物流機能高度化時代のロジスティクス・マネジメント ~パフォーマンスの測定(コスト編)~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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物流機能高度化時代のロジスティクス・マネジメント ~パフォーマンスの測定(コスト編)~

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画像素材:PIXTA

 

*** 組織は役割の異なる細胞から形成される ***

 

「昔は中学校で蛙の解剖を授業でやっていた。」父がそう教えてくれたことがあります。
昔の人はそんな残酷なことを子供に教えていたのか、とびっくりしたことを憶えています。

筆者が中学の時はやった記憶がないので、いつの間にかなくなったのでしょう。最近でも学校によってはされてたりするのでしょうか。

解剖した器官等を薄片にして顕微鏡で見ると細胞の集まりが見えるそうです。
地球上に存在するあらゆる生物は、それぞれ役割や形の異なる細胞が沢山集まって、自主的にコミニュケーションをして一つの組織を形成しています。
私達人間の体も例外ではありません。

組織学で生物を考えると、生物も企業も非常に共通点が多いことに驚きます。

経営学者ピーター・ドラッカーは「経営者の条件」という著書の中でこう述べています。

- 成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。
肥満防止のためである。
組織は油断するとすぐ体型を崩し、しまりをなくし、扱いがたいものとなる。
人からなる組織も、生物の組織と同じようようスマートかつ筋肉質であり続けなければならない。-

古い活動を捨て、新しい活動を始める為には現状の組織のパフォーマンスを正確に測定する必要があります。
今回は物流機能が高度化していく中でロジスティクス領域におけるパフォーマンスの測定について考察を進めます。

 

*** ロジスティクス上のコストは一般的な会計で計算は出来ない ***

 

ロジスティクス・マネジメントはサプライヤーからエンドユーザーまでを1本の線でつなぎ、その線上で発生するコストや効果を評価することが求められます。

しかし、その測定は多くの企業にとって非常に困難なものとなっています。
その最大の理由は情報の不足です。

例えば物流コスト一つとってみてもその困難さは際立っています。
物流コストは原価会計と連動します。
よって従来の会計では物流コストについて明確な扱いが行えません。
どこまでが物流コストで、どこまでが製造原価でといった迷いは多くの現場で妥協を生み、平均値を多用した管理が一般化しています。

したがって、発生するコストの中からロジスティクスに関連する項目についてのみ抽出する方法が一般的となり、会計上の項目単位でコストを分析・評価し、ロジスティクス上の決定がなされています。

先で述べたようにロジスティクスはサプライヤーからエンドユーザーまでの線上の全てに深く関わってきます。
既存の会計システムの都合に合わせて各項目単位で測定し、その結果を元にロジスティクスの意思決定がされているとすれば、それは大変に危険なことです。

1つの決定の与える影響がロジスティクス全体、企業全体として考慮されない意思決定は、オペレーション上多くの問題を発生させることになるでしょう。

 

*** トータルコスト分析の重要性 ***

 

こうした問題を発生させない為には、ロジスティクスの決定がオーダーから請求までのトータルコストでどういった違いをもたらすかを分析する必要があります。

物流ネットワーク上にデポを1拠点増やせばトラック輸送コスト、在庫コスト、入出荷コストなど様々なコストが変わってきます。
この場合、決断するにあたって適切な方法はデポを増やすかどうかといった決定を2つのオプション間のトータル原価の違いで行うことです。

こうした観点でロジスティクス原価計算の仕組みを創りだすことに焦点を置かなければなりません。
さらに要求されるのは顧客サービスに焦点を当てた決定です。
ロジスティクスサービスにより顧客に提供する価値とトータルコストを比較しなければなりません。

従来の会計システムではこしたことは念頭に置かれていない為、ロジスティクス原価計算が一般の原価計算と同様に扱われてしまっています。

効果的なロジスティクス原価計算の仕組みは、ロジスティクスの目的に合致したトータルコストの算出方法を明らかにし、その為のインプットを特定しなければなりません。
ロジスティクスの決定による成果はこうした正しい取り組み(目的から原価を導き出す)ことから生まれるのです。

 

*** パフォーマンス測定における誤解 ***

 

パフォーマンスの測定において多くの場合、共通の過ちを犯しがちです。
それは問題解決の為の測定に終始してしまうといった過ちです。

ピーター・ドラッカーは、成果をあげるための習慣についてこう述べています。

-組織もまた、問題の解決ではなく機会の開発に力を入れることを学ばなければならない。
そして強みを生かすことに努めなければならない。
すべてのことを少しずつ行うのではなく、優先順位を決め集中しなければならない。-

政治家にしても企業の経営者にしても、新たに就任するとこれまでの粗を探してそこを改善することから手をつけてしまいがいです。
なぜならば、機会の開発よりも問題の解決の方が簡単かつ短期的に成果をアピールできるからです。

しかし、本来は短期的な問題解決よりも長期的な機会開発がリーダーにとって優先されるべき役割であるということを肝に銘じなければなりません。

細胞の一つ一つは形も違えば役割も違います。細胞が役割を誤ると組織は崩壊を始めます。
最近世間を賑わしている政治や企業のニュースはこうした組織の原則を再認識する良い機会なのかもしれません。

 

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