自社の物流を変えよう!『業界・業種別』物流改善のヒントとノウハウ ~製造業編⑤~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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自社の物流を変えよう!『業界・業種別』物流改善のヒントとノウハウ ~製造業編⑤~

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画像素材:Rawpixel / PIXTA

 

*** 高品質かつ低コスト物流の限界 ***

 

国内企業の物流コスト比率は2016年に上昇反転しました。
労働力の不足など急激な環境変化が主な要因として考えられています。
日本ロジスティクスシステム協会が発表した、2017年度の全業界の売上高物流コスト比率は4.64%と、再び減少に転じ、以前の水準に戻りました。(下グラフ参照)

しかし、2017年度は回答企業の売上高が2016年度よりも拡大しており、物流コストの伸び以上に、売上高が拡大した為、コスト比率が低下したのではないかと推測されます。

 

■売上高物流コスト比率の推移(企業種)

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(日本ロジスティクスシステム協会 2017年度物流コスト調査報告書【速報版】より)

 

一方でその物流を担う物流企業の状況を見てみると・・・。

 

■貨物輸送事業者の1者当り平均利益率

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(全日本トラック協会 『平成28年度決算版 経営分析報告書』)

 

1者あたりの平均経常利益が0.9%と、この3年で上昇傾向ではありますが、決して高い利益とは言えません。
続いて黒字企業の割合を見てみると・・・

 

■貨物輸送事業者の黒字割合

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こちらも3年連続で上昇傾向ですが、4割の企業は赤字経営ということになります。

こうした数字を見てみても、どの業界においても高品質かつ低コストな物流には限界が近づいていると感じます。

荷主の立場からは、物流という分野はとても分かりにくい分野だと思われています。
物流企業はこうした荷主に対して、物流分野の透明性を高めると同時に、積極提案型の物流サービスを推進していく必要があります。

製・販・物いずれの業界においても、労働力不足に起因する物流危機の影響は極めて深刻です。
特にジャスト・イン・タイムに代表される国内製造業の優位性は、優れた物流サービスが支えてきたといっても過言ではありません。

製造業において従来の物流サービスが低下するということは、そのまま生産性の悪化につながります。
生産効率が落ちた製造業はこれまでの競争力を失い、国外へ製造がシフトしてしまえば、産業の空洞化が急加速してしまいます。

 

*** 物流領域は拡大し、複雑化していく ***

 

いま世界の日用品や食品メーカーが、アリババ集団などが展開するECサービスを利用して、中国の輸出拡大を狙っています。
中国のEC市場は米国の2倍、日本の10倍と言われ、世界最大規模です。
自前の流通網で中国市場を開拓してきたメーカーは苦戦をしいられており、こうしたアリババ等のECサービスを利用した後発メーカーがシェアを急速に奪いつつあります。

巨大ネット企業の集客力と広範囲に渡る物流網を活用することで、あっという間に中国市場を相手にビジネスが展開出来ます。
今後は、国内製造メーカーの中国市場進出は、こうしたサービスを利用することで急速に広まっていくでしょう。

国内物流、自社流通網を活用した海外市場進出、国内越境ECサービスの利用、海外ECサービスの利用など物流領域の選択肢が増える一方で、物流領域は拡大し、より複雑さを増していきます。

 

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*** 自社で物流マネジメント専門の部署を設置する ***

 

そうした状況を踏まえて、今回の提案はズバリこれです。

 

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物流マネジメントの仕事は多岐に渡ります。
在庫を欠品、過剰なく管理をしなければなりません。
物流コストは物量で決まる為、運送会社に運賃交渉する為には物量を見える化しなければなりません。
自社の荷物で過積載を起こすと荷主も責任を問われます。積載率を高めながら、過積載を行ないように管理が必要です。

こうした複雑で多岐に渡る物流マネジメントを多くの製造業で各工場毎にバラバラで管理・運営しています。
各工場でそれぞれ近隣の物流会社に任せているケースが殆どです。

物流領域は今後さらに広範囲に拡大し、より複雑化していきます。
企業は物流業務専任の部署を持って、情報システムを設計し、ICTで武装しなければ生き残れない時代になっていきます。

 

■組織図例

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筆者が訪問する多くの企業で「自分達の物流は特殊だ」と語ります。
しかし、第三者の視点で見ると必ずしもそうではないことが殆どです。
物流業務専任の部署を持ち、客観的に自社の物流を俯瞰し、仕組みを構築している企業は、自社の物流が特殊だとは言いません。

各工場・各営業所で独立してマネジメントされていた物流機能を集約化することで、サプライヤーとの調整機能も強化され、全体最適を目指すのです。

物流本部長には社長直轄の担当役員を選任し、経営の基盤となる物流の舵取りを任せます。
そのような重要なポジションに物流担当が配属されることで会社全体の意識も変わり、下記のような大きな舵取りも可能になるのです。

 

・工場からの幹線物流における共同化

・モーダルシフトの検討

・輸出事業の流通網のシフト

・物流機能の明確化、コスト見える化

・物流パートナーの見直し、再構築

・物流サービスによる付加価値でブランド力向上

 

こうした物流発の経営改革が今後の製造業の競争力向上のカギを握っています。
最近では、物流専門の部署を設ける企業が増えつつありますが、1名で他の業務と兼任という場合も珍しくありません。
こうした名ばかりの部署では上記のような経営の大改革はまず実行不可能です。

「自社を変えたい」と本気で考えられている経営者のみなさま、物流発の経営改革を担う部署と責任者を今すぐご検討下さい。
そして、任命された担当役員に最大限の権限を委譲し、下記の順で仕事を依頼しましょう。

 

1.物流機能の明確化(3PLや物流子会社の場合は、各社の役割の明確化)

2.各工場、営業所の物流作業の整理(重複作業やルール不統一、物流指標の整備)

3.情報システムの体制構築(設計、開発、メンテ、サポート)

 

参考文献:
『2017年度物流コスト調査報告書【速報版】』日本ロジスティクスシステム協会
『平成28年度版 経営分析報告書(概要版)』全日本トラック協会
『日本経済新聞 自前主義よりアリババ出品 中国開拓、ネット優位に』日本経済新聞
青木正一著『事例で学ぶ 物流改善』 秀和システム
『月刊マテリアルフロー2018年8月号』 流通研究社

 

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