「超人手不足」の物流業界はどう変わる?2030年近未来物流の展望(1)|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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「超人手不足」の物流業界はどう変わる?2030年近未来物流の展望(1)

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画像素材:PIXTA

 

*** 今が物流業界にとって最高の時代だ! ***

 

かつてピーター・ドラッガーが語っていた「暗黒の大陸」ともいうべき社会が今まさに出現しています。
明治維新や戦後の混乱期、産業革命に匹敵するような大変化が生まれようとしているのです。

ドラッガーに「暗黒の大陸」とされた物流に光明を見出すことで事業を構想する企業は間違いなく勝者になれる時代だと言っても過言ではありません。

「超人手不足」として運べない時代の真っただ中にいる物流業界において、今が最高の時代だと言えるでしょう。
なぜなら、現状の”クライシス”からの脱却を模索する中で、今後利用が検討される様々な最新テクノロジーを、最も駆使する業界の一つになるからです。
そうしたテクノロジーを効果的に活用する構想力を磨けば、ビジネスチャンスが無限に生まれてくるはずです。

産業革命は18世紀半ばに英国で始まりました。
それ以降、250年の産業社会というのは常に「more(もっと)」、「better(よりよく)」を追い求めてきました。

「より安く」・「より速く」・「より多く」を目標に世界の産業が発展してきたわけです。
そうした時代においては、比較することが可能な世の中であり、他と比較することで自分達の価値を創造してきたと言えるでしょう。

しかし、これからの時代は違ってきます。
比較対象が存在しない、見えない世界に迷い込んでいくことになります。
インターネットによって、世界が国境のない一つの大舞台となりました。
2045年にはAI(人工知能)は人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達するといわれています。

 

※シンギュラリティ(技術的特異点)・・・人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって起こる大きな変化

 

こうした大変化の時代においては、これまでの常識が通用しなくなります。
私達はこれまでと同じようなパラダイムで行動してはならないのです。

これまであった既存のモノを「もっと、よりよく」と改善を試みたところで、これまでのように上手くいかなくなったことは事業をされている皆さんが一番実感されていることと思います。

ものづくりとともに経済を成長させてきたわが国においても、コスト面からの競争原理が市場を支配していました。
物流業界も例外ではありません。
既存の競争原理の下で事業を構想しても「超人手不足」の危機を乗り越えることは出来ないのです。

本稿では数回にわたって2030年の近未来物流の展望を予測し、そこから派生する価値創造による新しい事業への転換のヒントを探っていきたいと考えています。

多少の危険はともないますが、”クライシス”から脱出する方法を模索する過程で、人類は新しい世界を生み出してきたのです。

 

*** 本業で競争し、物流は協業の時代 ***

 

物流リソース不足の問題について議論がされる際に必ずと言っていいほど共同配送について意見が上がります。
最近では、同業他社(競合同士)による共同配送が脚光を浴びています。
企業間の共同配送については、以前からその有用性は高く評価されているのですが、評価の割には非常に事例が少ないのです。

共同配送が広まらない一つの要因として、物流会社主導での提案が慣例となっているためだと推測されます。
実際に運ぶモノの上流のデータは各荷主が保有している為、荷主が主導となって共配を運営する仕組みがないと中々広まらないのではないでしょうか。

ただし、荷主同士で進める共配も様々な問題が発生します。
それぞれ荷主毎に配車システムを保有している場合は、どちらの配車システムを利用するのか、どうやって出荷情報を統合するのかといったことが問題になります。

システムとデータ連携の問題が解決しても、費用の分配はどうするのか、運送会社との契約はどうなるのかといった様々な検討課題が持ち上がります。
結局どちらも途中で疲れてしまって、共配の話しが頓挫したというのは良く聞く話しです。

とはいいつつも、競合同士による共配が少しずつでも進み始めていることは大変に良い流れです。
今後の運べなくなる時代に向けた危機感が企業を動かしていると言えるでしょう。
近未来物流においては、本業で競争し、物流は協業の時代になります。

なかなか思うように進まない共同配送ですが、今後はどの企業も検討を余儀なくされることになるでしょう。
共同配送を進めるにあたっては、いくつかポイントがあります。

 

*** 1.自社の物流概要を整理する ***

 

自社の物流の概要が整理出来ていない状態で荷主同士で共配を進めると、後々になって条件が折り合わず結局共配に失敗することになってしまいます。
まずは共配先を探す前に自社の物流の概要をしっかりと整理しておきましょう。

以下の表のように荷物、納品先、波動、車両については最低限情報を整理して、相手と情報交換を行って下さい。

 

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*** 2.スモールスタートを心がける ***

 

共配を検討する際、一度に全ての商品、全ての納品先について検討を進めようとする企業を見かけますが、それだと中々上手くいきません。
専任のコーディネーターがついている場合などは別ですが、荷主同士や物流会社の紹介で共配をスタートする場合は、スモールスタートがオススメです。

納品先のエリアや商品を限定するというもはもちろんですが、まずは1パレットから載せて頂くという方法も有効です。
1パレットであれば、どちらの荷主にとってもリスクは殆どありません。

そして少しずつ、1パレットから3パレット、10パレットといった感じで増やしていけばハードルが低くなります。

 

*** 最後に ***

 

近未来物流の展望を探る上で、今回は共同配送について考察しました。
共同配送は古くから存在する方法ですが、国内企業同士の共配の普及率は極めて低いのが実状です。

しかし、近未来物流では、ICTの活用により出荷情報が特定の場所に集約されます。
物量が集約されれば物流は効率化されることは皆さんもご存知の通りです。
その物量を集める為には出荷情報を集めることになります。

集約された出荷情報をベースに共配が最適にシミュレーションされ荷主主導でも、物流会社主導でもない第三者(おそらくAI)主導による世界規模の共配プラットフォームが構築されていくことでしょう。

インターネットによる世界中の情報にアクセスすることが可能になったように、今後のIoTやAI等の最先端テクノロジーによって、世界中の物流網を最適活用出来る時代が到来するのです。

 

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