調達」を主とし、科学的、論理的思考を発展させませんでした。
ナポレオン時代のロジスティクス戦略から進歩がなかったのです。

人間が健全であるためには、健全な頭脳活動(情報)と胃腸活動(ロジスティクス)が必要です。
企業の活動もこれ同様です。情報活動やロジスティクスを軽視するのは万病のもと。
日本では、長い間ロジスティクスは地味な活動として日の目を見ることはありませんでした。
しかし、物流危機が叫ばれる今は、ロジスティクス機能の見直しと強化に関心が高まっています。

胃腸トラブルを未然に防止することで、万病から身を守りましょう。

 

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*** Logistics 4.0 ロジスティクスの新たなイノベーション ***

 

ロジスティクスは時代とともに変化し続けています。
第一次世界大戦以降において研究されたロジスティクスの技術が、現代のビジネスで応用され発展していき、これまでに大きく3つのイノベーションで経済の発展に寄与してきました。

 

■ロジスティクス1.0・・・輸送の機械化、大量輸送化

まず最初に取り上げるのは、第一次産業革命期に発展した輸送の機械化です。
第一次産業革命によって、人が都市にある工場へ集まり、大量生産が行われました。
従来の交通手段では運べなくなり、蒸気機関が実用化され、輸送手段は機械化され、大量輸送を可能にしました。

 

■ロジスティクス2.0・・・荷役の標準化、自動化

第二次世界大戦後、さらなる生産性の向上を求めて、荷役作業の標準化と自動化が行われました。
そこに登場したのが輸送用のコンテナです。
トラックのシャーシとコンテナを分離し、船や鉄道に積み込むことで輸送効率を格段に向上させることが出来たのです。

自動倉庫もこの頃に誕生しました。日本国内でも高度経済成長期を迎え、製造業を中心に人手不足が大きな課題となっていました。
倉庫内の入出庫作業や在庫管理を機械化する目的で自動倉庫が開発され、導入が進みました。

 

■ロジスティクス3.0・・・物流の情報システム化

それまで紙や電話等で行われていた処理がITによって、データベース化され、多くの関係者が蓄積されたデータを共有し、それ
まで見えなかった情報が簡単にパソコンで見えるようになりました。

倉庫管理システム(WMS)、在庫管理システム(IMS)、輸配送管理システム(TMS)等の物流業務専用のシステムが企業に導入され、モノの所在や量を正確且つ、容易に管理することが出来るようになったのです。

 

■ロジスティクス4.0・・・スマートロジスティクス化、超効率化、省人化

これからのロジスティクスは、AI、IoTなどの最新テクノロジーによって、あらゆる物流機器やシステムが繋がり、これまで人が行ってきた作業をロボットが行うようになり、超効率化、省人化がさらに加速すると予測されます。

こうした技術により、実現されるスマートロジスティクスの世界では、トラック・マテハン機器・ネットワーク端末(ハンディターミナルやスマフォ等)がインターネットに常時接続された状態で、クラウド上にあるデータベースにリアルタイムにアクセスします。

 

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顧客からオーダーがインターネット経由で受信され、輸送コスト、リードタイムを考慮して最も最適な倉庫から自動引当されます。
引当された倉庫では、自動的にAIが最適な配車を支援します。
引当された在庫は自動補充システムにより最適な補充数量が計算され、仕入先や工場に発注データを送ります。
倉庫からトラックに商品が積まれて出荷された後も、コンテナやパレットに取り付けられたRFIDタグによってトラッキングシステムがデータをリアルタイム管理し、常時商品の所在が倉庫と顧客で確認が出来ます。

いずれ、トラックの自動運転、ピッキングロボによる自動ピッキングなども実用化が進めば、ほとんど人を介在することなく、
オーダーから納品まで完結出来るようになります。

スマートロジスティクスが実現すれば、仮にこれまで50人でオペレーションしていた倉庫も5人で運用出来るようになると言われるほどです。

 

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*** まとめ ***

 

日本の物流業界では最新のテクノロジーを活用しても、現場の経験や勘を超えることが出来ないという考え方が今でも強く根付いています。
最新の技術に関心は寄せても、なかなか導入に踏み切ることが出来ない場面を幾度となく目にしてきました。

経済の構造が日本とよく似ていることから比較されることも多い、ものづくり大国ドイツはインダストリー4.0でIoT活用によるスマートファクトリーの構築を目指しています。
スマートファクトリーでは、工場内のあらゆる設備にセンサーが取り付けられ、インターネット経由で情報をリアルタイムに収集、分析します。
人の介在を最小限に抑えることで、これまでになかったレベルでの生産活動を実現しようと試みています。
ドイツ政府は、その普及のためのナショナルプラットフォームを作り、企業や大学、研究機関などと協力してその実現を急いでいます。

ロジスティクス4.0はまさにその物流版です。
IoTセンサーをトラック、リフト、各種マテハン機器に取り付け、そこから収集される膨大な情報を有効活用し、自律的に物流オペレーションを行うことを目指します。
またそこで収集されたビッグデータから最適解を瞬時に導き出すのがAIの役目です。

ロジスティクス4.0によって、物流業務の仕方やビジネスモデルそのものが変革していくことは間違いありません。

 

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