経産省によるフィジカルインターネットのロードマップを徹底解剖!②|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経産省によるフィジカルインターネットのロードマップを徹底解剖!②

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 画像素材:Yokohama Photo Base /PIXTA

これまでは、経験と勘に頼っていた物流もリアルタイムデータに基づいて設計、実施されるデータドリブンエコノミーによるコネクティッドロジスティクス時代がまもなく到来します。そんな中、2040年を目指すフィジカルインターネットのロードマップが策定され、物流の効率化や持続可能性に向けた具体的な方針が示されました。その中で、ソフト面を中心とした標準化を図りつつ、より広範囲のデータ連携や情報共有などを進める「物流・商流データプラットフォーム」について今回は取り上げます。物流・商流データ基盤を開発するための、基礎技術の開発や、標準化のガイドラインなど、物流現場の更なる効率化推進に向けた取り組みの具体的な内容を探りながら、未来の物流の在るべき姿に迫ります!

2023年9月5日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)

2023.09.05

<目次>

1.SIPスマート物流サービスによるデータ基盤

2.データ物流を活性化させるための技術開発

3.物流情報標準ガイドラインの策定

4.足元の地道な取り組みとテクノロジーの活用の2つの視点

 


1.SIPスマート物流サービスによるデータ基盤

 

企業が情報を抱え込み、競争力の源泉にした時代は終わりを迎えようとしています。情報を広く共有すれば、それよりはるかに大きな価値を生み出すことができるようになります。需要と供給のコントロールが刷新されて、物流の平準化を実現することが可能になるのです。「内閣府SIPスマート物流サービス(以下SIP)」は、情報を資産として集めて、それを活用することで物流の効率化を図るところからスタートしました。そのために必要になったのは、情報を競争力の源泉とする考え方は捨てるということでした。自社が持つデータを抱え込もうとするのは、全ての情報を共有することから生まれる価値と比べると、ほとんど意味がないことです。

経産省によるフィジカルインターネットのロードマップの2つ目の取り組みとして、「物流・商流データプラットフォーム」に関する項目があります。これを実現するために、政府によって考案されたSIPを活用しようということです。SIPを実現するには、データ連携、情報連携ということで、様々な個別に独立した情報をいかにして上手く繋げていくかが重要になります。そのためには、様々な標準化を同時並行的に進めていく必要がある一方で、物流という閉じた中での標準化だけでなく、荷主や工場といった、特にモノづくりの製造工場と物流が密に連携していくことが重要になります。もはや業種ごとに標準化を進めるレベルでは限界にきています。製造工場や物流倉庫という領域を超えた取り組みが求められます。生産と物流がつながるのが理想だというのは、以前から言われていたことです。しかしながら、足元をみると、同じ業界の中でもまだ揃っていないのが実状です。フィジカルインターネットの実現で必要になるSIPによるデータ基盤を実現するには、ゴールを先に決めて、業種を超え、そこから大胆に改革を進めて行く必要があると強く思います。

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2.データ物流を活性化させるための技術開発

 

本ロードマップでは、物流・商流データの流通を活性化させるために、以下の4つの要素基礎技術の開発が必要になると書かれてあります。

①アクセス権限コントロール技術

②非改ざん性を担保する技術

③個別管理データを抽出し変換する技術

④他の先行するプラットフォームとの連携技術

これら4つの技術を持ったプラットフォームの基盤を業種別に構築しようというものです。業界毎のサプライチェーンの特徴を生かしたサービスモデルを構築するため、以下の5業種の分野でプロトタイプの開発に取り組み、実装責任者を置き、データ基盤を利用したビジネスモデルを設計します。

①リテール

②地域物流

③医療機器

④医療材料

⑤アパレル

これらの基盤の活用が、物流の効率化につながることを確認し、一部は社会実装が進んでいるということです。

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3.物流情報標準ガイドラインの策定

 

物流プロセスやメッセージ等を標準化させるための「物流情報標準ガイドライン」の策定も盛り込まれています。データ連携や情報共有化に不可欠なデータ等の標準形式を規定したものです。企業が物流情報ガイドラインに準拠した形でシステムを構築することで、企業間のシステムやデータ連携のコストが圧倒的に削減できるというメリットがあり、データ共有が一気に進むと期待されています。この物流情報標準ガイドラインは以下よりダウンロード可能です。

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※画像をクリック頂くと、PDFがダウンロード可能です。

物流情報ガイドラインは「物流業務プロセス標準」「物流メッセージ標準」「物流共有マスタ標準」の3つから構成されており、「物流XML/EDI標準」や「UN/CEFACT」「ISO」「GS1」など、物流分野の国内標準、グローバルなコード体系をベースに規定されています。

 


4.足元の地道な取り組みとテクノロジーの活用の2つの視点

 

フィジカルインターネットの実現には、足元の地道な取り組みと、テクノロジーによって、一気に解決させる取り組みの2つの視点が必要ではないでしょうか。たとえば、なかなか進まない運賃標準化にしても、ダイナミックプライシングのようなシステムが出来れば解決するし、ドライバー不足問題にしても、自動運転が早期に実現されれば、一気に解決させることが可能になります。

地道な足元の改善を進めつつも、テクノロジーによる可能性や活用にもっと目を向けることが必要だと感じています。テクノロジーは世界をあっという間に変えてしまう力があるからです。なかなか解決が進まないトラック待機問題にしても、自動運転が普及すれば、トラックに行先情報が入り、トラックの現在地が分かるようになります。
ということは、バース予約システムと連動するようになります。そうするとこちらも、一気に待機問題が解消される可能性があります。

フィジカルインターネットの持続可能な運用には、データプラットフォームのメンテナンスやハンドリングなど、実際の運用に関わる側面が重要です。しかし、現在のロードマップからはそのビジネスモデルが明確に見えてこない点に懸念を抱いています。国単位でのイノベーションは難しいことであり、民間企業が投資を進めるにはビジネスモデルの透明性が必要です。また、2024年問題についても、残業削減が労働環境を改善する一方で、運賃を上げなければ賃金が増えず、生活環境が悪化する可能性があります。運賃を上げることは長年の課題であり、その克服が求められます。果たしてどのように解決していくのか、課題が前に立ちはだかっています。

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