経営者のためのサプライチェーンマネジメントの基本と原則 第八回|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営者のためのサプライチェーンマネジメントの基本と原則 第八回

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 画像素材: chepilev/PIXTA

<目次>

1.カイザー・パーマネンテの良質なコラボーレーションモデル

2.第四原則:コラボレーションモデルの構築

3.コラボレーションの4つのレベル

 


1.カイザー・パーマネンテの良質なコラボーレーションモデル

 

米国最大の非営利健康保険企業であるカイザー・パーマネンテは質の高い医療を低価格な料金で提供し、
2018年時点で、契約者数は1,220万人、営業収益の797億ドルに対して25億ドルの純利益を計上しています。

高収益を実現する鍵を握るのが、同社のサプライチェーンパートナー企業との良質なコラボレーションです。
この良質なコラボレーションを支えているのが、多額の投資がされた最先端の情報システムです。このシス
テムには診察から術後治療に至るまでの患者の全情報が詳細に登録されています。

コラボレーションと情報システムの統合に重点的に取り組むことで、大幅なコスト削減を実現し、医療の質と
治療時の患者体験の両方を向上させることに成功しています。

同社は医療サービスの向上に取り組みつつ、コストを削減する新たな方法として、医療機器や医療用品の
サプライチェーンに目を付けました。病院運営コストの最大40%を占める医療用品は、人件費に次いで大きな
コストです。しかしこの業界はサプライチェーンマネジメントという点で、他の業界に大きく後れを取っていたのです。

同社はサプライチェーンの専門家を招き、自社のサプライチェーンの課題について整理しました。そこで喫緊の課題
として挙がったのが統一データ規格が存在しないことによる、不効率でした。統一のデータ規格が存在しないため、
各病院で同一の製品を異なる品番で扱ったり、製品の説明や呼び方が異なる場合もありました。

サプライチェーンの中で統一の規格があれば、患者の治療に使用した医療機器や医療用品の情報をチェーン全体で
容易に共有することが可能になります。効率性は向上し、医療の質の向上にも貢献します。この業界のある調査に
よると、看護師の70%が、勤務時間の5~20%を医療用品を探すことに費やしていました。在庫の場所を決めて、
持ち出しや返却のルールを定め、バーコードをスキャンして管理する上で、データ規格の統一化が大きく貢献しました。

これはほんの一例に過ぎません。カイザー・パーマネンテは、サプライチェーンで発生する取引のデータを収集する
情報システムに多額の投資をし、チェーン全体の情報を取りまとめ、調達プロセスの大幅な簡素化、施設間のリソース
の共有、サプライヤーとの良質なコラボレーションの構築を見事に成功させているのです。


2.第四原則:コラボレーションモデルの構築

 

自社のサプライチェーンを取り巻くサプライヤーと質の高いコラボレーションが実現されれば、戦略面および財務面で
多くのメリットを生み出すことが期待できます。

質の高いコラボレーションを構築するためには、何が必要になるのでしょうか?

自社とサプライヤーの関係をあらゆる面から理解して、自社のニーズとパートナーのニーズが最も適合する点を見つけ
出すことでしょう。自然災害が増え、政情不安が頻発する昨今の情勢では、以前にも増してパートナーシップが成功に
不可欠な要素となっています。

コラボレーションとは、自社とサプライヤーの間でアイデア、資産、情報、リスク、報酬を共有し、共通の目標に向かって
協力するための手法のことです。

コラボレーションによって、関係者全員に以下の様なメリットをもたらすことができます。

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3.コラボレーションの4つのレベル

 

コラボレーションを構築するパートナーには、顧客、原材料や部品のサプライヤー、製造面や物流面でのオペレーションを支える
パートナーなどが含まれます。こうした沢山のパートナーと構築するコラボーレションは、企業の種類や重要性によって、異なる
4つのレベルに整理されます。

1.取引上コラボレーション

取引上コラボレーションは、最も基本的で多く利用されるレベルです。特定の製品、サービスを特定の期間、
あるいは特定の購入量、購入額を条件に合意し、日々の取引は最小化して行われます。このレベルで求められる
ことは、パートナーとの取引を効率的かつ効果的に進めることです。このレベルでの取引においては、戦略的
価値を生み出すことはありません。また取引の大部分が手動で行われる点も特徴の一つです。

2.協力的コラボレーション

協力的コラボレーションは、取引上コラボレーションよりも高度な情報共有が行われます。需要予測、在庫量、
発注、注文、納入状況など沢山の情報をパートナー企業と共有します。標準化されたデータを用いることで、
サプライヤーは計画プロセスでこのデータを活用し、顧客の直近の購入行動や売上パターンなどを的確に把握
することができます。

3.協調的コラボレーション

協調的コラボレーションでは、自社とパートナーがより一層緊密に協力し、互いの能力の依存度が高くなります。
このレベルのコラボレーションでは、情報が双方向に流れ、計画、実行プロセスが同期されていなければなりません。

多くの企業では、戦略的に重要なサプライチェーンパートナーに限定して、協調的コラボレーションを構築して
います。ベンダーマネージドインベントリー(VMI)は協調的コラボレーションの代表的な例と言えるでしょう。

※VMIによってリードタイムを45日から1日短縮した事例

このレベルで期待されるのは、コレボレーションによって生み出されるメリットを当事者同士が享受することです。

4.同期コラボレーション

同期コラボレーションは、最も深いレベルのコラボレーションです。共同のR&Dプロジェクト、サプライヤー開発、
知的財産開発に一緒に取り組みます。分かり易い例がパソコンです。ハードウェア、OS、アプリケーションは互いに
サービスの共同開発、情報共有、共同作業が行われています。

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以上、4つのコラボレーションのレベルについてご紹介しました。パートナーとのコラボレーション戦略を立てる
ときは、各パートナー企業に最もふさわしいコラボレーションのレベルを明確に決める必要があります。

企業がコラボレーション構築に成功するかどうかは、企業とパートナー企業が相互の合意事項を実現できるかどうか
にかかっています。そのためには、お互いにどのレベルで関係を構築するのか、認識を合わせた上で合意事項を決めて
いく必要があるのです。次回は第五原則「パフォーマンスの測定」について一緒に学んで行きましょう。お楽しみに。

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参考文献>
・ショシャナ・コーエン著「戦略的サプライチェーンマネジメント」英治出版
・マーチン・クリストファー著「ロジスティクス・マネジメント戦略」ピアソン・エデュケーション