他システム連携事例
物流機能に特化した倉庫管理システム(WMS)や在庫管理システムは販売管理システムや生産管理システムと連携して導入するケースが増えています。最近の主流は販売管理、生産管理、倉庫管理それぞれの機能に特化したパッケージをマルチベンダー方式で導入するやり方です。巨大なシステムを1社専属で導入するのではなく、コンパクトでシンプルな業務毎に特化したシステムを積み上げていく方式です。ここでは弊社のINTER-STOCKと他社の販売管理や生産管理パッケージとの連携方法と事例についてご紹介しながら、連携時のポイントや留意事項についても解説します。
※マルチベンダー方式とは…複数のシステムベンダーで社内のシステム全体を構築すること。逆に1社のシステムベンダーで社内のシステム全体を構築することをシングルベンダー方式という。
INDEX
1最初に知っておきたい、マルチベンダーとシングルベンダーの導入方式の違い

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メリット
- 窓口が一社なので問い合わせが簡単
- 一社にお任せできるので、仕様決めや管理が簡単
デメリット
- 1社のみの意見や知識で情報システムが構築される為、新しい技術ややり方が導入されにくい。
- 開発金額など、システム会社の言いなりになりやすい
- 関係が慣れあいになってしまい、良い緊張感が保たれない
- システムが肥大化し、少しの改修に時間もコストもかかる
- 1社に自社のシステムを全て任せてあるので、リスクが高い
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メリット
- それぞれの分野に特化したベンダーから様々な技術ややり方を導入できる。
- それぞれのシステムがコンパクトでシンプルなので、改修費用が低コスト
- ベンダー間で良い意味で牽制し合えるため、1社の言いなりになりにくい
デメリット
- 各システムベンダーの管理、コントロールが出来る人材が必要
- 窓口が複数になる為、障害がなどが発生した場合、自社で原因の切り分けが出来る体制が必要
システム導入時や、改修時はマルチベンダーの方が複数のベンダーと調整を行わないとならない為、クライアント側の手間が増えてしまいます。逆にシングルベンダーの方であれば、全てお任せできるので手間はかかりません。しかし、面倒だからといってこの手間を省いて自社の情報システムを1社に依存してしまうのは、様々なリスクをともない、長期的な視点から見ればデメリットの方が多いというのが弊社の考え方です。
上記でご紹介したそれぞれのメリットとデメリットを参考にして、自社の情報システムの構築方法を検討して下さい。
2販売管理システムや生産管理システムとの3つの連携方法
販売管理システムや生産管理システムと連携する方法は主に下記の3つの方法を用いて連携します。
連携方法は3通り
- 1.CSVテキストファイルによる連携
- 2.DB直接連携による連携
- 3.WEB-APIによる連携
1.CSVテキストファイルによる連携最も多い事例はテキストファイルによるデータ連携です。
テキストファイルで連携する場合、手動で書出し、取り込みを行う場合と自動で取り込みを行う場合があります。自動で取り込む場合は、基幹システム側で改修費用が高額になる可能性もある為、手動で取り込むか自動で取り込むかは作業の手間とリアルタイム性を十分に検討して決定します。
メリット
- お互いのシステムのデータベース情報の開示が必要ありません。
- お互いのシステムの依存度が低い為、障害発生時などに原因の切り分けが簡単です。
デメリット
- INTER-STOCKから書出しされる各種実績データを自動取込したい場合、基幹システム側で改修費用が高額になる場合があります。
- テキストデータの受け渡しは通常数分単位で実施します。お互いのシステムのデータ整合に数分のタイムラグが発生するので、リアルタイム性を要求されるデータ処理には不向きです。
- テキストファイルを書き込み中に取り込みをされるとデータの欠損などが発生する危険性がある為、排他制御を処理に組み込む必要があります。
2.DB直接連携による連携入出荷指示データや各種マスタデータをお互いのシステムが直接参照する方法です。通常は各システムのデータ(テーブル)をそのまま参照する方法ではなく、連携用の中間テーブルをビューとして別途用意して、そのビューを参照する方法を用います。
※テーブルとは…利用用途やデータの種類別に区分けされたデータを格納する入れ物。
※ビューとは…一つまたは複数のテーブルからデータ参照用として、必要なデータを抜き出し、テーブルのように利用するもの。参照専用であり、テーブルのように書き込みすることはできない。

メリット
- 各システムのが必要な時に自由に相手のデータを参照出来る為、リアルタイム性の高いシステムを構築できます。
- 人の手作業を介在しない為、オペーレーションによるミスを防げ、作業の手間もかかりません。
デメリット
- お互いのシステムのDB情報の開示が必要になる為、基幹システムのベンダーによっては機密保持の都合上、開示されない場合があります。
3.WEB-APIによる連携他システムとINTER-STOCKのデータ連携をWEB-APIの仕組みを用いて連携させます。APIの実装はJSONベースで作成されることが多いです。
※JSONとは…JavaScriptプログラミング言語の一部をベースに作られた容易に実装が可能なデータ交換フォーマットです。

メリット
- フォーマットの仕様がデータ構造の仕様に準拠する為、その部分についてはお互いのシステムでドキュメントが必要なくなります。
- リアルタイム性の高いシステムを構築出来ます。
デメリット
- システムによってはWEB-APIを公開出来ない場合もある為、事前に確認が必要です。
3連携が必要になるデータの種類について
販売管理や生産管理システムと連絡する主なデータは下記の通りです。
- マスタ系
- 品目マスタ
- 仕入先マスタ
- 得意先マスタ
- 納入先マスタ
- 指示系
- 入荷指示データ
- 出荷指示データ
- 実績系
- 入荷実績
- 出荷実績
- 棚卸実績
4これまでに実績のある連携パッケージのご紹介
INTER-STOCKはこれまでに多くの販売管理や生産管理と連携をして導入を行ってきました。
これまでにINTER-STOCKが連携した実績のあるパッケージ商品をご紹介します。
- 販売管理パッケージとの連携事例
- 商蔵奉行
- PCA商魂
- SAP R/3
- SMILE
- GLOVIA
- 生産管理パッケージとの連携事例
- 電脳工場
- TPiCS
- mcframe
5販売管理システムとWMS(倉庫管理、在庫管理システム)を連携する際の主な留意点
1.各マスタ情報の更新方法について検討しましょう品目マスタや得意先マスタ等は通常基幹システム側で管理、メンテナンスを行います。WMS側はそのマスタを連携して共有する必要がありますが、この場合に各マスタをそれぞれ更新するのはシステムが複雑になってしまいます。
例えば品目マスタの更新がかかる前に、入荷出荷指示データを連携し、WMS側の品目マスタにないデータを取り込んでしまうといった不都合も発生しかねません。
弊社が推奨するのは、入荷指示データ、出荷指示データを取り込む際に、自動的にWMS側のマスタを作成する方法です。
この場合、基幹側で作成する入出荷指示データにマスタ作成に必要な最低限の項目(品目名や単位等)が出力されている必要があります。
■指示データ取込時、マスタ自動更新フロー

この方法を用いれば、基幹システム側とWMS側でマスタの更新タイミングを心配する必要がなくなります。
またマスタの更新漏れにより、指示データ取込時にエラーが発生する等の障害も防げます。
2.どのシステムが在庫の主導権を握るのかを十分に検討しましょう
販売管理システム、生産管理システム、WMS(倉庫管理システム)はそれぞれ在庫を管理する機能を持っています。マルチベンダーで導入をする際にとても重要になるのが、どのシステムが在庫の主導権を握るのかということです。また、通常は在庫の主導権を握ったシステムが在庫引当処理も行うことになります。
※在庫引当処理とは…受注データ(出荷指示データ)に対して、理論上の在庫を予約する機能。受注数(出荷指示数)に対して理論上の在庫が不足している場合は、欠品データを出力する。
最近ではWMS(倉庫管理システム)が在庫の主導権を握る構成が主流となりつつあります。主な理由としては、在庫情報のリアルタイム性に対しての要求が高まっていること、物流現場の在庫とシステムの在庫が合わない問題を解決したいことなどです。
■各システム別に主導権を握るメリットとデメリット
| 主導権を握るシステム | 在庫管理の特徴 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 販売管理システム | 在庫をお金として管理するのが得意 | 営業の受注伝票処理や売上 伝票処理と在庫を合わせ易い |
パッチ処理で在庫が更新される場合が多く、現場の在庫とシステム在庫にタイムラグが発生する |
| 生産管理システム | 在庫を生産情報と関連付けるのが得意 | 生産指示や現場の生産状況と在庫を合わせ易い | 生産に直接関係のない在庫の管理が行えない ※備品や諸口品等 |
| WMS(倉庫管理システム) | 物流現場の在庫と合わせるのが得意 | 物流現場の在庫とシステム在庫を合わせ易い | 営業の受注伝票や売上伝票と連携した高度な引当ロジックや在庫予約が苦手 |
上の比較表はあくまで参考レベルですが、自社の情報システムが在庫管理の視点からどの領域に重点(強み)を置くかをよく検討した上で、決定しなければ、後々取り返しのつかないレベルの後悔をすることになります。
3.キャンセルや返品などのイレギュラーデータの取り扱いについて注意しましょう販売管理システムや生産管理システムから入荷指示データ、出荷指示データを連携する場合、キャンセルデータの取り扱いについて事前に各ベンダーでルールを決めておく必要があります。
例えば販売管理システム側で受注伝票データを元にINTER-STOCKに出荷指示データを連携した後に、販売管理システム側の受注伝票がキャンセル扱いになった場合で考えてみましょう。
方法1:キャンセルフラグを用いる方法販売管理システム側は受注伝票がキャンセルになった場合、キャンセルフラグを立てたデータをINTER-STOCK側に送信します。
INTER-STOCK側はキーとなる項目(例えば受注NO+明細NO)で出荷指示データを検索し、該当の出荷指示データを削除します。
方法2:お互いのシステムそれぞれでキャンセル処理を行う方法
販売管理システム側で受注伝票がキャンセルになった場合、販売管理システム側で該当伝票データを削除した後に、INTER-STOCK側の指示データを手動で削除する方法です。お互いの仕様を合わせたり、システム改修が発生しないというメリットはありますが、手動で削除する為、キャンセルデータが頻繁に発生するような場合はお勧めできません。
4.マスタのメンテナンス計画と共通項目について整理しましょうマルチベンダー方式の導入で常につきまとう課題がマスタの管理方法についてです。各社それぞれのシステムでマスタを管理しますが、共通の項目も多い為、ユーザー側としては出来る限り同じ情報の二重登録は避けたいところです。また二重登録になると、一方のシステムでは登録したが、もう一方のシステムでは登録されておらず連携時にエラーで発覚するといったことになります。
そうならない為にも事前に各社のシステムで管理するマスタの共通項目について整理をしましょう。特に品目マスタは重要です。
販売管理システム、生産管理システム、WMS(倉庫管理システム、在庫管理システム)で品目コードや品目名をバラバラにメンテナンスするのはナンセンスです。マスタ毎に主管となるシステムを設定し、主菅システムのマスタを参照、連携する仕組みを構築しましょう。

おわりに
マルチベンダーによるシステムの導入が主流になりつつありますが、事前にそれぞれのパッケージベンダーを入念に打合せをしていても、いざ稼働してみると、様々な問題が発生して、その問題を解決する為に追加費用が発生するといったことはよくあります。
クライアント側にマルチベンダー方式の導入に慣れた人材が不足しているというのも一つの要因です。
マルチベンダー方式は各社のコントロールや調整が大変そうと思われるかもしれませんが、抑えるべき要所を抑えてしまえば決して難しいことはありません。各社の強み、弱み、各社のシステムの特徴を良く理解して、それぞの強みやメリットを活かすことでシングルベンダー方式では経験できなかったイノベーションを実感することができるでしょう。
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