デジタル技術が生み出すスピード経営 ~データサイエンスで創る未来~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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デジタル技術が生み出すスピード経営 ~データサイエンスで創る未来~

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 画像素材:PRISM /PIXTA

<目次>

1.システムにデータサイエンスを取り入れる

2.エンジニア不足問題の誤解

3.広がる日本と世界のITギャップ

4.大きな構想力を持ってDXに取り組む


1.システムにデータサイエンスを取り入れる

 

AI(人工知能)が急速に実用化されつつあります。またこれに備えるためにAIを学ぼうとする人が増えています。AIを学ぶ人は、まず問題解決システムの仕組みから学ばれるとよいでしょう。問題解決とは、複雑な問題を単純な問題に分割して問題の構造を明らかにし、解決案を探すこと。つまり、状態空間の探索になることがわかります。AIをシンプルに表現すると、「一定の目的に対する知識の組み合わせ方法を探索する」ということになります。
ですから、AIについて学び、それを応用するには、”知識”とはどのような構造になっていて、問題解決にはどのような知識を利用しなければならないかを学ぶことが大切です。考えるには知識が必要です。この基本原理は人間でもAIでも変わりありません。

これからの企業はデータサイエンスを取り入れる必要があります。弊社も「物流にデータサイエンスを取り入れる」ことを目的として、輸快通快というAIソリューションを独自開発しています。企業はデータを活用することで無駄を徹底的に無くすことが可能になります。データにより高度な意思決定を手助けすることも可能です。データ活用は閉塞感のある現状を打開し、企業や社会の未来を創るエンジンです。

DXの重要性が叫ばれる現代においては、ユーザー企業がソフトウェアの開発力とデータ分析力を身に付けなければなりません。しかし、日本には根深い問題があります。インターネットの普及が始まった1995年から日本と欧米のIT投資の推移を比較すると、欧米が右肩上がりで投資額を増やしているにもかかわらず、日本は一貫して横ばいです(下図)。

■各国のICT投資額の推移比較(1995年を100とした推移)

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(出典:総務省HPより)

ソフトウェアが世界を飲み込もうとしているこの25年の間に、日本はITに投資をしてこなかったということがこのグラフからわかります。この間にチャレンジしてこなかった分だけIT人材が育っておらず、人材の蓄積が進んでいない点で世界に大きく差を付けられてしまっているのです。ここにきて、国も焦りを感じて、エンジニアを育てようと小さな頃からプログラミングに触れさるためにプログラミングを義務化しました。しかし、それだけではこの差を埋めるのに余りにも時間がかかり過ぎてしまいます。お金を持っている企業が積極的にITに投資して、”今すぐ”の人材を育てる動きが重要です。


2.エンジニア不足問題の誤解

 

「エンジニア不足」と言われますが、この業界に携わる者として誤解を恐れずに言えば、プログラミムをコーディングする人はいくらでもいます。オンラインで仕事をすることが当たり前となった今では、世界中のエンジニアと同じ職場にいる以上のスピード感で一緒に開発が行えます。インドやベトナム、シンガポールなど、優秀なエンジニアと簡単にプロジェクトを形成して取り組むことが可能です。私の元にも毎日のようにエンジニアの人材紹介のメールや電話がきます。しかし、企業の経営を支援する、社会を変えるようなデータ活用を支援できるエンジニアは圧倒的に不足しています。必要な知識を蓄積し、企業や関係者と対話して、そこからデータリズムをベースに自分の企業や社会を変革するような人材です。

こうした人材の不足は、プログラミングどうこうの問題ではありません。「今後はデジタルネイティブ世代が活躍するから」という淡い期待は当てになりません。何故なら彼らはITを使いこなすことには慣れていても、それをゼロから創り上げたり、データを分析したりする教育は全く受けていません。つまり、その点については、非デジタルネイティブ世代とあまり変わりないのです。ITやデータ活用を文化として育てなくてならないのです。それがDXの原点であり、起点であり、本質であることに皆が気付かなければなりません。DXとは、これから5年先、10年先に向けた取り組みであり、プログラムミングのスキル習得や、エンジニア不足といった表面的なところで、小手先のところで手を打っても、本質的な根っこが改革されないければ、何も変わらないのです。


3.広がる日本と世界のITギャップ

 

もう大分昔の話ですが、米国に行ってセールスフォースやGoogle、当時のFacebookなどのテック企業を何社も視察したことがあります。その時に強烈に感じたことは、既にその時点で、米国にはITが文化として定着していたということです。そこが米国の強さだと思います。私はこれをサッカーに例えてよく言うのですが、ブラジルと日本のサッカーの違いのようなものを感じました。日本ではサッカーはスポーツの1つですが、ブラジルではサッカーは国民生活の一部です。これと同じで、ITをツールとして扱うのが日本だとすれば、米国はITが国の文化として育っている、そんな底知れないパワーを感じました。
Appleの本社にも行きましたが、それは企業ではなくAppleという一つの町でした(笑)。。。

これが、日本と世界のITギャップなんだと思います。そうした文化がどうして米国では早くから根付いていったのか。そこの違いを探って日本も早々に手を打つ必要があるのではないでしょうか。AIと人間の関係についても同様です。日本はAIを産業用途に利用するツールとして考える傾向が強いです。しかしAI先進国では、AIを一つの新しい生命体として、今後数十年先に向けてどのようにして人類と共存するかを本気で研究しています。こうした取り組みの違いは、やはりITや最先端デジタル技術に対する根本的な捉え方の違い、つまりは文化として根付いているかどうかの差だと思わずにはいれません。

下の図は総務省の作成した「令和3年版 情報通信白書」の中のデジタル競争力ランキングです。日本は技術面、将来への備えの面で世界との差が開いていっていることがわかります。

■デジタル競争力ランキングにおける我が国の順位の推移

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(出典:『令和3年版 情報通信白書』総務省)


4.大きな構想力を持ってDXに取り組む

 

デジタル庁でも作れば、DXが推進するということではないと思います。企業の経理や受発注の仕組み、製造や物流の改善、こうしたビジネスプロセスを改善するのがDXではありません。しかし、未だに多くの企業が経営の効率化とか、人材不足だから省人化しようとか、そういったことでDXを行おうとしています。
本当の意味でDXを実現するには、もう一歩踏み込んだ考え方が必要になります。ビジネスのプロセスを改善するだけではなくて、ビジネスモデルそのものを変えていく、改善ではなく、改革・変革であるということです。DXをテコに新産業、新ビジネスを自分の会社から生み出していく。そのくらいの大きな構想力がなければ、世界と戦えるDXの議論にはつながりません。改革をしなければならないのに、どうしても日本は小手先の改善計画の方へ向かってしまいます。

2020年7月、テスラの時価総額がトヨタを超えたことが報じられ世界に衝撃が走りました。自動車の販売台数では圧倒的に上回るトヨタよりも、テスラの方が時価総額が高いということは、テスラが自動車メーカーとしてではなく、デジタル企業として世界から評価されているからに他なりません。21世紀に入って、GAFAMが「データを握るものが世界を握る」を体現するかのように、ものすごい勢いで力を持つようになりました。

日本と世界の差が、遅れがますます目立つようになっています。今、日本は焦りを感じています。焦りを感じつつも、日本は改善や工夫が昔から得意なので、つい小手先のIT改善に食いついてしまいます。自分のところだけを改善しようと頑張れば頑張るほど、どんどん周りと繋がらなくなっていることに気付かなければなりません。オープンという考え方もまだまだ浸透していません。目標や目的に対して、囲い込みを行い、一直線で向かおうとします。しかし、これからのデジタル化社会は”繋がり”を意識しなければなりません。網を持って必死で蝶々を捕まえるのではなく、時間をかけて田を耕し、種を撒いて水をやり、蝶々が自然と集まってくるようなお花畑を造るイメージに近いでしょうか。そうした発想で自社の今後のDXについて正しい議論・検討を行う必要があります。

世界はシステムやデータをオープンにしていく考え方が浸透しています。日本はそこになかなかついていけていません。データをオープンにすると損するんじゃないか、と考えてしまうのです。物流について言えば、企業の入出荷データや在庫データなんていうのは、大したデータではありません。それがオープンになったからといって、誰が損をするのでしょうか?自社のデータも周りと一緒に使ってはじめて価値が高まるのです。自社のクローズなデータベースの箱に何千万件と大切に保管していても宝の持ち腐れです。AIがこれだけ世界に浸透したのも、Googleが自社開発したAIをオープンソースで世界と共有したからです。もし仮に日本企業がこれを開発したら、きっと自社で特許を取り、囲い込みに走ったことでしょう。

システムやデータをオープンにするということに対する戦略的な理解と正しい検討がなければ、DXという時代に何も起こせないままに終わってしまうことになるでしょう。データそれ自体に価値はありません。それを情報に昇華させて、活用する術において差別化を考えなければならないと感じます。そして情報としての価値を高めるためには、そのデータをアクセスして利用できる人を増やすことです。より多くとの繋がりを意識して、自社のビジネスモデルを見直し、DXに取り組んで頂ければ嬉しいです。

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