食品業界の品質は食品物流システムで決まる! 第11弾|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

物流業界トピックス

食品業界の品質は食品物流システムで決まる! 第11弾
~物流とマーケティングの接点について~

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例えばあなたが、お子さんの誕生日に自転車を購入しようと考えているとしましょう。
ひと昔の状況で考えると、新聞の折り込みチラシ、駅前の自転車屋、百貨店などに出向き、事前に情報を収集して、おおよその費用感と自転車のイメージを掴んで、いざ購入と段取りをしていた事でしょう。

当然ながら、今の時代はWEBがありますからわざわざ自ら動き回らずとも、スマホを利用して指先の動きだけで国内の「自転車の購入」にまつわるありとあらゆる情報が瞬時に集まり、その中から望む費用感と条件に合った自転車を購入することができますよね。
当たり前のように購入ポイントをもらい、納品日と時間を指定して、自宅まで配達してくれるわけですから。
あの一苦労が無くなって、あっさりと目の前に希望の物を届けてくれますから非常に便利ですね。

では、果たしてこの「好条件で自転車を購入できる」という結果はWEBの存在で可能になっているのでしょうか。
無論、説明の必要はないと思いますが「WEB検索で情報を収集する」という事は、「好条件で自転車を販売している」という情報源があっての手段になります。

この自転車販売の市場において、他社と差別化し消費者のニーズを満たした上でより多くの方に自社の自転車を購入して頂くためにはどうしたら良いかと戦略を考え、手段実行していくという事がマーケティングに当てはまるという事になります。
そのマーケティングには物流が大きく関係してきます。
ここで言う物流というのは、業務視点では無く、事業展開していく中で、物流をどう機能させていくかという経営視点を指しています。
このマーケティングには幾つもの手法があり、その中でも代表的なフレームワークを幾つかご紹介していきます。

■売り手の視点(供給側視点/Marketing1.0)

ご存知の方も多いと思いますが、もともとは1950年代にノースウェスタン大学経営大学院のリチャード・クルウェット教授が3P1DとしてProduct(製品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Distribution(流通)を使用しており、それをもとにして1960年代にエドモンド・ジェローム・マッカーシーが、1960年に提唱したとされる「4P」があります。
4Pは、Product(製品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Place(流通)になります。
Marketing1.0とも呼ばれ、「製品中心思考」と表現されます。

現代では、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーによって、個別戦略を組立てる前に、STP理論としてSegmentation(切り口)、Targeting(選定)、Positioning(位置づけ)をもとに方向性を明確にして4Pを活用するとしています。
また4Pの進化論として、Public opinion(世論)、Political power(政治力)を加えた「6P理論」またはPeople(人)、Processes(プロセス)、physical evidence(物的証拠)を加えた「7P理論」が提唱されています。

■買い手の視点(需要側視点/Marketing2.0

ノースカロライナ大学のロバート・ローターポーン教授が1990年代に4Pに代わる新しいマーケティング戦略の概念として提唱した「4C」Consumer(顧客価値)、Cost(価格)、Convention(利便性)、Communication(コミュニケーション)があります。
Marketing2.0とも呼ばれ、「消費者思考」と表現されます。

上記の4Pと4Cについては、商品開発やマーケティングをされる方々は十分に熟知されていらっしゃるかと思います。
4Pには「Place(流通)」、4Cには「Convention(利便性)」として物流に関わる項目が存在します。
企業戦略を立てる際に、差別化をするには物流が大きく関係してくるという事が理解できると思います。
双方を加味して物流の機能ニーズとして考えると、「購入しやすい環境(品質/簡易さ/スピード/価格」をどのように構築していくかが鍵になるのではないでしょうか。

■共生(価値を共に創る)の視点(価値主導/Marketing3.0)

フィリップ・コトラーによって、時はMarketing3.0に移り、段階を経て進化してきたマーケティング理論。
詳しい方々は、もう既にご存知かと思いますが、これまでのマーケティングの考え方としては、供給側の売り手視点や需要側の買い手視点の一方方向であった事に対し、供給側と需要側の双方の価値主導の考えを前提としています。
それらの概念は、SNS等の進化に伴った変化で、「社会貢献」や「社会的価値」などの側面を持つことで知られております。
図1の比較表から伺える事は、供給側と需要側の環境の変化と共に、多様化するメディアの影響によりマーケティングが進化している事が理解できると思います。

■物流は戦略として捉える事で武器になる!

物流とマーケティングは密接な関係であり、「物流を制する者は市場を制す」と言っても過言ではないほどに物流機能は影響力を持っています。
実際に市場シェアの上位企業においては、物流という機能を効果的に活用している事が伺えます。
逆に言えば、物流をうまく機能させる事ができていない企業は、物流を業務工程としてのみ捉える傾向があるという事が言えます。
つまり、コントロール可能な機能を1つ活用しきれていないという事になります。
それは誇張した考えではなく、現に車で言えば、4つの車輪のうち、1つの車輪がパンクしている状態に値すると言えるのではないでしょうか。

■物流機能の効果の最大化は、合理的なマーケティングとなる!

収益を最大化していく為には、大きく分けるといかに売上げを伸ばして利益を拡大していくかという加算の考えと、有効なコスト以外をいかに削減して利益を拡大していくかという引き算の考えがありますよね。
その2つの観点から見る利益の拡大と言う点において、大きな影響を与えられる1つの手段として「物流機能」の効果を最大化するという事が挙げられます。
物流機能には、差別化や利便性などの価値提供の側面と在庫最適化や業務効率化などのコスト削減の側面を併せ持ちますので、物流機能の効果を最大化する事で、結果的に売上げを押し上げ、コストを下げると言う合理的な効果を得る事に繋がります。つまり、マーケティングには「物流機能」の効果を最大化するという戦略が密接に関わり、含まれると言えます。

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今回は、物流とマーケティングについて触れさせて頂きました。
優れた製品の誕生だけではまだ価値提供という部分では未完成になります。
人の手に届き、利用されて初めて製品の価値が生まれます。
その価値提供の過程において物流機能を最大化していく事が、差別化や利便性に繋がり、より多くの方々に喜ばれる事となるでしょう。

著者:モリオ
飲料メーカーで培った経験を活かし、 食の安全と物流をキーワードに執筆活動開始。