物流・倉庫改革の夜明け

在庫管理システムと倉庫管理システム(WMS)の違いとは?よくある10の質問にも回答!

- 在庫管理と倉庫管理の違いが分からず、どちらを導入すべきか迷っている
- 在庫数は把握できても、出荷ミスや作業効率の改善に結びつかない
- 倉庫の作業をシステム化したいが、投資効果が見えにくい
こうした悩みは多くの企業に共通しています。用語が似ているため混同されがちですが、在庫管理システムと倉庫管理システムは管理対象も目的も異なります。この違いを理解せず導入すると、期待した効果が得られず無駄なコストや工数を生む可能性があります。
本記事では、両者の定義と役割を整理し、目的や機能の違いを分かりやすく解説します。さらに、自社の規模や業態ごとにどちらが適しているか判断する基準も提示します。
結論から言えば、在庫管理システムは「数量の最適化」、倉庫管理システムは「現場オペレーションの効率化」が主眼です。この記事を読むことで再検索せずに両者の違いと選び方を理解し、導入判断に役立てることができます。
在庫管理システムとは?
在庫管理システムとは、企業が保有する製品や原材料など全ての在庫を適切に把握・統制するためのシステムです。倉庫内の販売商品だけでなく、入荷や出荷も含めた数量管理を行い、在庫データを一元管理します。
在庫量を常に適正に保つことで、余剰在庫によるムダや欠品による機会損失を防ぎ、企業の利益を最大化することが主な目的です。
一般的に在庫管理システムは販売管理や会計システムなど他の基幹業務システムと連携し、
- 在庫数のリアルタイム把握
- 発注点や安全在庫の自動計算
- 在庫レベルの可視化
- 在庫過多や欠品リスクの予測
- 在庫評価額の算出
- 仕入先・出荷先情報の管理や在庫分析レポートの作成
など幅広い機能を備えます。
結論:企業全体の「モノの流れ」を数量(データ)の面から管理し、適正在庫の維持によって経営効率を高めるシステム
倉庫管理システムとは?
倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)とは、倉庫内作業を効率化し正確に管理するためのシステムです。倉庫という物理的な拠点を中心に、入庫(荷受け)から保管・ピッキング・出庫(発送)までの倉庫業務全般を管理します。
倉庫内に現在「どの商品が」「どこに」「どれだけ」保管されているかをリアルタイムに把握し、在庫の所在地や数量を管理するのはもちろん、倉庫内の作業スタッフの配置や棚位置(ロケーション)管理、さらには設備やマテハン機器の状況まで含めて倉庫内の効率化を図れるよう設計されています。
例えば、WMSの基本機能には
- 入出庫管理・在庫照会
- 棚卸管理
- ロットや賞味期限管理
- バーコードを用いた検品
- 出荷伝票やラベルの発行
などがあり、煩雑になりがちな倉庫作業を標準化・自動化する役割を担います。
倉庫管理システムを導入することで、倉庫内作業の精度向上や人為ミス削減、保管スペースの有効活用によるコスト削減、リードタイム短縮などが期待できます。
結論:「倉庫の中」を効率よく管理・運営し、物流サービスレベルと生産性を向上させるためのシステム
在庫管理システムと倉庫管理システムの違い【比較表あり】
在庫管理と倉庫管理はしばしば混同されますが、両者の違いを一言でいえば「管理対象」と「目的」の違いです。
倉庫管理は管理範囲が文字通り倉庫内に限られ、倉庫内の在庫管理だけでなく人員配置や設備の管理も含めて倉庫業務全体の効率化を目指します。
一方の在庫管理は自社の倉庫外も含めた全ての在庫データを対象に適切な在庫量を維持し、利益の最大化を図ることが目的となります。
つまり、倉庫管理が現場の物理的な管理(モノの保管場所や動き)に重きを置くのに対し、在庫管理は企業全体の在庫を数値的に管理し適正化することに重きを置く点が本質的な違いです。
以下に、目的・機能・利用部門など主要な観点で在庫管理システムと倉庫管理システムの違いを比較表にまとめます。
| 比較ポイント | 在庫管理システム | 倉庫管理システム(WMS) |
|---|---|---|
| 管理対象(範囲) | 企業全体の在庫(自社の全倉庫、店舗、工場内の材料・製品など) | 個々の倉庫内の在庫と倉庫作業(特定倉庫の内部) |
| 主な目的 | 適正在庫の維持による欠品防止・余剰在庫削減(在庫回転率改善・機会損失防止などによる利益最大化) | 倉庫業務の効率化・精度向上(入出庫リードタイム短縮、ピッキングミス削減、人件費・保管コストの最適化) |
| 主な機能 | 在庫数の一元管理・可視化、発注点アラート、自動発注支援、仕入先・出荷先情報管理、在庫分析レポート作成、他システム連携(販売・会計・生産管理など) | 入庫受付・検品、ロケーション(棚)管理、在庫照会、ピッキング指示、出荷検品・出荷指示、棚卸管理、バーコードラベル発行、作業進捗管理、ロット・期限管理など |
| 主な利用部門 | 在庫管理部門、調達・購買部門、営業・販売管理部門、経営管理層など (主に本社サイド) | 物流部門、倉庫現場の作業担当者・管理者 (現場オペレーション担当) |
| 導入の狙い・効果 | 全社の在庫状況を正確に把握し適正在庫を維持することで、在庫過多による資金滞留や保管費増大を防ぎ、欠品による販売機会ロスを減らす。【在庫の最適化によるコスト削減とサービス向上】 | 倉庫内作業をシステム化して効率アップし、人手不足の解消や作業ミス削減、出荷リードタイム短縮を実現する。【物流現場の生産性向上による顧客満足度向上とコスト削減】 |
このように、在庫管理システム(IMS)と倉庫管理システム(WMS)は目的もカバーする範囲も異なる別物のシステムです。
在庫管理システム:適正在庫の維持を通じた経営効率の向上に寄与
倉庫管理システム:物流現場の作業効率向上に寄与
ただし両者は無関係ではなく、在庫管理の一部が倉庫内で行われるように業務上は重なる部分もあります。そのため自社の課題によってはどちらか一方ではなく両方の導入が必要となるケースもあります(これについては後述します)。
業務や規模に応じたシステム選定のポイント
在庫管理システムと倉庫管理システムのどちらを導入すべきかは、企業の業種やビジネス規模、抱えている課題によって異なります。以下に、業態に応じた選定判断のポイントを整理します。
- 現状抱える課題の確認
- 自社の在庫拠点・流通経路の広さを確認
- 業種・業態の特性
- 企業規模とリソース
1つずつ解説します。
現状抱える課題の確認
業務上のボトルネックが「在庫量の過不足」なのか「倉庫内作業の非効率」なのかを見極めます。
例えば、「在庫の正確な把握ができず欠品が多い」「在庫回転率が低く滞留在庫が問題」という課題であれば在庫管理システム導入が優先です。
逆に「出荷ミスやピッキングミスが頻発している」「出荷に時間がかかり配送遅延が起きている」など倉庫オペレーションに課題があるなら倉庫管理システムの導入検討が有効でしょう。
自社の在庫拠点・流通経路の広さを確認
在庫を管理すべき拠点が複数(自社倉庫が複数ヶ所、店舗在庫、サードパーティ物流など)にわたる場合は、まず在庫情報を一元化できる在庫管理システムの導入が重要です。
一方、倉庫が一ヶ所のみで規模も小さい場合には、簡易な在庫管理機能だけでも足りるケースがあります(人手やExcelで賄える場合も)。
自社の在庫管理範囲がどこまで及ぶかを判断軸にしましょう。
業種・業態の特性
業種によって必要な機能も異なります。
例えば【製造業】では、原材料から仕掛品・製品まで複数段階の在庫を扱うため在庫管理システムが生産管理や購買システムと併せて重要になります。同時に、生産工場や配送センター内の部材・製品の動きを効率化するため倉庫管理システム(WMS)も導入される傾向があります。
【小売・EC業界】では、店舗在庫やネット販売在庫などチャネルごとの在庫を適正化する在庫管理システムが売上機会最大化に直結します。また、出荷量が多い大規模EC倉庫などではWMSによる自動化・省力化が欠かせません。
【卸売・物流業】では、自社内の商品在庫管理だけでなく預かり在庫や複数クライアントの在庫管理を行う必要があるため、在庫情報の可視化と倉庫内オペレーション管理の両面を兼ね備えたシステムが求められます。
企業規模・リソース
中小企業やスタートアップでは、まずは在庫管理システムや受発注管理システムで基本的な在庫可視化を図り、業容拡大に伴って倉庫管理システムを追加導入するステップを踏む例があります。
一方、取り扱いSKU数や出荷量が多い中堅以上の企業では、早期にWMSを導入して現場効率を上げないと人手対応に限界が来る可能性があります。自社の業務ボリュームに応じて、投資対効果を考えつつ段階的に検討すると良いでしょう。
在庫管理システムとWMSを併用するケースと必要性
前述のように、大企業や物流を重要視する企業では在庫管理システム(IMS)と倉庫管理システム(WMS)の両方を導入・併用するケースが一般的です。実際、多くの場合この2つのソリューションは連携して動作します。
在庫管理システムと倉庫管理システムを組み合わせて使うことで、それぞれの長所を活かし欠点を補完し合うことができます。
例えば、倉庫管理システムが倉庫内の詳細な在庫移動やロケーション情報をリアルタイムで管理し、そのデータを在庫管理システムに連携することで全社の在庫状況が即座に更新される仕組みを構築できます。
これにより販売部門や調達部門は最新の在庫数を把握でき、適切な発注や販売判断が可能になります。
一方、在庫管理システム側で設定した発注点に基づき自動発注を行ったり需要予測を立てたりした結果を、倉庫管理システムが受け取って入荷予定として表示し倉庫側の受け入れ準備に繋げる、といった双方向の情報共有も可能です。
マクロな視点の在庫管理・現場目線の倉庫管理
要するに、在庫管理システムはマクロな視点(全社の在庫最適化), 倉庫管理システムはミクロな視点(現場作業最適化)で機能しますが、両者を連携させることでサプライチェーン全体の効率が飛躍的に高まります。
現代の企業がリアルタイムな在庫・受注状況を把握し、変動する需要に迅速に対応するには、在庫と倉庫のプロセス両方を自動化・最適化することが重要です。
そのため、ERP(基幹システム)の在庫管理モジュールと専門的なWMSを組み合わせたり、在庫管理機能を備えたWMSを導入したりといった形で両面からのアプローチが取られるのです。
併用にはデータ連携が要(かなめ)
両システムを併用する際はデータ連携が肝心です。在庫情報が齟齬なく同期されるよう、システム間のインターフェースを整備する必要があります。
最近ではAPI連携やクラウドサービス間の連携機能が充実しており、異なるベンダーのIMSとWMSでも統合が可能なケースが増えています。自社のIT環境に合わせて、在庫管理と倉庫管理がシームレスに連動する仕組みを検討しましょう。
在庫管理システムとWMSに関してよくある質問に回答!
それでは、在庫管理システムと倉庫管理システムの関係性や連携についてよくある質問を、インターストックの代表の東が回答していきます。
Q1:在庫管理システムとWMSは重複する機能がありますか?
A1:在庫数量や在庫金額を管理する機能については重複します。
Q2:在庫管理システムが既にある場合、WMSを追加導入するメリットは何ですか?
A2:在庫管理システムは数量や金額を管理するのは得意ですが、倉庫の生産性向上や効率化といった部分は苦手です。そこはWMSが得意な領域です。
Q3:WMSの在庫情報をERP(SAPや商蔵奉行)とどう連携させるのでしょう?難しくないですか?
A3:データベース直接連携、API連携、テキストファイル連携が一般的です。連携のタイミングは実装時に注意が必要ですがポイントをおさえておけば難しいことではありません。
Q4:ERPの在庫管理機能とWMSはどう違いますか?片方で十分なケースはありますか?
A4:ERPの在庫管理機能は、複数ロケの管理や柔軟な在庫引当機能に対応していない場合が多いため、現場の運用に合わないケースが発生します。そうした場合は、WMSをサブシステムとしてERPにぶら下げる形で対応するのコストと時間的にも良い選択です。
Q5:WMSを導入した際、在庫データはERPにリアルタイムで同期できますか?
A5:はい。API連携、データベース直接連携で同期は可能です。最近であればAPI連携が主流です。
Q6:商蔵奉行など中堅企業向けERPとWMSを連携する場合、標準で連携できますか?カスタマイズが必要?
A6:データマッピング機能を用いて標準機能で連携可能です。
Q7:SAPなど大規模ERPの在庫管理機能で倉庫業務もカバーできますか?それともWMSは必須?
A7:SAPなどの大規模ERPで物流業務を行うことは可能ですが、基本設計が金額を管理する設計ですので、実運用に合わせようとすると、高額なカスタマイズ費用が発生する場合があります。基幹機能と物流機能が密結合の状態になるため、おススメはできません。
Q8:複数倉庫を扱う場合、ERPとWMSのどちらを中心に在庫を管理すべきですか?
A8:ERPとWMSのどちらが在庫管理の主管となるかは、企業の要件によってことなります。WMSが主管してその数量をERPに連携する仕組みの方が柔軟性は高いです。
Q9:WMSだけで在庫最適化まで担えますか?
A9:WMSの機能によりますが、一般的なWMSであれば在庫を最適化するための機能を標準で装備しています。
Q10:単一倉庫の小規模運用でWMSは必須ですか?
A10:1日の出荷量が50件未満の場合はWMSまで必要ないでしょう。1日の出荷量が50件を超えてくると人力だけだと効率も悪く作業ミスも頻発しますので、WMSの導入をお勧めします。ただし、100件未満であれば安価なパッケージをそのまま導入するだけで大きな効果を期待できます。
他にも以下のような質問が弊社にはたくさん来ます。
弊社はカスタマイズや伴走支援に強いWMSベンダーです。
ROI診断や貴社の状況にマッチする在庫管理システム・WMSをご提案する無料オンライン相談も盛況中ですので、ぜひご相談ください。
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将来拠点が増える前提ならどちらを先に導入すべきですか?
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3PL委託時の在庫の主権はどのシステムが持つべきですか?
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マルチチャネル在庫でWMSと在庫管理の境界はどう決めますか?
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店舗在庫・工場在庫・倉庫在庫の管轄はどう切り分けますか?
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ロケーション体系はWMSとERPで同一にすべきですか?
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単位(UoM)変換や入数・最小梱包はどこで統一しますか?
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商品属性(温度帯・危険品・サイズ)はどこを正としますか?
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取引先・仕入先マスターの重複をどう防ぎますか?
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バーコード規格(JAN/GS1-128/RFID)の管理はどこで行いますか?
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価格・単価はERP、作業ルールはWMSで分けるのが妥当ですか?
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ロット・有効期限・シリアルの付番はどこで行いますか?
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先入先出(FEFO/FIFO)の制御はWMSだけで完結しますか?
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品質区分(良品・不良・検査中)の在庫はどう連携しますか?
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同一SKUのロット混在をどう防ぎますか?
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逆トレーサビリティの検索はERPとWMSどちらで行いますか?
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医薬・食品の規制対応記録はどこに保管しますか?
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委託・預り在庫の所有権はERPにどう表現しますか?
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シリアル粒度の引当と返品はどこで照合しますか?