いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~フィジカルインターネット①~|在庫管理システムならカスタマイズに強い【インターストック】

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いま、経営者が知っておくべき「物流の最前線」~フィジカルインターネット①~

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 画像素材:World Image/PIXTA

<目次>

1.データからモノのインターネット

2.複雑さを増すロジスティクス

3.フィジカルインターネットの世界

 


1.データからモノのインターネットへ

 

今日の目覚ましい通信テクノロジーとデータ処理テクノロジーの進歩は、私たちのビジネス活動の地殻を揺るがし、全面的な再編を強要しています。
その影響の凄まじさは”電気”の登場に匹敵するといっても過言ではなく、「新しい経済(ニューエコノミー)」の誕生を予感させます。目の前で繰り広げられるSF映画のような情報革命の中で、新たなパラダイムが生まれることはもはや必然であり、それは時に異常とも思われる事態を巻き起こし、従来の経済構造の中で長期的な安定を期待する企業経営者に「一刻も早くそこから出なさい!」と警告しているかのようです。

そして私たち経営者がもっとも認識しておかなければならないのは、経済パラダイムの根本的転換はまだその初期段階でしかないということです。
それでいて、すでに経済活動に多大な影響を与えています。モノを所有することより、データにアクセスすることの方が重要となり、あらゆる市場において、テクノロジーを駆使したIT企業に道を譲り始めています。

もう一つ、注目しておきたい点は、これまで経済的価値を生みだしていた沢山のサービスが次々に無料化している点です。今はまだ、物をA地点からB地点に運ぶ物流サービスは経済的価値が認められ、その対価を物流事業者が受け取ることが出来ます。しかし、いずれ近い将来、データがインターネットで自由に無料でアクセスできるようになったのと同じように、モノのインターネットが誕生し、物流サービスも無料化してしまう可能性もゼロではないのです。すでに、欧米を中心として世界中の研究者が国を超えて連携し、「インターネットでデータを送るようにモノを送れないか」という発想を実現しようと研究が進められています。

このモノのインターネットは、「フィジカルインターネット」と呼ばれています。「フィジカルインターネット」は輸送手段や倉庫をシェアすることで、インターネットのような相互接続を可能とし、輸送、保管、貨物などに関わる全てにおいて、インターネットと同じような目覚ましい変化を起こすことができるのではないかという概念です。これはカーボンニュートラルや物流持続可能性にも関連するものであり、物流課題が山積みする日本でも注目を集めています。

「それは非現実的だ!」と読者の皆様に叱られそうですが、無理もありません。例えば、筆者が今から30年前にタイムスリップして、「30年後には世界中の人が手のひらの上で自由に連絡を取り合い、手紙や写真を瞬時にやり取りできるようなサービスが誕生し、そのサービスは全て無料で使えるようになる」と言えば、恐らく同じように「それは非現実的だ!」と叱られることでしょう。

実際、世界中の様々な市場や産業において、何千万人分もの仕事がこうしたテクノロジーによってタダ同然となり、多くの企業や労働者が職を失っているのです。

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2.複雑さを増すロジスティクス

 

ロジスティクスとは本来実に単純なものです。モノを発地点から着地点へ運ぶだけです。しかし、現代のロジスティクスは日増しに複雑化しています。
製造を中心としたジャストインタイム物流、ECの拡大にともない加速する翌日配送・当日配送など、物流オペレーションを限界まで突き詰めてようやく可能になるようなサービスが当たり前に求められるようになりました。

加えて最近では輸送コストの高まりから、物流最適化問題に対する解決が求められるようになってきました。如何に安く効率的に運ぶかという最適化問題は、従来の条件分岐型の業務ロジックでは解法が導きだせない複雑性を秘めています。このようにロジスティクスが本来持つ機能は変わらなくとも、現場の実際の業務やそれを動かすためのシステムは複雑さを極めてきているのです。いずれにしても現在の物流の構造は既に限界が見えており、このままでは、ロジスティクス業務は効率化どころか非効率なものになっていく可能性もあります。各企業は独自の物流ネットワークを構築しており、それが物流資源の無駄を生んでいます。企業が自らの物流ネットワークの効率を追求すればするほど、必然的に中継物流が増え、積載率の低下につながります。

物流の効率化を測る際によく用いられる積載率についても、体積よりも重量が重視されることの多い物流では、梱包の箱の大きさに対して中身の商品が小さく、半分以上のスペースがある場合も少なくありません。実際に皆さんもネットショップで小物を購入した際に、商品の何倍もあるような箱で商品が届いた経験をお持ちのはずです。色々なところから国内物流の積載率の数字が報告されていますが、このような観点から信頼性の高い統計は今のところ見当たらないと筆者は考えています。


3.フィジカルインターネットの世界

 

荷主であるメーカーが自社の製品を顧客に届ける場合を想像してみてください。メーカーは、物流子会社に自社の製品倉庫から物流デポに製品の移動を依頼したり、物流デポから顧客に製品を届ける手配をしたり、定期便が足りなくなれば別途チャーターを手配したりと出荷手配に気を配ります。

しかし、フィジカルインターネットの世界では、荷主は「何をいつまでに届けたいか」を指示するだけで、輸送手段や中継方法を気にする必要なく、目的を果たすことが出来るようになります。今日の相互に接続されたインターネットに似た物理的なネットワークによってそれが可能になります。インターネットでは、データはパケット単位に小分けされ、無数に張り巡らされた回線やルーターを最適なルートをたどって瞬間的に送信者から受信者に届けられます。
インターネットの相互接続には、TCP/IPというプロトコル(通信規格)が用いられ、アドレッシングシステムという方法によってネットワーク上のすべてが接続し合うことを可能にしたのです。

インターネット技術の登場によって、私たちは世界中の情報に瞬時にアクセスできるようになりました。昔を思えば、インターネットが登場する前、ネットワーク事業者同士が通信するには、特定のインファーフェースを個別に構築する必要がありました。しかし、今ではインターネットを利用する私たちが、データを送る際にインターフェースを個別に構築したり、どのようなルートでデータを受信するかなどを気にする必要は一切ありません。この仕組みを物流に応用しようとしたのが「フィジカルインターネット」の始まりです。

ただし、データ転送の技術をモノの移動にそのまま応用できるほど都合よくはいきません。物理学的にみても、データとモノでは形状も質も何もかもが違いすぎます。フィジカルインターネットでは、そこをしっかりと認識した上で、相互接続による効率性と持続可能性の追求に努力が向けられています。

物流関わる多くの経営者の皆さまには、フィジカルインターネットについて興味を持って頂き、自社なりのアイディアを出してロジスティクスの将来について考え、議論し、チャレンジする機会を持って頂ければ嬉しいです。次回は現代のロジスティクスとフィジカルインターネットの相違点を探りながら、その可能性についてさらに詳しく考察しますのでお楽しみに!

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