在庫引当とは？欠品を防ぎ在庫管理を最適化する重要性と方法

• 注文を受けたのに在庫が足りず、納期遅れでクレームになりそう…
• 在庫を多めに抱えすぎて倉庫が圧迫、在庫コストが増えて困っている
• Excelで在庫管理しているがミスや情報共有漏れでダブり出荷しそうになった
• 在庫管理を効率化したいが、何から手を付ければ良いか分からない

上記のようなお悩みを抱えていませんか？

 

在庫をめぐるトラブルは、放置すると 顧客からの信頼を失い売上機会を逃す 深刻な事態につながりかねません。また、欠品を恐れるあまり 過剰な在庫を抱えればコスト増 や 在庫の陳腐化 を招いてしまいます。

 

本記事では、倉庫管理システム導入支援で培ったノウハウをもとに、在庫管理に悩む皆様のお役に立てる情報をお届けします。この記事では 在庫引当の基本から、その重要性、効率的に行うポイントやシステム活用による改善策 まで詳しく解説します。

 

結論：在庫引当を正しく行えば常に販売可能な在庫数（有効在庫）を把握でき、欠品ゼロや在庫コスト削減につながる。

在庫引当について、より高度なことを知りたい方は下記の記事をご覧ください。
(参考)在庫引当処理を行うのは基幹システムとWMSどっち？在庫引当処理の要諦を解説

監修：東　聖也

 

在庫引当とは受注分を差し引いた有効在庫を把握すること

 

「在庫引当」とは、簡単に言えば 商品を注文された段階でその注文分の在庫をあらかじめ確保しておくこと です。実際にはまだ商品を動かさなくても、将来販売する予定の在庫として他の注文に回せないよう取り置きします。

 

例えば在庫が100個ある商品Xに対し、A社から60個の注文が入ったら、その60個を発送前に確保（引当）します。すると残りの40個が他の注文に対応できる販売可能な在庫です。

このように【手元の在庫数】から【引当分】を差し引いた残りを【有効在庫数】と呼びます。

 

【有効在庫数】＝【手元の在庫数】-【引当分】

※有効在庫：実際に出荷や販売に使える在庫数量

 

 

*実際の在庫数量自体は出荷まで変化しない*

 

ポイントは、在庫引当を行っても 実際の在庫数量自体は出荷まで変化しない ことです。しかし受注時点で引当処理をしておかないと、社内ではその受注分が見えず在庫があると誤解されてしまいます。特に受注が重なるとき、引当を怠ると 「在庫があると思って受注したが実は足りなかった」というミス が起こりえます。

 

複数の担当者や販売チャネルがある場合はなおさら注意が必要です。在庫引当によって 「今いくつ売れるか」 を正しく把握し、社内で情報共有することが適切な在庫管理の出発点になります。

 

在庫引当が欠品防止と在庫最適化に重要な理由

 

適正在庫を維持するうえで、在庫引当は欠かせないプロセスです。その主な理由は以下のとおりです。

 

*欠品による信用低下を防ぐため*

 

有効在庫を把握せずに受注を続けてしまうと、受注したのに在庫が足りず出荷できない 事態が起こり得ます。また在庫不足で納品が当初予定より遅れてしまえば、顧客からの信頼・満足度が大きく下がる恐れがあります。

 

*余剰在庫によるムダを削減するため*

 

有効在庫数が分からないままだと、在庫不足を恐れるあまり 必要以上に商品を仕入れてしまう 傾向があります。結果として売れ残りの余剰在庫が発生し、商品が滞留してムダな管理コストを生む原因となります。

 

逆に在庫引当によって「今販売できる残り数」を常に把握できれば、必要なタイミングで適切な量だけを追加発注できます。欠品防止のための無駄な過剰仕入れを避けられるので、在庫の適正化（適正在庫の維持）に繋がるのです。

 

*在庫情報を社内で共有しミスを防ぐため*

 

在庫引当の運用によって在庫データが常にアップデートされ、関係者全員が実在庫数と有効在庫数を把握できるようになります。特に複数担当者で在庫を管理する場合でも、誰もが最新の有効在庫を確認できれば 二重受注などのヒューマンエラーを抑制できます。

 

*在庫管理業務を効率化するため*

 

有効在庫数が明確になれば、追加発注が必要かどうかを迅速に判断できます。

 

在庫が減ってきた段階で早めに補充を手配できるため、発注タイミングを逃さずに済みます。反対に手配が遅れて受注済みの商品を欠品でキャンセルせざるを得なくなるような事態も防げます。

 

このように 在庫引当の情報は発注リードタイムの短縮や機会損失の防止に直結し、結果として在庫管理全体の効率アップにつながります。在庫引当を適切に行うことで 「売れる在庫」と「確保済み在庫」を明確に分離し、欠品も余剰もない理想的な在庫管理 を目指せるのです。

 

 

在庫引当の種類(受注・生産・安全在庫)

一口に在庫引当と言っても、その運用方法や目的によっていくつか種類があります。自社の業態に合わせて適切な手法を理解しておきましょう。

 

 

1. 受注引当
2. 生産引当
3. 安全在庫の引当

 

 

*受注引当(オーダー引当)*

 

顧客からの注文を受けた時点で在庫を確保する方法です。

 

ECサイトや小売業で一般的に使われており、受注後すぐに在庫を取り置くことで欠品を防ぎ納期遅れを防止します。

 

*生産引当*

 

製造業などで行われる、生産計画に応じて原材料や部品の在庫を事前に割り当てておく方法です。

 

工場の生産スケジュールに合わせて必要部品を確保することで、部品不足による生産ラインの停止を防ぎます。需要予測に基づいて適切な在庫量を調整することが求められます。

 

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*安全在庫の引当*

 

将来の予期せぬ需要増や供給遅延に備えて、一定量の在庫を余裕として確保しておく方法です。

 

急な注文増加や物流トラブルが発生しても対応できるよう、あらかじめ安全在庫を差し引いておきます。適切な安全在庫量を設定するには過去データの分析や需要予測が欠かせません。

 

*【補足】在庫引当の組み合わせも有効な場合も*

 

自社の商品特性や業種によって、上記の在庫引当を組み合わせて運用することで在庫管理の精度が向上します。

 

例えばEC販売主体の企業では受注引当が中心になりますが、製造部門を持つ場合は生産引当も重要です。

 

またシーズン変動が大きい業界では安全在庫の考え方も取り入れて、欠品による販売機会ロスを防ぎつつ在庫を適正量にコントロールすることがポイントです。

 

在庫引当を正確・効率化するための4つのポイント

 

在庫引当を正しく行うだけで在庫管理が完璧にできるわけではありません。

実在庫とシステム上の在庫（理論在庫）にズレが生じないよう、以下のポイントも押さえて在庫管理を行いましょう。

 

1. 在庫データの管理ツールを導入
2. 在庫の保管場所を明確化(ロケーション管理)
3. 在庫管理ルールを決めて共有
4. 定期的に棚卸しを行い実在庫とのズレを確認

 

*在庫管理データの管理ツールを導入*

 

入出庫履歴を記録し、在庫数を正しく把握するにはデジタルツールの活用が効果的です。手軽に始められるExcelで在庫管理表を作成し、受注の都度在庫引当を行う方法があります。

 

簡単な関数で有効在庫を算出できるためExcel初心者でも対応可能ですが、扱う商品数が多くなるほど入力ミスや更新漏れが発生しやすく限界があります。

 

在庫点数が多い中堅規模以上でより正確な管理を目指すなら、在庫管理システムや倉庫管理システム(WMS)の導入を検討してみてください。 受注データと連動して在庫を自動引当し、在庫数をリアルタイム更新できるため高い正確性が得られます。

 

また入出荷や仕入れなど様々な工程のデータを一元管理でき、人的ミスの大幅削減や業務効率化にもつながります。中～大規模の事業者や商品数が多いケースでは、WMSの活用が在庫引当管理の近道と言えます。

 

*在庫の保管場所を明確化(ロケーション管理)*

 

いくら在庫引当で数を正確に把握できても、在庫の所在が不明では紛失やピッキングミスの原因になります。在庫を保管する棚やエリアにあらかじめ番号やアドレスを振り、商品ごとに置き場所を決めて管理する ロケーション管理 を徹底しましょう。

 

棚番と商品を対応付けて全員で共有することで、「どの商品がどこに何個あるか」を誰でも把握でき、在庫を探せず出荷が遅れるリスクを防げます。

 

引当数が合っていても商品の場所が分からなければ意味がありません。場所の管理までが在庫管理です！

 

*在庫管理ルールを決めて共有する*

 

複数担当者で在庫データを扱う場合、入力漏れや重複入力・桁ミスなどにより システム上の在庫数と実際の在庫数にズレ が生じかねません。ヒューマンエラーによる在庫差異を防ぐため、在庫データの入力ルールを明文化して全員に周知することが大切です。

 

例えば「受注や出荷の都度必ずシステムに入力し、入力日時・担当者を記録する」「同じデータを重複入力しそうな場合は先に入力した人に確認する」など、具体的なルールと手順をマニュアル化して共有します。

 

全員が統一ルールに従うことで、引当漏れ・戻し忘れなどの人的ミスを最小限にできます。

 

*定期的に棚卸しを行い実在庫とのズレを確認*

 

在庫引当によって管理する有効在庫数はあくまで理論値であり、実際の庫内在庫数が誤っていれば有効在庫も正しく計算されません。正しく在庫引当をするためにも、一定期間ごとに実地棚卸しを行って実在庫数を正確に把握し、帳簿上とのズレを修正することが不可欠です。

 

棚卸しは四半期ごとや半年ごとなど計画的に実施し、複数担当者によるダブルチェックで カウントミスや記入ミスを防止 します。実在庫が正しく管理されてこそ有効在庫も正しく算出できるため、このプロセスを怠らないようにしましょう。