デジタル技術が生み出すスピード経営 ~物流によるROI向上~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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デジタル技術が生み出すスピード経営 ~物流によるROI向上~

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 画像素材:Melpomene /PIXTA

<目次>

1.ロジスティクス戦略の効果がもたらすROI向上

2.自社の物流のトータルコストの構成を理解する

3.企業会計の数値はロジスティクス戦略には使えない


1.ロジスティクス戦略の効果がもたらすROI向上

 

物流業界は、かつてない激動の時代を迎えています。メーカーから最終消費者に商品が届くまでのシステムは、革命的な変貌を遂げており、これまでの分業体制が機能しなくなっています。新しい時代の物流システムに対応できた企業と、そうでない企業との業績の差は、確実に広がっています。この変化の激しい時代の中で焦燥感を感じながらも懸命に頑張っておられる数多くの物流に携わる皆さまに、その頑張りの方向を見定めていただきたい、という願いをこめて本稿を執筆しています。頑張るというのは、がむしゃらに働くということではありません。自分の会社が現在置かれているポジションと、時代の流れを洞察して、適切な手段を講じる、つまり、時代の流れの方向に舵を切る、ということです。

これまでの経営・管理のやり方と、現在のやり方は大きく違っています。これまでは、ヒト・モノ・カネが経営資源として機能しました。
現在は、「情報」それ以上に大きな役割を果たしています。この”目に見えない経営資源”である情報の蓄積と活用が、大きく業績を左右するのです。

ロジスティクス戦略の効果は経営全体に作用するものであり、ROI※の向上をもたらします。各地に散らばる物流拠点を一つの拠点のように一括管理し、売れる商品を売れるときに無駄なく供給できるシステムがなければ、物流の機能を生かすことはできません。組織間の情報の断絶をなくし、各物流拠点が地理的に離れていても、システム上では一つの拠点のように一体運用する仕組みをつくることです。
今の時代のデジタル技術を応用すれば、このように、コンピュータのシステム上で多くの拠点があたかも一つの拠点のように運用するバーチャル拠点を実現することが可能です。もちろんグローバル物流もボーダレスに実現可能です。これにより、企業は製造原価を低減して、間接経費の増大についても、組織間の情報伝達の壁をなくして改善することで高収益を維持することができます。

※ROIとは・・・Return on investmentの略。投資した費用から、どれくらいの利益・効果が得られたのかを表す指標。
       「投下資本利益率」「投資利益率」とも呼ぶ。ROIの計算式は「利益金額÷投資金額×100(%)」

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2.自社の物流のトータルコストの構成を理解する

 

ロジスティクス戦略を実行して、ROI向上の経営を実現するには、まずは下図を理解することです。

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ここに示す項目をロジスティクス変数ということにします。ロジスティクス戦略の基本は、顧客満足の追求により競争に打ち勝ち、顧客から連続的にリピート・オーダーをもらうことです。ロジスティクス戦略は、顧客が求めている商品を、顧客の満足する物流サービスによって提供し、これによって競争企業に打ち勝って売り上げを増大し、ROIを徹底的に高める、という極めて戦略的なトータルシステムの構築を目指すことです。

物流の各機能間にはトレードオフ※の関係があるので、あるロジスティクス変数を変えると、他の機能に予測しがたい変化をもたらすことがあります。したがって、物流戦略の実行がトータルシステムに与える影響を見極めることが必要です。下の図に「物流のトータルコストの構成」を示します。これは製造業の例で示しています。

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前述しましたが、物流コストは企業の全部門にまたがって発生しており、一方のコストを下げても他部門のコストが下がらないというトレードオフの関係があります。これは物流コストと、物流サービス水準の間にもあります。ここで「物流コスト削減」一点張りであった視点を少し変えて、物流サービス水準を上げて、それに顧客が満足して、注文を余計にくれるとどうなるか、というように考えます。
サービス水準を上げることで増える物流コストよりも、顧客の注文が増えることによって得られる利益の方が上回る計算が成り立てば、その戦略を実行する価値はあります。あるいは、部品を外国から輸入してコストを下げると売り上げが増大します。しかし、逆に一定の在庫を持っておく必要が生じるため、売上は増大しますが、ROIが低下する可能性があります。

※トレードオフとは・・・何かを得る時には、何か別の物を失うということ。両立が難しい場合のことを表現する際に用いられる。


3.企業会計の数値はロジスティクス戦略には使えない

 

このようなことを考えて計画を立てるために、使えるデータや情報が皆さんの会社には蓄積されているでしょうか?企業会計の各部門に細分化して割り当てている予算統制や、その結果の原価計算書などはこのような戦略立案には全く使えません。まず適切なコスト情報を得るのが困難なため、ロジスティクス戦略の立案は困難になります。ロジスティクスを意思決定するには、その意思決定によってもたらされるコスト変化、売上の増減、投資資本の額などの関係で判断します。残念ながら、現在の企業会計の原価計算は財務目的で、ロジスティクスとしての物流の目的にはまったく使うことができません。

間断なくROI向上の経営を実行するためには、無駄な在庫を徹底的に削減して、顧客ニーズを満たす商品を提供して、売上を増大させることです。トヨタが創造したジャスト・イン・タイムによって”モノの流れ”をつくることが、これまでの成功法則でした。しかし、モノが溢れ、ヒトが不足していくこれからの経営環境においては、ジャスト・イン・タイムに変わる”情報の流れ”をつくることが時代の流れに舵を切る戦略だと私は考えます。

先に示した「物流のトータルコストの構成」の図の各値は変数となります。例えば物流サービスを向上させると、「梱包用資材」と「人件費と間接費」が現状より10%増加すると仮定して、サービス向上による受注増を5%で見込んだ場合、それぞれの額面を比較することで、意思決定を行うことができます。こうしたやり方は「物流コスト」という形で製造原価に紛れてしまっている通常の財務計算ではできないことです。自社の物流コストの構成を整理し、それぞれの変数の値を毎月チェックできるような仕組みを作りましょう。

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