“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~WMS構築プロセス~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~WMS構築プロセス~

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 画像素材: にしやひさ/PIXTA

<目次>

1.倉庫管理システム(WMS)構築の基本的なプロセス

2.構想フェーズの3つのプロセス

3.運用フェーズの2つのサイクル


1.倉庫管理システム(WMS)構築の基本的なプロセス

 

物流センターを運営する上で、倉庫管理システム(WMS)の導入は欠かせません。荷主企業が自社で物流センターを運営する際は、本社機能としての基幹システムと物流センター側のWMSが連携して日々の物流業務を行います。3PL事業者であれば、WMSがそのまま自社の基幹システムとなります。

いずれの場合でも、物流センターにはWMSが必要になります。WMSの構築は通常、以下の図に示す通り「構想フェーズ」「インテグレーションフェーズ」「運用フェーズ」の大きく3つの基本プロセスを経て構築します。

世の中にはWMSのパッケージも沢山ありますが、単純に業務を支援するだけのWMSではなく、「組織の意志疎通を支援するWMS」を構築することが大切です。”組織の意思疎通を支援する”というのは、データをただデータベースに集積するのではなく、集めたデータを情報に変え、知恵に変えて企業がアジリティを獲得し、顧客に貢献することを支援するということです。

構想フェーズでは、そのための前提条件をしっかりと整理し、業務改革案の作成を行います。構想フェーズでは、「前提条件把握」「現状分析」を行い、「業務改革立案」を作成することになります。

どのようなロジスティクスシステムにするのか、その未来像を描き、その実現方法、導入効果なども一緒に検討します。構想フェーズを終えると、次にインテグレーションフェーズに移行します。ここでは、WMSの設計、開発、導入を行います。場合によっては、マテハン機器の導入や、物流什器の導入、倉庫レイアウト設計なども行います。従来、WMSのようなシステム導入とマテハン機器や物流什器などのハードウェアの導入は切り分けて考えられてきましたが、筆者は一体のものとして考えることを推奨しています。インテグレーションフェーズでは、これらを一つの管理下で実施することで、より効果性の高いWMSの構築が可能になると考えています。

目標とする新しい物流の姿は、WMSの導入のみで達成できる場合もありますが、ソフトウェアとハードウェアを一体のものとして考えてシステムインテグレーションを行うことが、真の問題解決につながるという認識を持って頂きたいと思います。こうして導入されたWMSとハードウェアは、運用テストにおいて統合化したテストを行うことで目標達成に対する評価を受け、運用に移ります。

運用フェーズでは、構築されたWMSを本稼働させ、運用中に発生する問題点や課題、システムの不具合を整理しながら改善していきます。この運用フェーズは物流センターが運営を続ける限り続くことになります。よって、導入後数年して、自社を取り巻くビジネス環境の変化に合わせてWMSをバージョンアップしていくことも必要になります。この運用フェーズで重要な視点は、「システム監査」と「データ活用」です。一旦WMSの導入が落ち着くと、あとは障害対応だけになりがちですが、これは「守りのデジタル活用」ということになります。「攻めのデジタル活用」では、WMSをより良く作り変えるという視点に立ちます。

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2.構想フェーズの3つのプロセス

 

WMS構築における基本プロセスのうち、その成否に最も大きな影響を与えるのは構想フェーズです。新たな物流の革新性、業務の効率化、企業経営への影響はこの段階で決まると言っても過言ではありません。

(1)前提条件把握

前提条件の把握では、業務フローの整理、現状の課題や改善点、目標の設定などを行います。ここで重要なことは、WMS導入の対象をどの範囲にするかということについて明確にしておくことです。基幹システムやERPの範疇にまでWMSの要件が広がっていくような場合がありますが、それは事前に範囲を明確にしていないからです。
先入観で範囲を決めるのではなく、関連する部署へのヒアリング、データの収集を行うことで対象範囲を検討しましょう。

(2)現状分析

対象範囲を明確にし、在るべき姿が具現化できたら、そこと現状とのギャップを問題点として整理します。その際、問題に対する解決方法を課題として整理し、解決に対する制約条件があればそれも整理します。

目標設定では、前提条件の整理と並行して、自社の物流の在るべき姿をステークホルダー間で検討し、WMS導入の目標と計画を整理します。その際には、関連が少ないと考えられるステークホルダーを含めて検討することで、異なる視点からの議論が得られるといった効果があります。

(3)業務改革立案

前提条件把握において、設定した新しい物流の目標をより具体的なあるべき姿にまとめ上げます。そして、そのあるべき姿に到達するのに必要な現状とのギャップを解消する手段を、制約条件、前提条件を考慮しながら検討します。

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3.運用フェーズの2つのサイクル

 

WMS導入後、運用段階において様々な要求や課題が生じます。これらの対応については、「改善サイクル」と「再構築サイクル」に分けて対応します。
「改善サイクル」は、当初のシステムの要求や目標を達成するための改善要求への対応です。「再構築サイクル」は新たな要求、あるいは新たな目標への対応です。改善サイクルは現場主導のボトムアップで進めるサイクルであり、再構築サイクルは経営主導のトップダウンで進めることになります。

従来のWMS導入プロセスでは、現場主導の改善サイクルは行われたとしても、経営主導の再構築サイクルが行われることはありません。WMSベンダー企業もどちらかと言えば、安定稼働後は出来るだけシステムに改良を加えることを嫌います。しかし、経営の視点に立ったより大きくダイナミックな再構築サイクルを回すことで「硬直型」のシステム開発から「成長戦略型」のシステム開発にシフトすることができます。

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