激しい変化の時代に求められる「内製化」。独自の物流DX手法を徹底解説!|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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激しい変化の時代に求められる「内製化」。独自の物流DX手法を徹底解説!

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 画像素材:IYO/PIXTA

デジタル時代の大きな技術的進歩に、人とマシンがどうやりとりするのか、いわゆる「ヒューマン・コンピューター・インターフェース」の進化があります。
この分野では「人間とコンピューターの共生」という独創的な論文が1960年に書かれています。それほど遠くない将来、人の脳とコンピュータを緊密に結べるようになると期待されています。また、生成AIの登場により、これまで進めてきたDXの取り組みを加速させられると期待が高まっています。
一方で、足元の社内システムはレガシーのまま、外部に委託した状態であることが少なくないはずです。新しい技術が次々に生まれる現代において、柔軟にシステムを変化させ、事業価値の創出につなげていくことが重要です。そこで今回は、「内製組織」を立ち上げ一気に“DX先進企業”へと変貌する成功要因について考察します。

2024年1月7日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)
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<目次>

1.内製の選択肢をユーザーに提供

2.PDCAではなく、DCAPでまずは動かす

3.CXとEXは必ずセットで考える

4.物流の2つのニーズを適切にフェーズ分けする

5.アジャイルでもウォーターフォールでもない!?

 


1.内製の選択肢をユーザーに提供

 

私たちはデジタル技術で物流を変革、転換する「ユーザーが主役のデータドリブン物流」をビジョンに掲げ、デジタル時代を先導する企業を一社でも多く増やすことを目指しています。私たちの取り組みは、国内のトップ企業やプライム上場企業などにも高く評価を頂き、物流DX戦略の実践においてユーザー企業自ら開発、改善、運用しています。
システムデザインやデータ分析などを行える能力をユーザーが持ち、ビジネスおよびテックサイドが協調し、スピーディーかつ柔軟に事業を創出、改善ができるOneTeam体制を構築しています。
本稿では、内製の選択肢をユーザーに提供しつつ、開発パートナーとの協業による“セミスクラッチ型開発”について、以下の6つの基本戦略を中心に詳しく解説します。

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2.PDCAではなく、DCAPでまずは動かす

 

社内で物流DXを進める際には通常、最初の四半期程度をかけて、グランドデザインを練り上げ、その後、それを着実に実践していくアプローチが一般的です。ただし、物流メンバーのデジタルリテラシーや取引先とのデジタルなコミュニケーションの状況を予め正確に把握することは容易ではありません。単なる机上の議論で「物流DXはこれが最適解」といったグランドデザインを描き進めるだけでは、現実的な課題に即した計画とはなりにくく、実効性に欠けることがあります。

そのため、私たちが開発した“セミスクラッチ型”で選択したアプローチは、まず実際に動いてみることでした。
計画の前に軽く「Do」をし、「Check」して「Action」します。そのサイクルをどんどん回し、もし駄目ならやり方をちょっと変えて、それで行けそうだとなれば、最後に“Plan”するのです。“PDCA”ならぬ、“DCAP”です。
このアプローチにより、物流部門内でのコミュニケーションや、取引先との業務プロセスにおいて、さまざまなアイデアや手法を試し、実際の効果を観察できるようになりました。
また、物流に求められる「品質重視」と、「スピードと柔軟性」というトレードオフの関係にあるニーズをフェーズ分けしてデザインする戦略を基礎としています。そのために先端技術
を最大限に活かしつつ、既存技術の良さも認め両者を上手く融合させていきます。開発チームの構成もこの戦略に基づき、エンタープライズ系の人材とWebやAI系のエンジニアや企業を組織して、チーム編成しています。

 


3.CXとEXは必ずセットで考える

 

今話題のChatGPTなんかも、あっという間に社内の色々な部署で様々な用途で活用されています。しかし、DXを進める上で、デジタル技術が前面に出過ぎてしまうのは危険です。

いくらデジタル技術を活用しても、カスタマーエクスペリエンス(CX)とエンプロイーエクスペリエンス(EX)に寄与できないDXの取り組みは、デジタル技術の乱用に過ぎません。

DXの目的としてCXの向上を掲げる企業は多いですが、EXが犠牲になれば、最終的にはCXの向上は難しくなります。CXとEXは必ずセットで考える必要があるので、EXの向上も
視野にいれた取り組みでなければなりません。


4.物流の2つのニーズを適切にフェーズ分けする

 

私たちの“セミスクラッチ型”のやり方の特長として、まずは内製があります。とはいえ、内製がすべての最適解だとは考えていません。バックグランド系ツールやクラウド基盤などコモディティ化している部分は内製化しても意味はありません。一方でコアコンピタンスに近いところ、顧客体験に直結するところは内製にこだわりたいところです。だからと言って何でもかんでも内製するのが正しいとは思っておらず、内製という選択肢を持つことが大事だと考えています。そうした選択肢がなく、すべてをITベンダーに頼むしかない企業も少なくありません。私たちが掲げる「ユーザーが主役」というのは、ユーザーに内製化を押し付けるのではなく、選択肢を与えるところに重きを置いています。ユーザー企業が自らの意思で、内製と外製のハイブリッドで取り組むことができるようになることが理想です。

もう一つの特長が、前述のフェーズ分けしてデザインする点です。物流システムは、社会インフラに近い部分もあり、安全、安心、確実でしっかり動く堅牢生、確実さ、計画性とスピードが極めて大事です。一方でフロントエンド領域のUX(ユーザーエクスペリエンス)のところは、スタートアップと競争できるスピードと柔軟性が必要です。顧客体験の改善は妥協なき高い水準でやらなければなりません。物流はバックエンドと、フロントエンドの両方を要素として持つ実にエンジニア泣かせな領域なのです。

物流システムにおいて求められる「品質重視」と、「スピードと柔軟性」の2つのニーズは、前述した通りトレードオフの関係にあります。ここが物流システムをデザインする上で難しいところです。この課題に対処するには、それぞれのニーズを適切にフェーズ分けし、エンタープライズ系の人材とWebやAI系の人材を融合させてチームを構築する必要があります。
このアプローチを取らない場合、確実に動きはするけれども、カチコチに固まった硬直型システムになったり、逆にスピードと柔軟性はあるけれども、頻繁に不具合を引き起こすシステムになる可能性があります。


5.アジャイルでもウォーターフォールでもない!?

 

システムの要件定義はITのプロの仕事という考え方が一般的です。しかし、私たちは、むしろ要件定義をできるだけしないようにしています。これは要件を決めなくて良いという意味ではなく、要件定義はユーザーが主体となって進めましょうということです。私たちITのプロは、そのお手伝いをさせて頂きます。一緒に考えることで、本来何が必要か見えてきます。

私たちは、ベンダーサイドで厳密に要件を定義してその通りに開発するスタイルではなく、使ってみて要望が出てくれば柔軟に仕様変更してしまいます。開発手法的にはアジャイルに近い形になりますが、アジャイル専門チームを作るわけではありません。アジャイルと言うと、すぐに「スクラムで」とか、「XPで」といった手法的な話になりますが、私たちのアプローチはフリースタイルに近いものです。セミスクラッチ型は、アジャイルでもウォーターフォールでもなく、ユーザーが主役のフリースタイルです。ただ、ウォーターフォールよりもアジャイルに近いやり方が好みです。

型にはまった教科書通りのやり方にこだわることなく、事業の本質を深く理解したユーザーと、ITに深い理解を有するエンジニアがOneTeamで連携し、開発を進めます。このアプローチにより、かけ算の効果が生まれ、DXが進みます。それこそがセミスクラッチ型の価値だと自負しています。

 

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