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経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第八回-

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画像素材:dizanna / PIXTA

 

*** 儲かるSCMを創るS&OPとは何か ***

 

在庫削減によるキャッシュフローの向上は企業の永遠のテーマです。
そして、このテーマは長年経営者の頭を悩ませ続けてきました。

経営者が立てた業績の見通しが実績と大幅に乖離すると、現場の頑張りも通用しなくなります。
多くの企業では、現場が最後の実行部分で踏ん張って必死に目標を達成するということをやっていますが、そうした部分は案外経営者は見えていないケースが多いようです。

トップマネジメントと現場との間にはどうしても時間・情報・認識に乖離が生じます。
これは仕方のないことです。
しかし、その溝を最小限にするための手法は常に研究されており、そのいくつかの手法は効果を発揮しています。

その一つがS&OP(Sales & OperationsPlanning)です。

S&OPはSCMの一面であり、その目標はサプライチェーン全体をモノとカネの両軸で捉えることで、儲けを生み出す事業構造に変えることにあります。
海外では既に常識的な経営手法として知られていますが、日本ではまだほとんど普及していません。

サプライチェーン計画活動の中では、S&OPは少し高度な分野になるのかもしれません。
多くの小規模な組織や新興企業では、在庫計画のみを必要としますが、こうした企業が成長するにつれて需要計画や供給計画などの機能が必要になります。
そして、多くの差別化された製品を販売し始めた時点でS&OPのような機能が必要になってくるのです。

組織が大きくなり、取り扱い製品も増えてくると、組織の中の各機能で利害関係による対立が生まれます。
この点についても多くの場合、経営者の目に触れることはありません。
そしてそれが癌細胞のようにやがて大きくなり、組織を蝕んでいくことになるのです。

 

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SCMはご承知の通り、モノの流れを軸にしたマネジメント手法です。
カネについて無関心かというと決してそんなことはないのですが、「必要なものを、必要な場所に、必要なときに、必要な量だけ」供給することを最適化する手法なので、どうしてもカネの視点が薄れてしまいがちです。

SCMはリードタイム短縮、納期遵守率の向上、在庫削減などモノの数量をベースとした管理と言えるでしょう。
しかし、事業経営全体を考えるとき、モノの流れだけを管理していたのでは当然困った問題がいくつも起こります。
いくら在庫が削減され、リードタイムが短縮されても、それが収益に結びついていなければ何の意味もないのです。

これは、販売・マーケティング・製造・流通、および財務を含む、組織の主要な機能がモノと金の情報を共有することで、それぞれの利害関係を理解し、支援し合える計画を作成することが可能になる手法です。

ここまで書くと少々難しい話のように思われるかもしれませんが、本稿では企業の経営者が最低限知っておきたいS&OPの基本的な考え方とその有用性について簡単に解説が出来ればと考えています。

 

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*** モノとカネの両軸で在庫を最適化する ***

 

従来型のSCMはモノの流れを最適化するための手法でした。
その為、企業の収益性を最大化するための指標と連携させることが難しいといった側面がありました。
経営者からしてみれば、SCMの管理マネージャーが報告してくる数値だけを見てもそれが、自社の経営方針や経営戦略に対してどれだけのインパクトを与えているかを把握することが難しかったのです。
モノの数量を軸にして作成された報告書の行間を読んで、それを金額に置き換えて市場動向や今期の着地予想を行うことが経営者の役割であるかのようでした。

 

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経営者からすれば、在庫をモノとして管理してその数量を最適化するだけではなく、事業全体を最適化することで、収益性を向上させることが目標になります。
従来型SCMでは、在庫を数量としてだけ捉えるので、誤った経営判断を下してしまう可能性もあります。

例えば、東京と福岡にある販売拠点から、それぞれ3万台のオーダーが入ったとします。
しかし、自社の生産キャパシティが4万台しかない場合、以下のような経営判断を求められます。

 

1.東京の販売拠点に3万台、福岡の販売拠点に1万台供給。

2.東京の販売拠点に2万台、福岡の販売拠点に2万台供給。

3.福岡の販売拠点に1万台、東京の販売拠点に2万台供給。

4.増員、設備投資で計6万台を供給できる体制を構築。

 

このような経営判断を迫られたとき、在庫や生産予定をカネの側面からも評価する必要があります。
同じ製品でも販売するエリアや販売先によって、売価や利益は異なってきます。

数量だけで上記の1~4を選択することは難しいですが、東京で売った場合は売価が1台1万円、福岡で売った場合は1台9千円であった場合、選択は限定されます。
東京の方が売上が上がるので、そちらに製品を多く供給する判断になります。

しかし、実際の経営では売上だけを見て判断は出来ません。収益性という観点からとらえるとまた選択肢は変わってきます。
この会社の製品倉庫が福岡にある場合、東京に供給するには輸送コストがかかります。
収益性という観点から見ると実は福岡で売った方が良いという判断になります。

それ以外にも、各エリアの市場シェア・自社ブランド・エリア別の顧客満足度を検討すると、より判断は複雑化します。
つまり、数量だけでは経営判断は出来ないのです。
これまでいくら儲かったのか、これからいくら儲ける必要があるのか、その為には何を最優先する必要があるのか。

それに対して、SCMでは常に数量をベースに管理し、マネジメントし、報告書を作成します。
よって、従来型のSCMでは需要に対する製品の供給には成功しても、収益性の向上には貢献しなかったというケースが生まれるのです。

経営者は継続して”儲ける”ためにも、このS&OPについて注目し、その手法について学んでみてはいかがでしょうか。

 

*** S&OPによって得られるメリット ***

 

S&OPによって、得られる効果的な販売および事業計画プロセスの利点には、次のものがあります。

1.顧客サービスレベルの向上
2.収益性の向上、より高い製品収益
3.在庫の減少と陳腐化
4.リードタイムの​​短縮と迅速な対応
5.トップダウン管理統制の向上
6.株主にとって予測可能な業績報告

さらに、S&OPプロセスは、トップマネジメントに対する以下の基本的な質問への回答にも役立つはずです。

Q1.需要予測と供給予測との差はどれくらいですか?

Q2.サービスとコストの両方の目標を達成するために予測されるリソース要件は何ですか?

Q3.必要なときに適切なレベルのリソースを確実に利用できるようにするためにどのようなアクションが必要ですか?

以下は、SCMによる改善目標に対して、ビジネス全体にどのような影響があるかを表示したものです。

 

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この表が示す通り、アバウトにはSCMによる改善とビジネスの影響は把握できても、そのインパクトを金額と数値で見える化するということは困難です。
S&OPの導入によって、経営層や財務部門は、より適切な意思決定を下せるようになります。
またSCM部門は自分たちの改善活動が企業の業績にどれだけ反映されるかを知ることができ、これまで以上に改善に積極的になります。

海外では現在多くの企業がS&OPの導入を進めています。
昨今のICTの発展は、間違いなくS&OPの明るい未来を予見しており、需要、生産、在庫を同期させることを可能にする強力なアプローチです。
S&OPがうまく実行されると、サービスレベルを向上させながらコストと在庫の最適化を実現できます。

自社のビジネスをより高い次元に進化させることが出来るS&OPについて、本稿をきっかけに多くの経営者が関心を持たれることを期待しています。

 

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