いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~物流BCP~|在庫管理システムならカスタマイズに強い【インターストック】

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いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~物流BCP~

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 画像素材:Good_Stock/PIXTA

<目次>

1.サプライチェーンに潜む脆弱性

2.荷主と物流事業者のBCPに対する考え方のギャップ

3.なるべく物を動かさない物流BCP対策

 


1.サプライチェーンに潜む脆弱性

 

ここ数年日本では、自然環境の変化により、地震だけではなく、台風やゲリラ豪雨などによって物流全体へ甚大な影響をおよぼすケースが急増しています。
毎年のように私たちの想像を超えるような雨量によって、これまで安全とされてきた地域や施設が被害にあっています。こうした災害によって一度物流が寸断されてしまうと、私たちのライフラインはたちまち絶たれてしまうというリスクを抱えています。このような背景もあり、経営者の皆さんは多発する災害に備えて、BCP(事業継続計画)対策を強化されていることと思います。

※BCP・・・「Business Continuity Plan」の略称。日本語では「事業継続計画」と呼ばれ、災害やテロなどの緊急事態時に損害を最小限に抑え、事業を継続可能とするための計画を策定すること。

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、多くの物流施設が被災し、サプライチェーンを寸断させ、東北地方だけではなく直接被害を受けていない地方の企業や物流事業者にも影響が及び、日本全体の生産活動が停滞してしまいました。この時、国内のサプライチェーンはその脆弱性を露呈し、「ホットスポット」というキーワードが話題になりました。国内のサプライチェーンのツリーをたどっていくと最終的には同じ工場に行き着いてしまうことがしばしばあります。その工場が止まってしまうと、日本全体の生産活動に影響を及ぼす危険性があります。そのポイントをホットスポットと呼ぶのですが、国内のサプライチェーンには多くのホットスポットが存在することが、東日本大震災で初めて分かったのです。(※但し、サプライチェーン専門家の間では兼ねてからその危険性は危惧されていた)

直接被害を受けていない工場に部品が入ってこないため、各工場の調達担当者は急ぎサプライヤーの工場に出向いて実態を調べました。その結果、1次取引先の工場は無事でも、2次、3次、4次の工場が被災したために生産がストップしているケースが多いことが分かったのです。このとき筆者は、サプライチェーンに着目した事業継続計画の必要性を痛感しました。最も大きな問題だったのは、サプライチェーンの全体像を把握している人がどの企業にもいなかったということでした。川下のサプライチェーンは見える化されていても、川上については全くといっていいほど見えていなかったのです。どの部品がクリティカルで、どの部品は代替が利くのかという点がまるで把握されていませんでした。このときの教訓は現在に生かされていたのでしょうか。

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東日本大震災では、半導体工場あるいは半導体の部品を作っている工場などがホットスポットであり、量としてはそれほど多くはなかったのですが、幅広い製品に使われていて、それがないと完成品が出来ないものが沢山あったのです。そしてあれから11年経った今、コロナ過でまた似たような事が起こってしまいました。
もともと、デジタル化が進む世界では、半導体チップの需要が急増しており、世界的に品不足が起きていたのですが、それが今回の新型コロナウイルスの影響でテレワークが世界中で広がり、パソコンなどに使う電源管理用の半導体がますます足りなくなくなってしまったのです。これによって国内でも自動車の生産や電子機器の在庫が不足するなど多くの影響が出ており、トヨタ自動車などは4割の生産減を余儀なくされてしまいました。

東日本大震災の時とは全く違う形ではありますが、またしても半導体の不足がサプライチェーンのボトルネックとなり、多くの企業が生産の減速や停止を余儀なくされてしまったのです。この度のパンデミックはさすがに想定外であったということでしょうか。いずれにしても、企業の物流BCPに対する意識は年々高まりをみせています。筆者は物流システムを提供する事業を行っていますが、最近ではシステムもBCP対策が当たり前のように求められるようになってきました。ユーザー企業から頂くRFP(提案依頼書)にもBCPの項目があり、災害時にシステムやデータがどのようにして守るのかといった提案を求められるケースが急増しています。


2.荷主と物流事業者のBCPに対する考え方のギャップ

 

大規模災害発生時おける物流の維持・確保、輸送活動の早期回復を図るには、荷主と物流事業者が協働・連携して、混乱した状況下でいかに迅速かつ的確な物流戦略を立てられるかが鍵となります。その一方で、荷主と物流事業者のBCPに対する取り組みには差異があり、双方が連携するに当たって不足や課題となる点が多くあると感じています。物流側でBCPを考える上で最も重要なことは車両の手配です。自然災害が発生した際には、物流としての社会的使命から緊急支援・復興支援を行う必要がありますが、被災地の車両が仕様出来ない中で緊急支援や復興支援を行うには、周辺地域や遠方から広域的に車両を確保しなければなりません。しかし、荷主側は、生産拠点に重点を置いてBCPを考える傾向が強いようです。お互い軸が異なるので、いざ災害発生時に代替ルートならびに燃料確保については、双方の間でギャップが生じてしまいます。

以下は筆者が考える物流側がBCP対策を練る場合の優先順位です。これは荷主側と軸を揃えたBCPを実現するために役立つと思いますので是非参考にして頂きたいです。

1.全社による危機管理演習
2.サプライチェーンの見える化(自社のポジションの特定)
3.堅牢なデータセンターで運営されるクラウド型物流情報システム
4.拠点間バックアップ体制の整備
5.倉庫の耐震性の強化
6.保管機器の耐震対策
7.緊急車両の事前届出
8.非常時連絡体制の確保(衛星携帯電話など)
9.安否確認システムの構築
10.自家発電設備による電源の確保
11.物流センターにおける電力使用量の削減
12.津波を考慮した拠点立地の見直し

優先順位の2番目にサプライチェーンの見える化が入っている点を以外に思われた方も多いと思います。しかし、自社の物流が荷主視点のサプライチェーン上でどのような役割を担っているのかを無視して、最適なBCP策定は無理だというのが筆者の見解です。この点は10年前の東日本大震災の教訓をしっかりと生かさなければなりません。自社の倉庫で在庫している部品や、自社が運んでいる材料がサプライチェーン上のどういった位置になるのかを十分に把握した上で、物流起点によるサプライチェーンのリスクマネジメントができるかどうかが今後は問われることになるのです。

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3.なるべく物を動かさない物流BCP

 

最後に、筆者が考える物流BCP対策の最先端の視点をご紹介したいと思います。それは「なるべく物を動かさない物流」を設計するというものです。米国ジョージア工科大学のブノア・モントルイユ教授らが提唱する「フィジカルインターネット」の概念が物流BCP対策になると筆者は考えています。フィジカルインターネットとは、インターネット通信の考え方を物流(フィジカル)に適用した新しい物流の仕組みのことです。物流領域において荷姿や運送EDIを標準化して、倉庫やトラックなどの物流リソースを最大限有効活用するという概念です。これがなぜBCP対策になるのでしょうか。それは「フィジカルインターネット」の先にある「物を動かさない物流」にあります。

フィジカルインターネットによる物流標準化と物流リソースのシェアが進むと、物流とその他業界(メーカーや小売など)の業界の垣根が取り払われ、一つの共同体としての融合が進むと予想されます。物流が変わると商取引も同時に変わってきます。従来の商取引は物を移動させることが取引成立の証とされてきました。メーカーの倉庫に保管されていた製品Aは、卸売業者の倉庫に移動されたタイミングで、メーカーから卸売業者へ所有権が渡ります。つまり、物流は実際に物を動かすことによって、取引を成立させ、所有権を移動させることでビジネスを下支えしてきたのです。しかし、フィジカルインターネットが進めば、パラダイムシフトが起こります。

もう少し話を分かり易くするために、家電メーカーを例にして解説します。家電メーカーは、自社工場で製造した製品を自社の製品倉庫に保管します。卸売業者から注文が入ると製品を製品倉庫から卸売業者の物流センターに移動します。この時点でこの製品は卸売業者に所有権が移ります。そして、卸売業者から小売業者に製品が移動されたタイミングで所有権は小売業者に渡ります。最後は消費者が小売店で商品を購入したら消費者がその商品の所有権を得るといった流れになります。

これが従来の物流と物の所有権の概念でした。これがフィジカルインターネットになるとどうなるか。メーカーの工場で生産された製品は物流会社の倉庫に一括で納品保管されます。この時点では所有権はメーカーのままです。そして卸売業者から注文が入ったタイミングで所有権が卸売業者に移ります。この時、物は動いていません。
小売業者は卸売業者に自社の在庫分を確保します。このタイミングで所有権は小売業者に移ります。しかし、この時も物は動いていません。最後に消費者がネットで商品を注文すると、倉庫から商品が最終消費者の元へ届けられて所有権が消費者に移ります。このようにフィジカルインターネットの世界では商品は最小限の移動で済みます。

モノの流れが最適化され、物流頻度を少なくすることが出来れば、それだけリスクマネジメントの設計もシンプルになります。また、カーボンニュートラルへ貢献できる点も期待が膨らみますね。

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