“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~実地棚卸とは~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~実地棚卸とは~

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 画像素材:mayucolor/PIXTA

<目次>

1.なぜか上手くいかない棚卸

2.今さら聞けない、棚卸とは?

3.棚卸の成功は準備で決まる

4.棚卸計画書を作成する

 

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1.なぜか上手くいかない棚卸

 

出荷動向に連動して在庫を適正にマネジメントすることが出来れば、顧客満足向上につながります。そのように在庫を適正にマネジメントするためには、現品在庫と帳簿在庫(システム在庫)を常に正確に一致させておくことが不可欠です。しかし、日々の物流センター運営の中で、さまざまな要因で現品在庫と帳簿在庫は狂いが生じます。これをゼロにするのは、完全にオートメーション化された物流センターでない限り難しいでしょう。人が入出荷作業を行う以上、どうしてもヒューマンエラーは避けられません。だからといって、これを放っておいては、在庫を適正にマネジメントすることができませんから、狂いが生じた在庫を「実地棚卸」によって調整する作業が必要になります。

棚卸というと、「棚卸の数を数えるだけ」と思われがちですが、実はそれ以外にも沢山やることがあります。また、ただ数を数えるだけといっても、作業者がそれぞれ好き勝手に自己流のカウントをしていたのでは、正確さに欠けてしまいます。

弊社はWMSをクライアント企業に導入していますが、一番問い合わせが多いのが、実は棚卸なのです。ですから、多くのクライアント企業が棚卸を行う月末には、沢山のサポート電話を頂戴します。そのほかにも、「棚卸はどのように運用するのが正しいのか?」といった質問を多く頂きます。何故、数をただカウントするだけの棚卸がこうも難しくなってしまうのでしょうか。その一番大きな要因は、棚卸が「日常業務ではない」ことです。毎週、毎月棚卸を行っている企業であればまだ良いのですが、四半期に1度、年に1度という企業も少なくありません。

日常業務ではないため、現場向けの運用マニュアルや運用計画が多くの物流センターで存在していません。またイレギュラー発生時も現場の方が上手く対応できません。皆さんの物流センターでは、実地棚卸する際に、棚卸計画を作成されているでしょうか?WMSなどの物流システムも、入荷や出荷の機能は毎日使いますので、慣れてしまえば問合せがなくなりますが、棚卸は年に数回なので、その都度操作方法やオペレーションミスによる問い合わせが発生するのです。


2.今さら聞けない、棚卸とは?

 

ここで、棚卸の基本についておさらいをしておきましょう。棚卸とは、倉庫や現場に保管されている材料や商品の全品数をカウントして、帳簿上の在庫と比較し、更新する作業のことです。会計処理の観点で少し定義を付け加えると、「売上原価を算出するために棚卸原価額を計算すること」となります。その他にも物流センターに不良品や不活動商品がないかもチェックします。賞味期限や使用期限の管理が必要な商品であれば、そうした期限切れ商品もチェックします。帳簿在庫と現品在庫を比較して、差異がある商品については減耗報告書を作成して、しかるべき部署に報告書を上げます。最近では多くの企業がWMSや在庫管理システムを導入しているため、こうしたシステムの理論上の在庫数と実棚数量を比較し、最終的には実棚数量でシステムの理論在庫を一括で更新します。

また棚卸には「一括棚卸」と「循環棚卸」の2種類の方法があります。一括棚卸とは、物流センター内の全ての在庫を棚卸対象とする方法です。一方、循環棚卸とは、エリアや商品を限定して棚卸を実施する方法です。毎月一括棚卸をすることが在庫精度を向上させる上で望ましいですが、それだけコストもかかってしまいます。そこで毎月の棚卸は循環棚卸でその月に動きのあった商品のみを棚卸し、年に1回の期末棚卸で、一括棚卸を実施するといった運用を行います。

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3.棚卸の成功は準備で決まる

 

精度の高い効果的な棚卸を行うためには、事前準備を徹底し、効率よく網羅的に行われなければなりません。棚卸の成功は準備段階で決まります。会社トップ主導のもと、目的と目標を具体的に定めた計画書を準備し、関係者に周知徹底をすることが重要です。また、棚卸準備のチェックリストを作成しておくことをお勧めします。棚卸は物流部門以外の部門も関連しますので、部門毎に必要なチェックリストを作成し、物流部門から各部門へ連携しておくとよいでしょう。物流部門では、倉庫内の整理・整頓が行われているか、ロケーションが正しく登録されているかなどをチェックします。発注部門では、倉庫間移動の未処理はないか、仮伝での納品で未処理がないかなどをチェックします。営業部門では、返品や誤納で引き取って未処理になっているものはないか、営業車に在庫が残っていないかなどをチェックします。その他には棚卸に必要になる用品や用具のチェック、必要要因の確保や計画作成などをチェックしましょう。


4.棚卸計画書を作成する

 

棚卸計画の作成は棚卸責任者の任命から始まります。棚卸責任者は当日の棚卸が迅速に正確に行わるよう予め計画を作成する必要があります。棚卸責任者は物流センター毎に1名任命しますが、会社によっては部署単位やエリア単位で任命するケースもあります。また社長が棚卸責任者を任命することで、棚卸の重要性が関係者に浸透します。

棚卸責任者は、棚卸当日の大まかなタイムスケジュールを作成し、関係者に周知徹底します。誰がいつ何をするのかを明確にし、各自の目標時間も同時に設定するとより効果的です。棚卸の計画では以下のことを決めます。

1.棚卸の目的
2.棚卸日
3.棚卸時間:開始予定&終了予定
4.棚卸対象品:良品・中古品・不良品
5.棚卸表の作成:有・無
6.棚卸金額算定法:最終仕入原価法・移動平均法
7.棚卸参加人数
8.棚卸責任者

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タイムスケジュールに続いて、作業割り当て表を作成します。作業割り当て表は棚卸を行う担当範囲を明確にすることで、カウント漏れを防止出来ます。また大まかな作業の進捗状況も確認しやすくなります。

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棚卸を行う場合、入荷、出荷を完全に止めることは難しい場合が多いと思います。そこでカットオフ計画が重要になってきます。カットオフというのは、棚卸を行う際に、棚卸を行わない範囲や商品を明確にすることです。例えば棚卸当日に入荷したものは、棚入れはせずに、よけておく。事前に出荷することが分かっている商品は棚卸前に棚卸からカットするよう札を貼っておく。当日荷動きが発生する商品を予め特定しておいて、棚卸を行わないように目印をしたり、計画を立て現場に指示をしておきます。このカットオフの計画がないために、棚卸が正確に行われないケースが非常に多いので、棚卸計画書を作成する際には必ず盛り込んでおきましょう。

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