ユナイテッドアローズ基幹物流センターに潜入!RFID活用最前線を探る(前編)|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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ユナイテッドアローズ基幹物流センターに潜入!RFID活用最前線を探る(前編)

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 画像素材:Kwangmoozaa/PIXTA

<目次>

1.ユナイテッドアローズの基幹物流センターに潜入

2.コロナ過でアパレル流通に苦境

3.自動化された巨大物流センター

4.RFIDは物流で費用対効果を見込めるのか!?

 

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1.ユナイテッドアローズの基幹物流センターに潜入

 

千葉県流山市の物流施設「DPL 流山I」内にある株式会社ユナイテッドアローズ(代表取締役社長: 松崎 善則 以下「ユナイテッドアローズ」)の「流山ロジスティクスセンター」に訪問してきました。この物流センターはユナイテッドアローズの基幹物流センターであり、入荷、品質管理、流通加工、保管、出荷機能を有し、全国および海外の店舗へ商品を供給しています。

訪問の目的は物流センターでのRFID活用のフロントラインを突っ走る同社の仕組みや取り組みについて知ることで、RFIDの物流領域における活用の現在置を確認するためです。こちらからの一方的な依頼に対して、ユナイテッドアローズSCM本部物流推進部の藤嶋 秀典氏は快く応じて頂きました。


2.コロナ過でアパレル流通に苦境

 

アパレル流通は、コロナ過によって慢性的な過剰供給に止めを刺される形になりました。経済産業省「電子商取引統計」の推計によれば、衣服・服飾雑貨の小売総額は2019年の13兆7700億円からコロナ過の20年は11兆4200億円と17.1%減少し、ピークだった1991年の19兆8800億円の6割以下にまで萎縮しました。
さらに総務省の家計調査では20年のアパレル支出は前年から20.2%減少しています。同社も2022年3月期は当初想定して利益予想には至らない厳しい状況におかれました。しかしながら、2022年3月にはネット通販サイト「ユナイテッドアローズ オンライン」の大幅な刷新を行い、実店舗とネット通販を融合させるOMO戦略をスタートさせました。DXにも注力しており、サプライチェーンのデジタル化に加え、デジタル情報を駆使したマーケティング力も強化しています。

※OMO・・・Online Merges with Offlineの略で、オンラインとオフラインの融合

 


3.自動化された巨大物流センター

 

以前から同社のサプライチェーンへの積極投資は業界でも有名で、度々マスコミなどで取り上げられてきました。私も期待に胸を膨らませて現地に足を運びました。まず最初に一番びっくりしたのは、人が殆どいないということ。同センターは、運営の省人化や効率的な運用を図るため、大型マテハン機器を導入した最新型の物流センターを稼働させています。全長1.2kmのハンガーラックシステムをはじめ、高速での入出荷作業が可能なケース自動倉庫「マルチシャトル」、ピースソーターを組み合わせた大型マテハンシステムを導入しています。最小限の人員で倉庫が運営されており、一日に6万点以上のSKUを出荷しているというから驚きです。

■ケース自動倉庫「マルチシャトル」

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■整然と並ぶピースソーター

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4.RFIDは物流で費用対効果を見込めるのか!?

 

さっそく、SCM本部物流推進部の藤嶋 秀典氏にRFIDことについて色々と詳しく教えて頂くことにしました。何よりも私たちが一番気になっているのは、「果たして物流領域だけでRFIDの費用対効果は見込めるのか?」という誰もが抱く疑問です。さっそくこの質問について冒頭ぶつけてみると、開閉一番「見込めません」との回答でした。。。私も職業柄、RFIDの物流領域での活用がなかなか進まない理由について色々と調査していました。調査すればするほど、物流だけで投資費用を回収するのはなかなか難しいのではないか、という疑問が強まっていきました。しかし、アパレル業界ではRFIDが他の業界に比べて断然進んでいますし、なによりもRFIDの活用においてはトップリーダーである同社のことですから、何かとんでもない秘策があるのでは、と期待していました。しかし、藤嶋氏の回答を聞いて、「やっぱりそうか」というのが率直な感想です。

RFIDは棚卸で一括で読み取れる点が大きなメリットということでRFIDメーカー各社がPRされています。1点1点バーコードをスキャンしなくてもカウントできるため、棚卸工数が大幅に削減できるというものです。これだけ大きな倉庫で膨大な数のSKUを在庫されている同社なので、さぞ棚卸では大きな効果が出ているだろうと期待し、聞いてみるとこちらも答えは「NO」。なんと棚卸ではRFIDを一切使っておらず、バーコードをスキャンして棚卸をしているそうです。倉庫に在庫されているSKU全てにRFIDが付いているにも関わらず、なぜあえてバーコードをスキャンするのか聞いてみました。

「これだけ広大な倉庫では、どこに何の商品がどれだけあるか、人の頭では把握できていません。そんな状態でスキャンされたかどうかわからないRFIDで棚卸を当たることは合理的ではありません。」

なるほど、1点1点スキャンしなくてもよいRFIDの強みが、これだけ大きな倉庫と膨大な数のSKUの棚卸では、逆にデメリットになってしまうということですね。ただし、店舗の棚卸ではRFIDは活用しているようです。店舗は敷地が狭いため、人が大体の位置やSKU数などを把握しているので、RFIDで一括でスキャンしても棚卸の精度が悪くならないということです。いずれにしても、RFID活用のリーダーカンパニーである同社の基幹物流センターでも、費用対効果は期待できない、大幅な工数削減が期待できる棚卸でも利用していないとなると、逆になぜRFIDを使い続けているのか気になってきました。

その答えは・・・次回のお楽しみ。

今回の内容について、詳しくは4月に開催される関西物流展の↓のセミナーで紹介させて頂く予定です。セミナーの事前お申し込みは必要ありませんが、
関西物流展のホームページから来場事前登録をお願いします!

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