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経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第十三回-

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画像素材:tulpahn / PIXTA

 

*** 物流子会社はなぜ利益が出ないのか? ***

 

物流の需要が高まっている昨今、さぞ物流子会社も儲かっているのだろうと思っていたら、実態はそうでもないようです。
多くの企業の物流外販事業の利益率はここ数年横ばいであり、中には減少傾向にある企業も少なくないのです。

親会社が物流子会社を設立する狙いは主に以下の2点です。

1.独立採算にすることで効率性を高め、より専門性を高めることで競争力を持ち、グループの利益に貢献させる

2.物流の専門性を高め、事業としてオペレーションを効率化することで、コストダウンを図る

物流コストが明確化され、物流専門家を育成することで親会社への物流コスト低減やサービスの向上を促進できることから、物流子会社の設立はとてもポジティブなものですが、実際上手くいっていないケースが多いのはなぜでしょうか。

その理由を色々と探ってみると、どうやら物流子会社の企業戦略に一貫性がないことが問題のようです。

良くも悪くも物流子会社は、黙っていても親会社から仕事が降ってきます。
自ずと営業活動は怠慢になり、社員も親会社のご機嫌伺いばかりになってしまいがちです。
本来企業は多くの競合他社の中から生き残りをかけて自社を積極的にPRします。
この競争の中で切磋琢磨することで社員が成長し、企業も成長していきます。

日本人の行動特性として、同質的行動があります。常に他人や周りと比較して、それに合わせようとする特性です。
そうした特性を持った人が多く集まって組織される企業もまた同様に同質的行動の特性を持っています。

常に競合他社と比較して、他社に追い抜かれないようにというプレッシャーが競争原理に働いています。
こうした傾向は欧米企業に比べて日本の企業が顕著に表れています。

日本には物流子会社が1000社以上あると言われています。

欧米には日本のような物流子会社はほとんど存在しません。
かつて、日産の物流を請け負っていた日産のグループ会社のバンテックもカルロス・ゴーン氏に株式の売却を早々に通告されました。

 

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*** 一般顧客の受託業務で赤字になってしまう ***

 

親会社の受託業務では利益は出ているのですが、一般顧客の受託業務で赤字になっているケースも少なくありません。
なぜ一般顧客の受託業務では赤字になってしまうのでしょうか?理由は大きく2つあります。

1つ目の理由は、営業コストです。親会社に対しての営業コストは最小限で済みます。
親会社の事業を良く理解しているばかりではなく、人的な繋がりも強いため、営業を介さずに仕事を受託することが出来るからです。
また物流事業を請け負う際には、顧客企業の情報システムとEDI等による連携が必要になりますが、その当たりも既にあるシステムが利用できるため、余分なコストがかからないといった点でも有利です。

2つ目の理由は、物流委託時の契約条件です。こちらは1つ目の理由よりも影響が大きいです。
一般顧客では物流コンペなどで契約条件を顧客側に合わせなければ選定されません。
倉庫の家賃や間接費をそのまま利益プラスアルファで提案していては、競合他社に仕事を取られてしまいます。
また、いざ業務がスタートしても、燃料費等の値上げによって顧客側に運賃の値上げを交渉しても、泣き寝入りをするしかない場合もあります。

親会社の場合は、そうした費用を一切合切受け入れてくれるケースが多いです。
さらには作業員の管理や車両手配、伝票処理等も親会社側で面倒を見てくれる場合もあります。

こうした理由から親会社の受託業務では立派に利益を確保していても、一般顧客からの受託業務で赤字となってしまい苦戦を強いられています。

では、どうすれば一般顧客からの受託業務でしっかりと利益を確保することが出来るようになるのでしょうか。
物流事業者を5つのタイプに分類してその方法について探ってみましょう。

 

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1.業界インフラ型

業界インフラ型はある特定の業界の物流インフラを構築して多くの顧客を囲い込み、損益分岐点を下げて継続的に利益を確保します。
ライノス・パブリケーションズが発表した2019年版物流企業番付で第2位のキャリムエンジニアリング(株)がこの型の代表的な企業です。
キャリムエンジニアリングは精密機械の国際輸送に特化した業界インフラ型であると言えます。

 

2.3PL型

高い専門性と技術力を駆使して少数の顧客を荷主として抱えることで、顧客との強い信頼関係を構築し、継続的に利益を確保します。
顧客である荷主企業の在庫管理から物流までを一気通貫でサービスすることで優位性を高めています。

 

3.ベストパートナー型

顧客企業に依頼された業務だけを請け負うのではなく、自ら顧客企業の課題をまとめ、必要であれば新たなサービスやモデルを積極的に提案します。
顧客企業との人間関係を強固に構築することで、コンペチターの参入を困難にし、無駄な営業コストを抑えながら、サービス料金は割高に設定することで利益を確保します。
物流が最重要な企業戦略として認知されている今日では、このタイプが評価され始めています。

 

4.下請け型

顧客企業と古くからの付き合いであり、惰性の関係によって取引を継続するタイプです。
顧客企業との関係は強いのですが、技術力、サービスレベルは低く、顧客企業に新たな提案ができるほどの実力もありません。
経営者や従業員のモラルも低く、自発的に新しい業務に挑戦もしません。こうした物流企業と付き合う顧客企業も改善の意識が低いため、いつまでもこうした関係が続いてしまいます。

 

5.顧客拡大妄信型

より多くの顧客を抱えることが自社にとって最も好ましいことであるとの妄信から、自社の技術力や戦略を考慮することなく、とにかくどんな仕事でもとってくるタイプです。
顧客の数は多くても、顧客との取引期間も短く、顧客満足度も低いため、無駄な営業コストが発生します。
本質的な問題に経営者も現場も気づいていない場合が多く、利益が確保できないのは売上が少ないからだ。売上を上げるために
もっと多くの新規顧客を獲得してこい。となり、不のスパイラルに陥ってしまいます。

 

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※出典:原田啓二 著 『物流経営戦略の「新」常識』より筆者作成

 

以上、5つのタイプをご紹介しましたが、どれか一つだけに該当するという場合は少なく、多くの物流事業者は複数のタイプに属します。
そしてこの中で継続的な利益を確保しているのは、「業界インフラ型」、「3PL型」、「ベストパートナー型」の3つです。

そして物流子会社は親会社との関係が非常に強く、通常の企業間の競争原理が働かないところで長い間いるために、利益の確保が困難な「下請型」と「顧客拡大妄信型」に属してしまうケースが多いのです。

とくに物流子会社の経営者にとってみれば、親会社の仕事だけでやっていけているというのは、自身のプライドが許しません。
親会社や社会に評価してもらうためには、自ら一般の顧客を開拓し、売上を確保していかなければならないと勘違いしてしまうのです。

この考え方自体は決して間違っていないのですが、自社の事業力を考慮することなく、やみくもに顧客拡大路線に走ることに問題があります。

物流子会社が一般顧客からも継続的に利益を確保するためには、自社がどのタイプに属し、今後どのタイプに比重を移していくのかを見極め、その戦略を明確に打ち出すことが必要なのです。

 

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参考文献
堺屋太一 著 『日本を創った12人』
原田啓二 著 『物流経営戦略の「新」常識』