物流としての「顧客サービス」の本質 ~運べない時代の顧客との関わり方~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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物流としての「顧客サービス」の本質~運べない時代の顧客との関わり方~

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<目次>

1.顧客絶対!?ビジネスの原理原則

2.顧客は一度受けたサービスを忘れない

3.物流における顧客サービスの定義

4.顧客サービスは標準化 or ガラパゴス化

5.まとめ

 

1.顧客が絶対!?ビジネスの原理原則

 

昨今、物流に求められるサービスレベルは過剰なまでに急上昇し、実際に商品を運ぶ物流事業者は、安定供給していくことがどんどん難しくなっています。物流業界の用語で「遅着」というのがあります。

読んで字のごとく、定刻より遅れて商品を運ぶことを言いますが、これは即クレームになります。では早く届ければ良いのかといえば、そうでもありません。反対の「早着」というのもあり、早く着きすぎてもクレームになる場合があるのです。

物流の持続可能性を高め、今後も安定供給をしていくには、物流事業者の力だけでは到底足りなくなっています。
しかし、いつの時代もサービスに対して最も大きな影響を与えるのは顧客です。顧客がそのサービスを判断し、そのサービスの質によって企業をジャッジします。いくら企業が「これが今の私たちにできる精一杯です」と言ってみたところで、顧客がサービスに満足しなければ、その市場で生き残っていくことが出来ないのです。
市場でどこの企業を選択するかは、100%顧客が主導権を握っています。厳しいようですが、これが古くから続くビジネスの原理原則です。

 

2.顧客は一度受けたサービスを忘れない

 

顧客はサービスに拘ります。常にサービスを提供する側よりも。ですから、サービスを提供する事業者は気を抜けません。
これくらいで十分だろうと考えていると、すぐにそっぽを向かれてしまうのです。

これだけ物流危機が叫ばれていれば、顧客もきっと物流のサービスレベルが落ちることは許容してくれるだろうと考えるのは大きな間違いです。顧客に「注文を出来る限りまとめて欲しい」、「運賃を上げて欲しい」、「リードタイムを伸ばして欲しい」と要望してもなかなかすぐに快諾して貰えないのはその為です。

やむを得ずに物流事業者の要望に応えてくれたとしても、これまでのサービスレベルにすっかり慣れてしまった顧客は、常にこれまでのサービスレベルを提供できる新たな事業者を探しています。

「運賃値上げに応じて貰えてよかった」と安心していると、横から別の事業者に仕事を取っていかれるといったことになります。

つまり、顧客は一度受けたサービスは二度と忘れないのです。たとえどんな事情がお互いあるにせよ、忘れないのです。私たちも今スマフォやエアコンが無い生活に耐えられるでしょうか?たとえ、どんな事情があろうとも、必ずそれを取り戻そうとあらゆる手段を探しますよね。

顧客サービスもそれと同じです。一度受けたサービスは忘れない。どんな事情があるにせよ、顧客はそれを取り戻そうとするのです。

この原理原則を忘れてしまったヤマトは送料を値上げしました。ヤマトには送料を値上げしなければならない止むを得ない事情がありました。顧客はそれを受け入れたでしょうか。市場の答えは、常に企業の業績に反映されていきます。市場は常に絶対的であり、サービスレベルは常に顧客に決定権があり、顧客は一度受けたサービスレベルを下げられることを許さず、下がったサービスを元に戻そうとします。

ピーター・ドラッガーも彼の著書『マネジメント』の中で『真のマーケティングは顧客からスタートする。
すなわち、現実、欲求、価値からスタートする。』と述べています。ドラッガーの言う「現実」とは、現在のサービスレベルも含まれます。そこからがスタートなのです。

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3.物流における顧客サービスの定義

 

物流によるサービスには有償サービスと無償サービスがあります。有償サービスとは、輸送や保管、荷役といった顧客から料金を受け取って施すサービスのことです。一方、無償サービスとは顧客から料金を受け取ってはいないけれど、顧客満足を高めるために物流事業者側が任意に施すサービスです。この無償の顧客サービスは配送前、配送中、配送後に分けられます。

例えば配送前であれば顧客に配送時間帯をお知らせしたり、配送方法を説明したりするサービスが行われています。
配送中であれば商品の位置情報を顧客に知らせたり、再配達等のサービスが行われています。配送後には商品が到着したことを顧客にお知らせしたり、商品の状態に対して顧客の問い合わせに丁寧に対応するといったことがあります。

一般的に物流の場合、この有償サービス(取引条件に含まれたサービス)のスピードや品質によって、顧客サービスレベルが評価されます。物流の目的は5R(正確な場所、正確な時、正確な数量、正確な品質、適正な値段)で定義されます。
したがって、物流における顧客サービスは何よりもまず、この5Rの原則に従って、顧客の満足が得られるようにサービスレベルを高めていくことが基本になります。

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単なる荷物の保管にとどまらず、物流品質(正確さ、スピード、コスト)をいかに高めるかという視点で顧客サービスを追求することが大切になります。

 

4.顧客サービスは標準化 or ガラパゴス化

 

物流というのは、標準化が進む一方で、顧客の要望に合わせて、どこまでカスタマイズ出来るかも重要になります。

自社の顧客サービスの定義を明確に定義し、ITにより整流化、標準化を進めつつ、顧客のニーズに合わせてカスタマイズすべき点はしっかりと対応していくことが求められています。

顧客サービスを追求する為に、ニーズに合わせてカスタマイズしていくのと、ITにより業務を標準化、整流化していくのはトレードオフの関係にあるのではないかと良く質問されます。筆者の考えは、顧客ニーズに合わせてカスマイズしていく個所を見極め、そこにリソースを充填する為に、他業務の遂行効率をITで最大化するという考え方です。

多くの企業が物流システム導入の効果を最大化できずにいます。敗因は、物流システムを導入すれば、なんでも実現してくれると誤認し、高機能なITを導入しようとすることです。ITはあくまで業務遂行の為の支援ツールでしかありません。
導入効果を最大化するには、まずは導入の目的(ビジョン)を明確にし、ITにより標準化するところ、カスタマイズで差別化するところを明確にすることです。非効率な業務を全てITで標準化するように見直すだけでは不十分です。たとえ非効率であっても、それが顧客サービスに直結し、自社の差別化要素として戦略上必要であれば、システムやオペレーションをカスタマイズしてでも対応をしなければなりません。

全ての業務を一般的な企業の物流に合わせて標準化させることがシステム導入の目的であれば、システムベンダーが推奨する機能をそのまま利用すればよいでしょう。そうではなく、ビジネスプロセスの最適化、物流による
差別化を目指すのであれば、的確なプロジェクト管理者の元、効果性の高いシステム導入を目指す必要があります。 

 

5.まとめ

 

日本の企業は最大化や最小化を実現しようとする意識が総じて高いです。例えば、生産性や効率化はとにかく最大まで高めようと努力しますし、誤出荷や欠品などは限りなくゼロに近づけようと努力します。その分オペレーションコストは割高になります。

一方で欧米の企業では、最適化の意識が総じて高く、利益を増やすことに直接結びつかないレベルでの効率化や品質の追及は行いません。それによって一定の収益性は担保できますが、オペレーションによる差別化は行えません。

どちらか一方が正しいというわけではありませんが、自社の強みをどこに設定するかを明確にする必要はあるでしょう。
例えば、小規模ECの荷主を多数集めて物流代行を行うのであれば、荷主の個別ニーズに対応するのではなく、オペレーションを均一化、標準化し、効率性と収益性を高める戦略になるでしょうし、高度な品質管理を必要とする医薬品等を扱う高品質の物流を提供するのであれば、顧客ニーズに合わせてその品質管理体制を個別にカスタマイズする方法をとるといった選択が検討されます。

この「運べない時代」に、顧客との関わり方を誤らないためには、物流による顧客サービスの本質を見抜き、自社の戦略を明確に打ち出す必要があるのではないでしょうか。

 

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