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2019年06月11日配信分
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経営を支える-経営者が学ぶITを活用した物流へのアプローチ -第六回-

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画像素材:wavebreakmedia / PIXTA

 

これまで国内のサプライチェーンを支えてきたのは、現場の方々の真摯な努力でした。
しかし、その人が今足りなくなってきました。

厚生労働省が今月7日に発表した2018年人口動態統計によると、死亡数から出生数を引いた自然減が初めて40万人を超えました。

人口減少に歯止めがかからず、労働生産性の向上は喫緊の課題です。

今後益々人手が不足する国内で、これまで以上のレベルでサプライチェーンを構築し、支えていくために絶対必要になってくるのが標準化デジタル化です。
自社だけが効率化できれば良いというデータ活用はもう止めなくてないけません。

 

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自社のデータをいつでも連携できる状態を作っていくことが必要です。
Amazonなどの外資大手企業は1社でサプライチェーンの全てをやり始めています。
つまり、ほぼ1社完結型でサプライチェーン・モデリングを構築できるため、圧倒的な効率化を図ることが出来るのです。
これまで通り日本の中小企業が集まって、個々で勝負していては、コスト的にもスピード的にも勝ち目がありません。

サプライチェーン・モデリングとは、顧客にモノを届ける際のサービルレベル・コスト構造・リスクを予めデザインすることを言います。
サービスレベルとは納期遵守率や納入リードタイムや在庫保有率等の水準です。
在庫保有率を高めて100%即納を約束するのか、在庫保有率を下げてコストを抑えるのか等を戦略的に決定していく作業です。
サービスレベル・コスト・リスクはそれぞれトレードオフの関係にあるため、予めどこを優先して、どこを妥協するのか設計することで全体最適に繋げる考え方です。

サプライチェーン内の各プレイヤーの生産能力、供給能力、配送能力など各種の制約条件を考慮した上でモデリングされます。

戦略とは、こうしたトレードオフの相関にある一方を切り落とすことを意味します。
戦略がなければ、どちらも優先するといった矛盾の中で現場は作業や判断を強いられるため、コスト増になり経営スピードも遅くなってしまうのです。

 

*** デカップリング・ポイントが自社のモノの流れを決定する ***

 

流通構造の中で「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ、必要な場所に届ける」というプロセスを最適化することが、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の最大目的です。
モノの流れを再設計するための重要なフレームワークにデカップリング・ポイントがあります。
受注分界点という意味ですが、注文を受けるポイント、同時に顧客に製品を出荷する最終のポイントのことです。

在庫を注文に引き当てるポイントと言った方が分かりやすいでしょうか。
顧客からの注文に対して、どこで在庫を引き当てるのかを設計します。
たとえば、見込み生産の場合は製品在庫がデカップリング・ポイントになります。
逆に受注生産の場合は、注文を受けて調達と生産が開始されるので、デカップリングポイントは受注時点となり、最上流に位置することになります。

デカップリング・ポイントが上流にあればあるほど、在庫リスクは減少しますが、販売機会損失や納品リードタイムが長くなるといった副作用が発生します。
逆にデカップリング・ポイントを下流にすればするほど、在庫リスクは増えますが、顧客に対して短いリードタイムで商品を届けることができます。(下図参照)

 

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このデカップリング・ポイントを極限まで下流に近づけているのがAmazonです。
Amazonは自社サイトのオーダーデータをビックデータとして保有しており、そのデータを分析することで、各地域毎の売れ筋商品を導き出して、最も近い倉庫に在庫を適時移動させています。

更には、野菜や日用品をネット販売しているAmazonフレッシュでは、配送トラックの中の在庫をデカップリング・ポイントに設定することで、受注から最短4時間で配送を可能にしています。
Amazonにしてみれば、ここまで在庫を顧客に接近させることは、かなりの在庫リクスを抱えることになります。
通常で考えれば、横持や在庫リスクが懸念され躊躇してしまいますが、「顧客サービスを最優先する」という戦略を明確に打ち出している同社では、そうした決定に迷いがないため、サプライチェーン・モデリングから実行までがとてもスピーディです。

リスクとサービスレベルのバランスを取り、自社としてどこをデカップリング・ポイントとして選択するかを決定することが、サプライチェーンモデリングで重要になります。

最近増えているネットスーパーは、在庫リスクを増やさずに、デカップリング・ポイントを顧客に近づける好例です。
この場合、デカップリング・ポイントは店舗の在庫になります。
ネットから注文が入ると、店舗内の商品をピッキングし、自社のドライバーが店舗から顧客へ配送を行います。

 

*** 顧客サービスと在庫リスクをバランスする在庫層別配置 ***

 

顧客サービスを高めながら、なるべく在庫リスクを減らす方法として、よく用いられる考え方が在庫層別配置です。
まずは倉庫を層別に定義します。
顧客に近い場所で在庫を持つデポ、デポへ補充を行うための配送センター(DC)、配送センターへ補充を行う地域配送センター(RDC)、供給の基になるグローバルセンター(GC)といった階層で各倉庫を定義します。

次にそれぞれの層別の倉庫に対してサービスレベルを定義します。
デポは数時間のリードタイム、DCからデポへは毎日補充、RDCからDCへは毎週補充、GCからRDCへは月に2回補充といった具合です。

続いて各層に対して在庫の配置も定義します。
各地域の顧客が希望するリードタイムと出荷数量、出荷頻度の組み合わせによって、各層でどの商品をどれだけ在庫するのかを定義します。
即納の要求が強く、出荷頻度が高い場合はデポに在庫し、逆の場合はDCやRDCに在庫するといった具合に決めていきます。

 

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在庫層別の配置を検討する際によく利用される項目を下記にご紹介します。

■納期(リードタイム)
■商品カテゴリー
■鮮度(賞味期限、使用期限)
■温度帯
■出荷量
■出荷頻度
■収益性
■サイズ、重量

 

*** まとめ ***

 

このように在庫層別に在庫を適切に配置することで、在庫が膨れ上がるリスクを防ぎながら、顧客のサービスレベルを上げていくことが可能になります。
デカップリング・ポイントの見直しや、倉庫や在庫を層別に定義して在庫を最適化することは、サプライチェーン・モデリングにおいても重要な要素です。
こうしたモデリングがしっかりと設計された上で、ITをどこで、どのようなタイミングで活用するかを決めていきましょう。

次回はアジア・シームレス物流フォーラム2019で報告された最新のRFIDの実証実験の結果をご紹介しながら、その有用性について考察したいと思います。是非ご期待下さい。

 

<参考文献>
『2018年人口動態統計』 厚生労働省
マーチン・クリストファー著『ロジスティクス・マネジメント戦略』 ピアソン・エデュケーション
石川和幸 著『エンジニアが学ぶ物流システムの知識と技術』翔泳社

 

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