アパレル業界のWMS入門!現場主導で改善できるシステムの選び方|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

倉庫

アパレル業界のWMS入門!現場主導で改善できるシステムの選び方

アパレル業界のWMS

アパレル業界の物流現場では、色・サイズ展開による膨大なSKU管理、季節やトレンドによる急激な需要変動、頻繁な返品処理など、他業界にはない複雑な課題に日々直面しています。

これらの課題を解決するために注目されているのが、WMS(倉庫管理システム)の導入です。しかし、「導入したものの現場に合わず結局使いこなせない」という失敗例も少なくありません。特にECでアパレルを販売している企業はスモールスタートして売上が急激に拡大し、導入したWMSが物量に対応できないといったケースも散見されます。

アパレル業界の物流現場は、他業種とは比べものにならないほど複雑です。色・サイズ展開が多く、トレンドや季節によって需要が急変します。実店舗とECの両立や返品対応といった課題にも追われます。

本記事では、アパレル業界特有の物流課題を整理したうえで、

  • なぜWMSがアパレル企業にとって必要不可欠なのか
  • どんな機能を持つWMSが向いているのか
  • 導入時の選び方や、実際に成功している事例
  • アパレル業界におすすめのWMS製品

を、現場目線と経営目線の両方から、WMS開発会社の代表を務める私が詳しく解説します。

2025年6月14日  執筆:東 聖也(ひがし まさや)

LFA輸快通快

 

アパレル物流の主な特徴

アパレル業界の物流には、他業界と異なる独特の特徴があります。1つずつ見ていきましょう。

SKU(最小管理単位)の数が膨大

まず商品のカラーやサイズ展開が非常に多様で、SKU(最小管理単位)の数が膨大になる点が挙げられます。同じデザインのTシャツでも、色違い・サイズ違いで在庫管理上は別の商品として扱う必要があり、例えば3色×3サイズなら「9つのSKU」を管理しなくてはなりません

SKU単位で売れ筋や在庫状況を正確に把握することで、どの色・サイズがよく売れているか分析でき、過剰在庫や欠品による販売機会ロスを防げます

しかし、これだけアイテム構成が細分化されると、手作業で正確に管理するのは容易ではありません。

季節やトレンドによる変動

次に季節やトレンドによる変動も大きいです。アパレル商品はシーズンごとに入れ替わりが激しく、流行や天候によって需要が急増・急減します冬物と夏物で商品サイズ(容積)が大きく異なるうえ、SNSやメディアで話題になると一気に注文が増えることもあります。その結果、短期間に大量の商品を捌かなければならない波動性が生じ、物流現場には柔軟な対応力が求められます。

保管・梱包上の配慮

また、衣類やファッション雑貨ならではの保管・梱包上の配慮も必要です。衣類は湿気やカビに弱く、生地によって適切な温度・湿度管理が求められます。天然素材から化学繊維、レザー製品まで素材は様々で、それぞれに合った環境で保管しなければ品質劣化につながります。

梱包も家電や家具のようにパレット積みとはいかず、シワにならないようハンガー掛けや丁寧なたたみが必要です。小物類は仕切り箱で小分けするなど、商品に応じた梱包工夫が求められます。

アパレル物流の主な特徴

【2025年】アパレル物流が直面している課題は?

前章の特徴に起因して、アパレル物流にはいくつかの慢性的な課題があります。

出荷リードタイムの長さ

色・サイズ確認や汚れ・破損チェックなど検品項目が多く、出荷まで時間がかかりがちです。しかしEC化の進展で翌日配送・日時指定が当たり前になりつつある中、リードタイム短縮は大きな課題です

煩雑な返品処理

通販では「サイズが合わない」「イメージと違う」等の理由で返品が頻繁に発生します。返品時には再販可否の判断や検品・タグ付け直しなど多岐にわたる作業が生じますが、この返品業務は物流現場に大きな負担となっています。

実店舗とECの在庫管理の分断

店舗ごと・ECサイトごとに在庫を管理し、自動連携していないと在庫情報が不透明になりがちです。その結果、店舗間で過剰在庫と欠品が同時発生し、販売機会を逃す一方で不良在庫が増えるといった非効率が生じます。在庫を一元化し適正在庫を保つには、倉庫をハブに各店舗の在庫を融通するなど工夫が必要ですが、手作業では限界があります。

シーズン終盤の在庫処分

シーズン終盤の在庫処分も頭痛の種です。アパレル商品は基本的に「1シーズンで売り切る」前提のため、流行が過ぎた在庫は一気に価値が下がり、倉庫に滞留しがちです売れ残り品をどこまで保管するか判断が難しく、廃棄ロスや保管コスト増大のリスクがあります。近年はこのような在庫ロス削減に注目が集まっており、いかに需要予測を当てて適正在庫を維持するかが経営課題となっています

人手不足と労働環境の変化

物流業界全体では2024年の働き方改革関連法(いわゆる「物流2024年問題」)によりトラックドライバーの残業規制が強化され、輸送力不足やコスト増が懸念されています。この流れで倉庫内作業も効率化・省人化が求められており、ロボット導入やデジタル化が加速しています。アパレル物流も例外ではなく、慢性的な人手不足や長時間労働の是正のために DX(デジタルトランスフォーメーション)が避けられない状況です。

以上のように、アパレル物流は多品種変動型の在庫管理と迅速な出荷対応が求められる一方で、従来型の人海戦術では返品や在庫過多に対応しきれない課題に直面しています。こうした課題を解決する手段の一つとして注目されているのが、倉庫管理システム(WMS)の導入です。

IT導入補助金2025

アパレル業界がWMSを導入すべき理由

アパレル物流の複雑な課題に対し、WMS導入が有効とされるのはなぜでしょうか。アパレル物流にはびこる多くの課題をWMSはどのように解決するのでしょうか?

在庫の「見える化」で売れ筋と死に筋を瞬時に把握

コンビニ業界では、おにぎり一個レベルまで売上データを追跡して商品戦略を立てていますが、アパレル業界でも同様の精度が求められる時代になりました。

導入前の状況:手作業での在庫管理では、「赤のSサイズは品切れなのに、同じ商品の青のLサイズは倉庫で眠っている」といった在庫のアンバランスが慢性化していました。

WMS導入後の変化:バーコードやRFIDによる即時在庫更新により、SKU単位でリアルタイムな在庫状況を把握できるようになります。

得られるメリット:欠品による機会損失と過剰在庫による廃棄ロスを同時に防げるため、適正在庫の維持によりキャッシュフローが大幅に改善されます。実際に、某アパレル企業では廃棄率を30%削減し、同時に欠品率も半減させた事例があります。

作業動線「見える化」で新人もベテラン並みの生産性を実現

自動車のカーナビが普及する前は、土地勘のない場所での運転は大変でしたが、今では誰でも最短ルートで目的地に到着できます。WMS導入は、まさに倉庫内での「カーナビ」の役割を果たします。

導入前の状況:商品を探すための無駄歩行と紙帳票への転記作業で生産性が低下し、繁忙期には残業が常態化していました。

WMS導入後の変化:ハンディ端末が最短ルートをナビゲートし、自動梱包機や搬送ロボットとも連携して作業を効率化します。

得られるメリット:同じ人員で処理能力が1.5〜3倍に向上し、新人でも短期間で即戦力として活躍できるようになります。これにより残業時間と人件費を抑えながら、処理能力を大幅にアップできます。

出荷精度の「品質保証」で顧客満足度とブランド価値を向上

製造業では「ポカヨケ」という考え方で、人的ミスを防ぐ仕組みを作り込んでいます。WMSも同様に、アパレル特有の色違い・サイズ違いといったミスを防ぐ「デジタルなポカヨケ」として機能します。

導入前の状況:色違い・サイズ違いの誤出荷が月次で発生し、返品コストと顧客不信の拡大に悩まされていました。

WMS導入後の変化:バーコード照合により「正しい商品・正しい数量」をシステムが自動チェックし、誤出荷をほぼゼロまで削減します。

得られるメリット:顧客からのクレーム対応コストを大幅に削減でき、ブランドイメージの向上に直結します。実際に誤出荷率99%削減を実現した企業では、顧客満足度調査でも大幅な改善が見られました。

業務の「レシピ化」で属人的なノウハウを組織の財産に

料理の世界では、熟練シェフの技術をレシピとして標準化することが当たり前となっています。レシピがあることで、誰でも一定品質の料理を作れるようになります。しかし、物流の世界では、この標準化がまだまだ進んでいません。WMSは倉庫業務の「レシピ化」を実現し、業務を標準化することが可能になります。

導入前の状況:ベテランの勘と経験に頼った業務で、「その人が辞めると倉庫が回らない」という属人化が深刻でした。

WMS導入後の変化:操作ガイド付きのハンディ端末により、業務手順が標準化され、誰でも同じ品質で作業できるようになります。

得られるメリット:人材の入れ替えや多拠点展開にも強い体制を構築でき、新人教育にかかる時間とコストを大幅に削減できます。ノウハウがシステムに蓄積されることで、組織全体のレベルアップが可能になります。

ローコードWMS

チャネルの「統合指揮」でオムニチャネル戦略を実現

軍事作戦では、陸海空の各部隊が連携して戦略目標を達成します。アパレルビジネスでもこれと同様に店舗・EC・卸売という「三軍」の連携がとても重要になってきます。

導入前の状況:店舗とECで在庫が分断され、「在庫あり表示なのに実際は欠品」という機会損失が頻発していました。

WMS導入後の変化:全チャネルの在庫を統合管理し、リアルタイム同期と自動振替により、最適な在庫配分を実現します。

得られるメリット:店舗受取や店舗間取り寄せなどのオムニチャネル施策を展開でき、顧客体験の向上と売上機会の最大化を同時に実現できます。

経営の「コックピット」でリアルタイムな意思決定を実現

かつて、ピーター・ドラッガーはこういいました。「測れないものは改善できない」と。コックピット経営とは、人や物、お金を可視化し、経営戦略や戦術と、人の動きを紐づけする方法です。WMSのダッシュボードは、経営陣にとっての「経営コックピット」の役割を果たします。

導入前の状況:売れ筋・死に筋の把握が遅れ、在庫ロスやチャンスロスが発生してから問題に気づく後手後手の対応でした。

WMS導入後の変化:売れ筋・死に筋を自動分析し、回転率・欠品率・作業生産性などのKPIをリアルタイムで可視化します。

得られるメリット:追加生産・値下げ・廃棄判断を即座に下せるため、粗利改善とキャッシュフロー健全化を同時に実現できます。データに基づいた意思決定により、勘に頼らない経営が可能になります。

在庫最適化完全ガイド

アパレル業界特有のWMSに求められる機能とは?

では、アパレル業界でWMSを導入する際には、どのような機能に注目すべきでしょうか。他業界向けの汎用WMSではなく、アパレル業界特有のニーズに対応できる機能を備えているかが重要です。主なポイントを挙げます。

色・サイズ別の詳細なSKU管理機能:「商品の遺伝子」を正確に管理

まるで人間のDNAのように、アパレル商品には「品番(デザイン)」「色」「サイズ」という3つの遺伝子があります。これらの組み合わせで爆発的に増えるSKU数を、WMSが正確に管理できるかが成功の鍵となります。

推奨する管理手法

優秀なアパレル向けWMSでは、「商品コード-色コード-サイズコード」を組み合わせた識別システムを採用しています。例えば、「ABC123-RED-M」といった体系的なコード管理により、以下のメリットが生まれます。

  • ピッキング精度の向上:類似商品の取り違えを大幅に削減
  • 在庫検索の高速化:属性別の絞り込み検索が瞬時に可能
  • 売れ筋分析の精密化:色・サイズ別の詳細な販売データ蓄積

実務での活用効果

このシステムにより、「このデザインは赤のMサイズだけ異常に売れている」「ブルー系の大きいサイズが慢性的に余る」といった傾向を数値で把握できるため、次シーズンの生産計画や仕入れ戦略に直結する貴重なデータを得られます。

シーズン切替・短サイクル販売への対応:「衣替え」の嵐を乗り切る

アパレル業界のシーズン切替は、まさに「嵐のような忙しさ」です。春夏・秋冬の大型切替に加え、近年は月単位での商品入れ替えも珍しくありません。

繁忙期対応に必要な機能

新商品導入の効率化

  • 商品マスタの一括登録・更新機能
  • バーコードラベルの自動生成・発行
  • 商品画像やサイズスペックの一元管理

在庫処分セールへの柔軟対応

  • 値下げ価格の一括反映システム
  • セール対象商品の自動抽出機能
  • 処分率に応じたアラート機能

専門家の視点:リアルタイム可視化の重要性

特に重視するのは、「在庫消化率のリアルタイム可視化」です。トレンド商品の需要予測は神様でも難しいもの。だからこそ、WMS上で在庫回転率を常時監視し、「このペースだと3週間後に売り切れる」「あと1ヶ月で大量在庫になりそう」といった予測アラートが出せるシステムが理想的です。

※参考記事「解決!『アパレル流通小売業』が倉庫管理システム(WMS)導入を成功させるポイント

返品処理・在庫修正機能:「戻ってきた服」を資産に変える技術

EC市場拡大に伴い、アパレルの返品率は業界平均で20-30%に達しています。この「戻ってきた服」を効率的に処理し、再び販売可能な状態に戻すことが、収益性を大きく左右します。

返品処理の自動化・標準化

検品フローのガイダンス機能

  • 汚損・破損チェックの標準化
  • タグ付け直しの作業指示
  • 商品コンディションの段階的評価

返品データの活用術

返品理由を詳細に記録することで、品質改善のヒントが見えてきます。「このブランドのSサイズは小さすぎる」「この素材は洗濯で縮みやすい」といった情報を蓄積し、商品開発部門にフィードバックすることで、根本的な返品削減につながります。

作業効率の最適化

WMSの優秀な機能として、返品処理と通常出荷のスケジュール連携があります。まるでオーケストラの指揮者のように、各作業の優先順位を自動調整し、返品処理に追われて出荷が遅れる事態を防ぎます。

多店舗・多チャネルの在庫一元管理機能:「在庫のサイロ化」を解消

現代のアパレル企業は、実店舗・EC・卸売・アウトレットなど、複数のチャネルを同時運営するのが当たり前。各チャネルがバラバラに在庫を持つ「サイロ化」状態では、機会損失が避けられません。

オムニチャネル対応のコア機能

在庫の統合管理

  • チャネル別在庫の見える化
  • 在庫移動・振替指示の自動化
  • リアルタイム在庫同期システム

実践的な活用例

例えば、渋谷店で売れ残ったコートが新宿店で品切れ状態の場合、WMSが自動的に在庫移動を提案。さらに、ECサイトでの注文に対して最寄りの店舗から直送する「店舗発送」も、システム上でシームレスに実現できます。

専門家が見る成功要因

多チャネル展開で成功している企業の共通点は、「在庫を全社の共有資産として捉えている」ことです。各チャネルが縄張り意識を持つのではなく、WMSを通じて全体最適を図る文化作りが重要になります。

アパレルWMS導入効果

アパレル業界に合ったWMSの選び方

アパレル業界特有の複雑な在庫管理要件に対応できるWMS(倉庫管理システム)を選ぶことは、アパレル企業の競争力を左右する重要な戦略判断です。色・サイズ展開による膨大なSKU数、頻繁なシーズン切替、高い返品率など、一般的な物流とは異なる課題を抱えるアパレル業界だからこそ、慎重な選定が求められます。

現在市場には数多くのWMS製品がありますが、真にアパレル業界に最適なシステムを見極めるための6つの核心ポイントを、業界専門家の視点から詳しく解説します。

アパレル業界特有のニーズにマッチした専門機能があるか

まるで洋服を体型に合わせて仕立てるように、WMSもアパレル業界の「業界体型」にフィットしたものを選ぶ必要があります。一般的な製造業や食品業界向けの汎用WMSでは、ファッション特有の細かな要件に対応しきれません。

アパレル必須機能のチェックポイント

色・サイズ・柄の多次元SKU管理では、単品レベルでの在庫追跡機能、色・サイズマトリクス表示による視覚的な在庫確認、類似商品の誤出荷防止機能が不可欠です。特に、同じデザインでも色違い・サイズ違いで数十通りのバリエーションを持つアパレル商品において、正確な識別管理ができるかどうかが成否を分けます。

シーズン商品の効率的な管理においては、商品マスタの一括登録・更新機能、シーズン切替時の在庫処分セール対応、トレンド商品の消化率リアルタイム監視が重要になります。春夏から秋冬への大規模な商品入れ替えや、月単位での新商品投入に対応できる柔軟性が求められます。

返品・交換処理の専門機能として、返品商品の検品フローガイダンス、再販可否判定とコンディション管理、返品理由分析による品質改善データ蓄積機能が必須です。EC拡大により返品率が20-30%に達するアパレル業界では、この機能の充実度が収益性に直結します。

専門家の視点:実績重視の選び方

「アパレル業界での導入実績が豊富なWMS」を選びましょう。アパレル企業特有の繁忙期パターンや作業フローを理解しているベンダーの方が、導入後の細かな調整や改善提案も的確に行ってくれます。

既存アパレル系システムとの連携力

アパレル企業のシステム環境は、まるでファッションコーディネートのように多様なシステムが組み合わさっています。これらが美しく連携できるWMSを選ぶことが成功の鍵です。

アパレル特有の連携要件

ECプラットフォームとの深い連携では、Shopify、楽天、Amazon等のモール連携、リアルタイム在庫同期による売り越し防止、各チャネル別の在庫引当ルール設定が重要です。現代のアパレル企業では複数のECチャネルを同時運営するのが当たり前となっており、各プラットフォームの特性に応じた細かな設定ができることが求められます。

POSシステムとの店舗連携については、店舗間在庫移動の自動化、オムニチャネル対応(店舗受取、店舗発送等)、店舗スタッフ向けの在庫照会機能が不可欠です。顧客が「店舗で見て、ネットで買う」「ネットで注文して、店舗で受取る」といった購買行動に対応するためには、リアルタイムでの在庫連携が必須となります。

ファッション業界特化ERPとの統合においては、生産管理システムとの納期連携、原価管理システムとのコスト情報同期、販売分析システムとの売上データ連携が求められます。特にアパレル業界では、生産リードタイムと販売タイミングの調整が収益性を大きく左右するため、これらのシステム間での情報共有が重要になります。

実務での成功事例

ある中堅アパレル企業では、WMSとECサイト、店舗POSを完全連携させることで、「ECで注文された商品を最寄り店舗から直送」するサービスを実現。配送コスト30%削減と顧客満足度向上を同時に達成しました。

アパレルビジネスの変化に対応できる拡張性

アパレル業界はです。新ブランド立ち上げ、海外展開、D2C参入、サステナビリティ対応など、事業展開のスピードが速いアパレル企業には、柔軟な拡張性を持つWMSが不可欠です。

アパレル企業が求める柔軟性

ブランド・事業部展開への対応では、複数ブランドの独立管理機能、ブランド別の在庫ルール・価格設定、新ブランド追加時の簡単セットアップが重要です。多くのアパレル企業が複数ブランドを展開する中、各ブランドの特性に応じた細かな管理ができることが競争力につながります。

商品カテゴリー拡張への対応については、アパレルからライフスタイル商品への展開、食品・コスメなど異業種商品の混在管理、カテゴリー別の管理ルール設定が求められます。近年、ファッションブランドがライフスタイル全般に事業を拡大するトレンドが強まっており、多様な商品特性に対応できるシステムが必要です。

海外展開・越境ECへの対応では、多通貨・多言語機能、国際配送ルールの設定、現地倉庫との連携機能が不可欠です。アパレル業界では海外進出のスピードが速く、グローバル対応機能の有無が事業拡大のボトルネックになりかねません。

専門家推奨:スケーラビリティの見極め方

システム選定時には、「現在の2倍の規模になった時も安定稼働するか」を必ず確認しましょう。特にアパレル業界では、ヒット商品が生まれた際の急激な取引量増加や、セール時の集中アクセスに耐えうる性能が重要です。

アパレル企業の予算特性に合った適正コスト

アパレル業界は利益率の変動が大きく、投資判断も慎重になりがちです。WMS導入においても、「攻めの投資」と「守りのコスト管理」のバランスが重要になります。

アパレル特有のコスト考慮点

シーズン売上変動への対応では、繁忙期の従量課金制への対応、閑散期のコスト削減機能、予算の季節変動に合わせた支払プランが重要です。アパレル業界は年間を通じて売上の波が大きく、システムコストも売上に連動して調整できることが理想的です。

ROI(投資対効果)の明確化については、在庫回転率改善による資金効率化、人件費削減効果の定量化、機会損失防止による売上向上効果を数値化することが重要です。特にアパレル業界では在庫が企業の資金繰りに大きく影響するため、在庫効率改善による資金効果を正確に算出する必要があります。

隠れコストの事前把握として、カスタマイズ費用の上限設定、データ移行費用の明確化、追加ライセンス費用の将来予測が求められます。導入後に予想外の費用が発生すると、特に中小アパレル企業では経営に大きな影響を与えかねません。

実践的な予算設定アドバイス

中小アパレル企業では、「月商の2-3%をWMS関連費用の上限」として設定するケースが多く見られます。ただし、導入効果による売上向上や コスト削減を考慮すると、初年度は若干の投資超過も許容範囲と考える企業が成功しています。

ファッション業界に精通したサポート体制

アパレル業界の繁忙期は、まるで台風のように突然やってきます。そんな時に頼りになるのが、業界特性を理解したサポート体制です。

アパレル企業が求めるサポート要件

業界特有の繁忙期対応では、セール開始前の事前システムチェック、年末年始・GWなどの長期休暇対応、新商品入荷時の緊急サポートが重要です。アパレル業界の繁忙期は他業界とは時期やパターンが異なるため、業界特性を理解したサポート体制が不可欠です。

現場スタッフへの実践的な教育については、ファッション用語を理解したトレーニング、色・サイズ識別のコツ指導、返品処理の効率化レクチャーが求められます。アパレル倉庫で働くスタッフの多くはファッションに興味があり、専門用語を使った分かりやすい説明が効果的です。

業界トレンドに応じた改善提案として、他社成功事例の共有、新機能リリース時の活用コンサルティング、業界特化カスタマイズの提案が重要になります。ファッション業界は変化が激しいため、常に最新のトレンドに対応したシステム改善提案が求められます。

専門家が重視するサポート品質

優秀なWMSベンダーは、単なる技術サポートではなく「アパレル業界のビジネスパートナー」として機能します。例えば、「今年の春物の売れ行きが好調なので、早めに夏物の入荷準備をしませんか?」といった、業界知識に基づく提案ができるサポート体制が理想的です。

アパレル現場スタッフが直感的に使える操作性

倉庫で実際にWMSを使うのは、ITの専門家ではなく、ファッションに興味を持つ現場スタッフです。彼らが「使いたくなる」「間違えにくい」システムかどうかが、導入成功の分かれ目になります。

アパレル現場に最適化されたUI/UX

視覚的な商品識別機能では、商品画像付きのピッキングリスト、色・サイズの視認性向上デザイン、類似商品の区別がしやすい画面構成が重要です。アパレル商品は見た目が似ているものが多いため、画像と色分けによる視覚的な識別機能が作業精度向上の鍵となります。

アパレル業界用語への対応については、業界慣用語を使った画面表示、サイズ表記の多様性対応(S/M/L、号数、海外サイズ等)、ブランド別の管理画面カスタマイズが求められます。現場スタッフが普段使っている用語でシステムが表示されることで、習得時間の短縮と操作ミスの削減が期待できます。

モバイル・タブレット最適化では、片手操作しやすいボタン配置、屋外・倉庫内でも見やすい画面輝度、音声入力・バーコード読取の高速化が不可欠です。アパレル倉庫では商品を片手に持ちながらの作業が多く、直感的な操作性が作業効率に直結します。

現場導入成功の秘訣

実際の導入現場では、「最初の1週間でスタッフが慣れるかどうか」で成否が決まります。優秀なWMSは、ファッション業界で働く人々の感性に訴える、直感的で美しいインターフェースを提供しています。

選定成功のための行動指針

業界特化機能を最重要視し、汎用性より専門性を優先することが重要です。アパレル業界の複雑な要件に対応できない汎用WMSでは、後々のカスタマイズコストが膨大になりがちです。既存システムとの親和性を徹底検証し、導入後の連携トラブルを防ぐとともに、3年後の事業規模を想定した拡張性を確保することで、将来への投資として価値のあるシステム選択ができます。

TCO(総所有コスト)を正確に算出する際は、隠れコストも含めた予算設定を行い、業界精通サポートの質を重視して、技術力だけでなく業界理解度も評価対象に含めましょう。最終的には、現場スタッフの使いやすさを判断基準として、実際の運用者の声を重視することが成功への近道となります。

最終的な判断ポイント

複数のWMSを比較検討する際は、「自社のファッションビジネスモデルに最もフィットするか」を軸に判断しましょう。機能の豊富さよりも、アパレル業界特有の課題解決力を重視することが、導入成功への近道です。

WMS選定は、アパレル企業の競争力を決定づける重要な経営判断です。時間をかけて慎重に検討し、真にビジネス成長を支えるパートナーとなるシステムを選択してください。

ローコード対応WMS

アパレル業界におすすめのWMS3選

最後に、上記ポイントも踏まえてアパレル業界におすすめのWMSを3つ紹介します。自社に合ったWMS選びの参考として、それぞれの特徴を概説します(※うち1つは当社提供の「インターストック」を含みます)。

1. インターストック(INTER-STOCK) – オープンソースで柔軟カスタマイズ可能なWMS

インターストックは株式会社オンザリンクスが提供するWMSで、ソースコードを完全公開している点が最大の特徴です。ユーザー企業が自社でカスタマイズ開発できるよう支援するというユニークなコンセプトで、中堅~大手企業を中心に導入が進んでいます。実際、製造業や流通業など700社以上の導入実績があり、TOTOやYKKといった大手企業でも採用されています。堅牢なシステム構築により**稼働率99.8%**という高い安定稼働を実現しており、大量データ処理にも耐える業界トップクラスの動作速度を誇ります

インターストックはセミスクラッチ開発型とも称され、基本機能が充実しつつユーザー固有の業務にも合わせ込める柔軟性があります。アパレル業界に必要なSKU管理や在庫分析機能、ハンディターミナル連携など専門的な機能も搭載済みで、必要に応じて追加開発も可能です。オンプレミス型(自社サーバー設置型)なので他社の影響を受けずセキュリティ面も安心。自社にシステム担当者がいて自分たちでシステムを作り込みたいという企業にはピッタリのWMSです。実際、「ユーザー自身が主役となって物流現場を改革できるWMS」として高い顧客満足度評価も得ています。アパレル業界でも、独自性の高い業務フローを持つ企業や、将来の事業拡大に合わせて内製で成長させていきたい企業におすすめです。

※参考記事「インターストック 専用システムならではの機能

2. ロジザードZERO – 国内トップシェア、実績豊富なクラウドWMS

ロジザードZEROはロジザード株式会社が提供するクラウド型WMSで、稼働数No.1の国内トップシェアを誇る定番製品です。21年以上にわたりサービス提供されており、その間に蓄積したノウハウと365日対応の電話サポート体制で、初めてWMSを導入する企業でも安心して使えます

ロジザードZEROの強みは高い汎用性・拡張性です。クラウドサービスなので利用開始も比較的容易で、中小規模のEC事業者から大手物流センターまで幅広い業種・規模で利用されています。アパレル業界の導入事例も多く、公式サイトではアパレルEC企業の在庫一元管理や出荷効率化の成功事例が公開されています。先述の事例にもあったように、ロジザードZERO導入により出荷処理能力が従来比3倍に向上したケースもあるほどで、現場の生産性アップに寄与します。

また、基幹システムとの柔軟な連携やハンディ・検品システムとの統合も可能で、物流現場のニーズにきめ細かく応える安定感のあるWMSと言えるでしょう。クラウドサービスなのでシステム保守の手間がかからず、拠点が増えてもスケーラブルに対応できる点も魅力です。「まずは実績豊富な安心できるWMSを選びたい」というアパレル企業には有力な選択肢です。

3. クラウドトーマス(Pro for アパレル) – 物流会社発の先進機能を備えたWMS

クラウドトーマスは物流会社である株式会社関通が開発したクラウド型WMSです。現場発の視点で作られており、ハンズフリー機器や物流ロボット連携など最新テクノロジーを積極的に取り入れているのが特徴です。例えば、スマホ連動のリングスキャナーを使ったハンズフリー検品に対応しており、作業効率を落とさず両手で商品を扱えます。また、自動倉庫や梱包機とのシステム連携実績もあり、倉庫内の自動化ニーズに応えられるWMSとなっています

クラウドトーマスは標準機能も充実していますが、アパレル業界向けに特化したパッケージ「Pro for アパレル」も提供されています。こちらでは色サイズ管理やシーズン品番管理、返品ワークフローなどファッション業界に必要な機能を強化しています。実際にアパレルEC企業での導入事例では、WMS導入によりピッキング効率が飛躍的に上がり誤出荷が激減する成果が出ています。新人でも数日で現場投入できるようになり、月10件あった出荷ミスがほぼ0件に減少したとの報告もあります。これはクラウドトーマスの導入企業の一例ですが、現場ニーズを的確に捉えたシステムであることを示しています。

また、クラウドトーマスはShopifyなどECカートとの連携にも強みがあります。ベンダー側でECとWMSの接続設定やテスト運用をサポートしてくれるため、システムに不慣れな企業でも安心です。あるフィットネスアパレルD2C企業では、この支援のおかげでスムーズにWMSを立ち上げられ、導入後は誤出荷や在庫差異、未出荷がゼロになったといいます。クラウドトーマスはこのように現場密着型の使いやすさ最新技術対応を両立したWMSで、アパレル企業のDX推進に力強いパートナーとなるでしょう。

アパレル業界でのWMS導入成功事例3選

WMS導入が具体的にどんな効果を生むのか、アパレル業界の事例を3つ紹介します。それぞれ異なるタイプの企業ですが、共通してWMS導入により業務改善と成果創出に成功しています。

事例1:ピッキング生産性が2倍に向上、誤出荷は月10件からゼロへ

あるシューズ・バッグ通販企業では、広い倉庫内でベテラン社員だけが商品所在地を把握している状況でした。WMS導入前は新人は商品を探すのに時間がかかり、ピッキングミスも頻発していたそうです。そこでクラウド型WMSを導入したところ、ロケーション管理が整備され「どの商品がどこにあるか」即座に分かるようになりました。その結果、商品を探し回るムダ時間が大幅減少し、新人でも数日教育すればピッキングを任せられるまでに成長1時間あたり20件程度だった出荷件数が40件ほどに倍増し、生産性が飛躍的にアップしました。さらに、バーコードスキャンでピッキング照合を行うことで精度が向上し、誤出荷は月10件程度から0~1件にまで削減されたのです。作業効率と品質の両面で劇的な改善を果たした好例と言えるでしょう。

事例2:EC新規参入企業で在庫差異・誤出荷がゼロに、品質トラブルも激減

あるフィットネスアパレルブランド(ECスタートアップ)の事例です。同社はECサイト開設当初、自社にECや在庫管理の知見がなく手探りでした。そこでWMS導入を決め、ShopifyとWMSの連携設定からテスト運用までベンダーの支援を受けてスムーズにローンチ。導入前は商品タグ付け間違いや梱包不良による返品・クレームが発生していましたが、その割合も5%→3%程度に減少しました。極め付けはWMS導入後、誤出荷・在庫差異・未出荷が一件も発生しなくなったことです。在庫のリアルタイム同期で二重売りや出荷漏れが解消し、注文から発送まで滞りなく処理できるようになりました。創業間もない企業にとって、WMS導入が品質管理と顧客信用の確保に大きく寄与した成功例です。

事例3:自社開発システムの課題をWMSで解決、出荷処理能力が3倍にアップ

最後はアパレル関連サービス企業の事例です。同社は自社基幹システムで在庫管理を試みましたが在庫機能がなく、顧客から預かった商品の所在やステータスを全く把握できていませんでした。さらに、倉庫では出荷待ち商品の梱包作業がボトルネックになり納期遅延の懸念もありました。そこでWMS導入に踏み切り、自動梱包機とも連携させたところ、入荷~検品~出荷まで中2日かかっていた工程が中1日に短縮されました。WMSが顧客と商品をひも付けて管理するため照合作業がほぼ不要となり、さらに梱包も自動化されたことで劇的な効率化が実現したのです。その結果、出荷処理件数は従来の3倍まで増加し、急成長する受注量にも余裕で対応できるようになりました。この事例は、自前システムでは賄えなかった在庫管理機能や設備連携をWMS導入でカバーし、業務拡大に耐えうる物流体制を構築した好例と言えるでしょう。

以上3つの事例からも分かるように、WMS導入によって在庫の見える化・作業標準化が進み、生産性向上とミス削減に大きな効果があります。自社の課題に合ったWMSを選べば、アパレル物流現場は飛躍的に改善できるのです。

まとめ:WMS導入でアパレル物流を最適化しよう

アパレル業界の物流担当者に向けて、WMS導入のメリットやポイント、おすすめシステムをご紹介しました。多品種・短サイクル・高頻度返品という過酷な条件下で効率と正確さを両立するには、もはやWMSは欠かせないツールです。実際、多くのアパレル企業がWMSによって在庫管理や出荷業務の悩みを解消し、ビジネスチャンスを拡大しています

もちろん企業ごとに課題や要件は異なりますので、まずは自社の問題点を洗い出し、それを解決できる機能を持つWMSを選ぶことが重要です。本記事で挙げた選定ポイントや事例も参考に、ぜひ自社に最適なWMS導入を前向きに検討してみてください。適切なWMSを導入すれば、アパレル物流の現場は驚くほどスムーズになり、在庫管理の精度向上やコスト削減、そして何より顧客満足度の向上という形で大きなリターンが得られるでしょう。アパレル物流の未来を切り拓くためにも、WMS導入という一歩を踏み出してみませんか?この記事がその検討の一助になれば幸いです。

※関連記事「WMS(倉庫管理システム)の導入費用|タイプ別相場・内訳・ROIまでくわしく解説

 

ローコード対応WMS