効果性の高い倉庫管理システム構築の手引き -第4回-|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

物流業界トピックス

効果性の高い倉庫管理システム構築の手引き -第4回-

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■「効果性」とは?

本手引きのメインタイトルにも用いている『効果性』という単語について、
少し説明が必要かと思います。
『効率性』とよく勘違いされるのですが、『効率性』とは作業や動作に無駄をなくす場合などに用います。
『効果性』というのは、長期に渡り高い効果を上げることができる能力のことを言います。

つまり「効果性」の高い倉庫管理システムというのは、企業が目指すべき目的に向けて長期に渡り高い効果を上げることが出来るシステムと言えます。

少し分かりにくいと思いますので、もう少し分かりやすく説明しますと、

”手間と時間をかけてよりよい成果を上げる仕事をする” =『効果性』、
”出来る限りの手間と無駄を省き多くの作業をする” = 『効率性』だと言えます。

seminar倉庫管理システム(WMS)などの現場処理系のシステムはどうしても『効率性』を重視し『効果性』の方は忘れられがちです。

しかし『効率性』だけを求めるシステムでは、本来の目的達成に向けての効果はあまり期待出来ません。
『効果性』と『効率性』を掛け合わせることで目的達成能力の最大化を図ることが出来るのです。(図1)

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『効率性』はWMSの様なシステムを導入すればある程度向上することは約束されています。
しかし物流システムを導入する上で、実は『効率性』よりも重要なのは『効果性』なのです。

本手引きは物流を重要戦略課題と捉えて、物流システムに積極的に投資し、目的達成を期待されている方に向けて、
『効果性の高い倉庫管理システム構築の方法』を分かりやすくお伝えしたいという思いから、私の経験をもとに好き勝手に書いています。

トップが掲げたビジョンに向けて、物流現場で働く人の地位とモチベーションを向上し、強力なコミニュケーションツールとしてITが活用されることが私達が描くビジョンです。
そしてそのような理想の物流システムの構築手法を体系化し、一社でも多くの企業に貢献することが私達の使命です。

私達もまだまだ勉強途中でありますから、皆様の課題を解決するには十分な内容ではないかもしれませんが、何か一つでもヒントや気付きを得て頂き、
本手引きが皆様の物流システム構築の一助になればとても嬉しいです。
第4回目にして、”まえがき”のような書出しとなりましたが、早速今回の本題へと説明を進めていきましょう。

■「効果性」の高い現状分析とは

「ピッキングの時間や動線を図ってもっと詳細に分析はされないのですか?」
私達がご支援させて頂く企業様によくこのような質問を頂きます。

このような分析手法をワークサンプリングといいます。
作業者のプロセス単位の作業時間や作業動線をサンプリングデータとして収集し、作業に無駄や改善箇所がないかを探る方法です。
確かにこのような細かなデータ分析による作業効率改善の提案も必要だと思います。

細かい数値データで分析をした方が、高額な費用を支払って支援を依頼した方としても、「さすがはプロ!」と納得・安心されることでしょう。
しかしこれは『効率性』に重点を置いた現状分析手法です。

ここまで読み進めて頂いた方はもうお気付きかと思いますが、重要なことは『効率性』よりも『効果性』です。
『効率性』を求めるのはその後でも良いというのが私の考えです。
ですから、私達が行う一番最初の現状分析は、まずこの『効果性』という視点で実施します。

『効果性』の高い現状分析のポイントは以下の3つです。
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1.「本当に現場の人が困っていることは何か?」

「無駄な作業はないか?」「無駄な動きはないか?」こういった視点で現場を分析すると本当に現場の人が困っていることに気付かない場合があります。
トップや上司からすれば、大した問題ではないように見えることでも、毎日そこで同じ作業をする作業者からしてみると大きな問題の場合もあるのです。

では、どうすれば本当に現場の人が困っている課題を拾い上げることが出来るのか?
答えは簡単ですね。現場の人に聞くことです。それも1度ではなく何度でも聞きます。

「何か困っていることはない?」「どんな作業が辛い?」

どうしてこのような視点で現状分析をすることが「効果性」に繋がるのか。少し分かりやすい例をあげましょう。

たとえば、毎日一生懸命皆さんが仕事しているとき突然上司が目の前に現れて「あたなの作業は生産性が低いので、このように作業を変えて欲しい。もっと生産性を上げて欲しい。」と言われたらどうでしょうか?

「よし!もっと生産性を上げてやろう!」と思うでしょうか?仕事に対するモチベーションは上がるでしょうか?

どちらかと言えば「毎日一生懸命やってるよ」とか「私はロボットじゃない」と思うのではないでしょうか。

生産性や効率性よりもまずは、現場の方が今現在困っていることに目を向けて、そこを解決してあげましょう。
その後でさらに効率を上げる為の改善を行う方が効果的なのです。

人は理屈では動きません。感情で動くのです。理屈ではいくらわかっていても、感情が納得をしていなければ脳も体も働かないのです。

ですから、『効率性』よりも『効果性』なのです。

2.作業者のモチベーションを下げる要因はないか?

1つ目の「現場の人が困っていることはないか?」にも通じることですが、作業者のモチベーションを下げている要因を課題として整理することが大切です。

私の経験で言わせて頂くと、最も多い要因は「自分達には責任だけあって権限がない」という不満を心の中にもっていることです。
物流現場というのは、労働集約型であり、クレームの多い現場です。
納期遅延・欠品・誤出荷など得意先や自社の営業から頻繁にクレームを受ける為、とてもストレスが溜まりやすい仕事なのです。
商品の管理や物を流すことにおいて、全ての責任がある割には殆ど権限がありません。
ですから、責任を押し付けられている気持ちになるのです。
どちらかというと「営業」>「物流」といった組織体制の企業が多いのは私の経験からも間違いのない事実だと思います。

物流に限った話ではありませんが、作業者の地位とモチベーションを上げることが何よりも効果性の高い改善であるということは、決して誤った結論ではないと私は確信しています。

3.数値データは正確性よりも簡易性

現状分析の一つとしてワークサンプリングという手法があることは先に説明しました。
このような手法を用いる場合は、当然正確なデータの収集を行うことが必要です。
しかし、『効果性』の高い現状分析においては、最初の段階でこのような詳細な分析は行いません。
かといって全く数字を取らなければ、定量的な判断を行う術がなくなってしまう為、必要最低限のデータは収集します。

この時のポイントはとにかく簡単にすぐに収集できるデータを活用するです。
例えば月の誤出荷件数や、月末の在庫高、出荷件数や入荷件数、プロセス毎の作業人数などです。
そして正確性はあまり求めません。
今からシステムを導入して大きく現場を変えて行こうとする前段階で、時間と手間をかけて細かい数値をとってもあまり意味がありません。そのような分析はもっと後からでも充分なのです。

まとめ

このように最初の現状分析フェーズにおいては、『効率性』ではなく『効果性』に重点を置くことが成功の大きなポイントであることがご理解頂けたかと思います。
細かい数値データを細かく分析して、格好の良い分析結果をレポートするのも否定はしませんが、目的を間違えないようにしなければなりません。
効果性が高い方法を選択するということは、目的に向かう最短距離を選択することと同じです。
皆様が間違った穴を一生懸命掘らないで済むことを願います。

 

※最後まで読んだ頂いた方に耳寄りなお知らせ※

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著者:まさやん
製造業を中心にこれまでに300社以上の倉庫管理システムの導入を経験。
その酸っぱくて甘い経験を活かし、失敗しない効果性の高い倉庫管理システムの導入コンサルタントとしても奮闘中。