ABC分析ではもう限界!在庫4象限分析で在庫をもっと最適化しよう!|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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ABC分析ではもう限界!在庫4象限分析で在庫をもっと最適化しよう!

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画像素材:makaron* / PIXTA

 

seminar<目次>
1.在庫管理の鉄板、ABC分析
2.ABC分析ではもう限界!?
3.4象限分析フレームワークを在庫分析に応用しよう
4.まとめ

 

●1.在庫管理の鉄板、ABC分析

 

在庫は単純に良い在庫、悪い在庫と判断出来ません。
ビジネスにおいて在庫というのは様々な視点で分析をする必要があります。
企業の状態や戦略によって、良い在庫にもなるし、悪い在庫にもなるという点が実にやっかいなのです。

在庫管理の教科書に習うと、品目毎の管理特性を分析する方法としてABC分析が主に紹介されます。
ABC分析とは、各品目の売上金額・売上数量・出庫頻度の3項目について、それぞれ値の大きい順に並べて、ABCの3つに分類して品目の特徴を明らかにする分析手法です。

ABC分析を行うことで、沢山ある在庫品目の中からどの品目を優先的に管理するかを簡単に導きだすことが可能になります。
この分析手法は重点分析とも呼ばれ、在庫管理に限らず様々な経営分析に用いられています。
以下の表はエクセルで品目毎の売上金額のABC分析を行ったものです。

 

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この表では売上割合が0~80%までの品目をランクA、81%~90%の品目をランクB、91%~100%までの品目をランクCとして作成しています。
ちなみに各ランクの閾値(しきいち)は任意に設定します。(上位70~80%までをAにするのが一般的)

Aランクの品目は売上貢献度が高いので、欠品しないように優先度を上げて在庫管理を行います。
Bランクの品目はなるべく欠品しないように管理し、Cランクの品目は品切れ後に発注、もしくは廃版の検討を行います。

このように各ランク毎に優先度をつけて、運用ルールを定めることで在庫を効率的に管理することが可能になります。

 

●2.ABC分析ではもう限界!?

 

ABC分析が大変便利で在庫管理に有効であることがお分かり頂けたかと思います。
しかし、在庫を最適化するには、このABC分析だけでは限界があるのです。
例えば上の表で、売上金額Aランクの商品はそもそも単価が高いのか、それとも売上数量が多いのかといった判断がつかないですよね。
在庫管理の本質は発注をコントロールすることなので、金額だけでなく、どのくらいの頻度、どのくらい量が動いているかを同時に見なければ品目に対して適切な発注は行えないのです。

かといって、売上金額ABC、売上数量ABC、出庫頻度ABCの表をそれぞれ作成して、見比べるなんていうことは不可能ですね。
そこで、今回皆さんにご紹介したいのは品目毎の需要特性を簡単に整理できる4象限分析のフレームワークです。
※4象限分析を英語にするとFour Dimensions Analysis。

このフレームワークはABC分析同様に在庫管理に特化したものではありません。
無秩序な現象を合理的に整理する手法として、様々なデータ分析に利用されています。
ビジネスでこのフレームワークがよく用いられる例として、TODOリストの優先順位付けがあります。
やらなければならない仕事をリストアップして、重要度と緊急度で4つに分類して優先度を決める方法です。
下の図をご覧ください。

 

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縦軸に緊急度、横軸に重要度として、マトリクスで仕事を整理しています。
緊急度が高くて重要度が高い仕事が最優先となり「すぐやる」領域に入ります。
緊急度も低くて重要度も低い仕事は暇なときにやるか、もしくは本当にやるべきかどうかを検討することになります。

しかし、この最優先項目と優先度の最も低い項目はわざわざこのような分析をしなくても判断がつきます。
この分析の良いところは、重要だけど今すぐやらなくてよい仕事、緊急だけど実は重要度は高くない仕事を整理することが出来る点です。
通常、人の脳では2つのどちらかに整理することはできるのですが、4つに分類して整理することは出来ません。
ですから、このように視覚化して整理することで、物事の事象や状況が俯瞰的に捉えられ実行や計画がやりやすくなるのです。

 

●3.4象限分析フレームワークを在庫分析に応用しよう

 

さて、4象限分析フレームワークの特徴とメリットが理解できたところで、この分析フレームワークを在庫管理に応用してみましょう。
在庫管理に応用する場合は、品目ごとの売上金額を縦軸、売上数量を横軸に設定して分析を行います(下図)

 

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まず、在庫管理を行う全品目リストを用意し、分析する対象期間を決めます(3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月等)。
次に売上高の高い順にリストを並べて、先頭から順に売上金額の累計を求めていき、累計の上位から80%に該当する品目と、残りの20%に該当する品目に分けます。ABC分析と同じ要領です。

続いて、売上数量も同様に、累計の上位80%に該当する品目と残りの20%に該当する品目に分けます。
最後に以下の通り4つに分類します。

・A領域・・・売上高上位80%に属し、売上数量下位20%に属する品目
・B領域・・・売上高上位80%に属し、売上数量上位80%に属する品目
・C領域・・・売上高下位20%に属し、売上数量上位80%に属する品目
・D領域・・・売上高下位20%に属し、売上数量下位20%に属する品目

それでは、それぞれの領域の品目の特性について見ていきましょう。

 

<A領域 高額品>

売上高が高く、売上数量が少ない品目が「高額品」となります。
高額品に分類された品目については、在庫はなるべく持たないようにして、販売計画と連動して発注をコントロールするようにしましょう。
製造業の場合であれば、この領域の製品は見込み生産ではなく、受注組立生産にする方が在庫適正化を図れます。
材料や部品であれば、生産計画をベースに必要量のみを購入し、余剰在庫を増やさないようにする運用を心がけましょう。

 

<B領域 主力品>

売上高が高く、売上数量も多い品目が「主力品」となります。
この品目については、徹底して在庫回転率を高めることが管理のポイントになります。
手間をかけてでも、可能な限り需要と連動させて過剰、欠品が発生しないようにコントロールします。
また需要の変動が激しい品目が多いのも特徴なので、短いサイクルで定点観測し、Cの普及品やDの裾野品に変化していないかをチェックしましょう。

製造業の場合であれば、ここに分類される品目は需要のばらつきが大きいため、安全在庫が多くなりがちです。
製品であれば、受注生産に切り替える、材料や資材であれば団子生産になっていないかチェックし、生産計画を均等化するといった改善が求められます。

 

<C領域 普及品>

売上高が低く、売上数量が多い品目が「普及品」となります。
普及品は薄利多売になりがちな品目なので、なるべく手間をかけずに発注管理も効率化する方向を目指しましょう。
発注は短サイクル、小ロットで行うようにしましょう。また普及品はいつまでも売れるとは限らない品目が多い特徴があるので、こちらも定点観測し、裾野品に移動してしまう前に廃版を検討するようにしましょう。

 

<D領域 裾野品>

売上高が低く、売上数量も少ない品目が「裾野品」となります。
裾野品は必ずしも死蔵品というわけではなく、高額品や主力品の販売を支援する位置づけの品目も含まれます。
よって、販売戦略に基づいて用意されている品目と、死蔵品と分けて管理を行う必要があります。
死蔵品については、廃版や在庫の廃棄等を検討する必要があります。
また製造業であれば、見込み生産から受注生産に切り替えることを検討しましょう。

 

●4.まとめ

 

今回ご紹介した在庫4象限分析は、分析する時期を決めて定点観測することで、在庫の動きが分かりやすくなります。
品目ごとに需要特性を整理し、その特性に応じて在庫適正化を図ることで、ABC分析だけでは実現できなかったより高度な在庫管理を実現できます。
是非このフレームワークを徹底活用して、自社の在庫管理をもうワンランクUPさせて下さい。
本稿がそのお役に立てれば幸いです。

 

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<参考文献>
「フレームワーク入門」プレジデントオンライン
「ABC分析とは?エクセルのやり方を覚えれば在庫管理が楽になる」Udemyメディア
光國光七郎著「在庫と事業経営」日科技連