共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~リエンジニアリング①~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~リエンジニアリング①~

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 画像素材:World Image/PIXTA

<目次>

1.リエンジニアリングこそ日本企業の十八番

2.求められる劇的で革命的な成果

3.”繋がり”と”R”のデザイン力

 


1.リエンジニアリングこそ日本企業の十八番

 

メーカー、卸、小売は物流コスト増大に頭を抱えています。果たして、物流コストを劇的、画期的に削減する手法は残されているのでしょうか?
さらに今後はグリーン・ロジスティクスへの対応を前提にした物流コスト削減を模索しなければなりません。経営資源を切り捨てしたり、統廃合することによって解決することが出来ないことは明らかです。そこで、注目されるのが物流のリエンジニアリングです。リエンジニアリングというのは、デジタルを活用して、これまでのBS(バランスシート)には表れていないビジネスプロセスに注目して、それを根本的に見直しして、顧客満足を追求するモノの流れに作り替えることです。これによって、まだまだ物流には効率化、コスト削減の余地が十分にあると考えられます。

これまでの物流は「規模の経済性」を追求するために、生産、運輸、倉庫、卸、小売というように、細分化され役割毎に縦割りに組織化がなされてきました。各機能はその役割の範囲で規模を拡大させながら、利益の追求を行ってきました。しかし、この方法は現代の流通形態には不向きです。

サステイナブル時代のリエンジニアリングの基本コンセプトは、自社だけでなく、サプライチェーン全体を構成する企業を巻き込んで効率化を追求することです。難しく思うかもしれませんが、実はこれは日本企業が得意なことです。トヨタの「ジャスト・イン・タイム」は関わる企業全体を巻き込んで生産性を極限まで高めることに成功しました。その手法は世界の製造業の模範となりました。

またセブン-イレブンは、1号店が開店した当時(1974年)は、30坪の店舗に1日約70台のトラックが納品にきていましたが、地域の安全性や環境問題を鑑みて、独自の共同配送システムを構築しました。メーカーに協力を依頼し、異なるメーカーの商品を1台のトラックで運ぶことで現在では1店舗あたり1日9台による納品を実現しています。

このようにリエンジニアリングのルーツは日本企業にこそあり、全体を巻き込んで最適化や改善を図るのは日本企業の十八番とも言えるのです。
しかし、勿体ないなと思うのは、せっかくトヨタやセブン-イレブンが見事に成功させたリエンジニアリングの手法が体系化されていないことです。よってその他の企業がそれを再現させることができない、つまり再現性が低いのです。この再現性を高めるうえでどうしても必要な要素が「テクノロジーの活用」であるというのが筆者の考えです。BSや組織図には表されていないビジネスの流れのプロセスに注目して、グリーン・ロジスティクスの視点でテクノロジーを活用して、多くの企業で再現可能なリエンジニアリング手法を体系化するところに、物流の明るい未来と可能性が広がっていると思います。

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(出典:セブンイレブンジャパン公式サイトより)

 


2.求められる劇的で革命的な成果

 

リエンジニアリングの基本コンセプトは、ビジネスの機能ではなくプロセス(モノと情報の流れ)に注目して、その流れを効率化、単純化することにあります。
例えば小売の競争は表面的な売場レベルでなされるものではなく、仕入、在庫、販売までのトータルシステムのレベルでなされます。米国ウォルマートの大成功を見ればそれに疑いの余地はありませんね。つまり、仕入、在庫、販売の各機能単位で考えるのではなく、トータルシステムとしてモノと情報の流れを効率化させることを考えるのがリエンジニアリングの考え方になります。高度にロジスティクスシステム全体をリエンジニアリングしている国内の成功事例といえば、やはりセブン-イレブンでしょう。30坪の1店舗におよそ3000点もの商品が納品されます。これだけの商品をもし、メーカー別、問屋別に納入していたら、店舗は納入作業だけで1日を終えることになってしまうでしょう。では何故このようなことが可能になったのでしょうか?成功要素はいくつかありますが、まず出店戦略は、一定の地域に店舗を密集させ、店舗間の配送距離が短くなるドミナント戦略を採用しています。店舗同士が近くにあればあるほど、物流効率はアップします。これにより「鮮度のよい商品がいつでも店舗に並んでいる」という強みを獲得し、競合との差別化につなげているのです。
もう一つはやはり共同配送による物流戦略です。工場で生産した商品は、一度共同配送センターに大ロットで運び込まれます。これらはセブン-イレブンの物流情報システムによって各店別に仕分け指示がなされ、配送ルートにしたがって店に出荷されていきます。この共同配送体制が凄いのは、温度別の混載物流であり、品種やメーカーや問屋が違っても、同じ温度帯のものが正しく混載されて配送される点です。また店への納入頻度が同じ商品については、品種やメーカーの違いを超えて集約して物流を行っています。さらに、セブン-イレブンの発注はすべて実需要に沿っており、従来の小売業界の常識であった「見込み仕入れ」ということを撤廃しました。生産・物流・販売のトータルなビジネス・プロセスが極めて効率的にシステム化されているのです。

物流業界にはいま、このような劇的で革命的な効率化が要請されています。2025年問題(労働時間短縮)、2050年問題(カーボンニュートラルの実現)に向けて各企業レベルでの数パーセントの物流コスト削減策に頭を悩ませている暇はありません。これからの物流は、メーカー、卸、小売といった企業内だけの最適化ではなく、流通プロセスそのもののリエンジニアリングが求められ、それのみが劇的で革命的な成果を生むことを忘れてはなりません。


3.”繋がり”と”R”のデザイン力

 

サステイナブルが求められるこれからのビジネスでは、2つのデザイン力が求められると筆者は考えます。1つ目は、”繋がり”です。各社の直接的な利益目標達成よりも、全体としての利益やベネフィットをいかに循環させて持続可能性を高めていくかという考え方です。そこの”繋がり”をデザインすることで循環モデル(エコシステム)が生まれ、その中で自社がどのようなポジションをとるかということが、今後の世界共通の経営の基本コンセプトになるのではないでしょうか。
各社がバラバラに多角化を図り規模の拡大、利益最大化を図る戦略はサステイナブル時代には全く通用しなくなります。自社だけ良くなろうというのは、自分で自分の穴を掘ることになります。またそうした企業が1社でもあれば全体として下がります。

もう一つは”R”のデザイン力です。”R”とは、リユース、リサイクル、リノベーション、リエンジニアリングのことです。新しい物をゼロから創り出すというよりも、今あるものをいかに活用するかという考え方です。ここのデザイン力が今後のサステイナブルな事業経営を表現する上で説得力を持つと思います。

ローソンは、内閣府戦略的イノベーションプログラムの「スマート物流サービス」プロジェクトの一環として、経済産業省の支援のもと、2月21日(月)から27日(日)までの1週間、セブン-イレブンと、「両社の配送センター間の物流の共同化」、「配送センターから遠く物流効率に課題があるエリアの店舗への共同配送」の実証実験を、北海道札幌・函館エリアにて実施しています。(下図参照)

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このような共同物流はまさに”繋がり”と”R”のデザイン力によるものだと思います。競合他社をも巻き込んで、サプライチェーンを構成するステークスホルダー全体で物流を”R”(リエンジニアリング)することで、コンビニエンスストア業界における新しい物流の形を模索しています。

システムの“内製化”_メイン画像