RPAとFAX-OCRを活用した物流オペレーションの自動化|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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RPAとFAX-OCRを活用した物流オペレーションの自動化

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画像素材:metamorworks / PIXTA

 

●まだまだ無くならない物流FAX

 

国内のBtoB取引におけるFAXでの情報のやり取りは、毎月数億枚(正確な数字は分かっていません)と言われています。
その中でも物流はFAXを非常に多く利用する領域です。(発信より受信が圧倒的に多い)

筆者の元にもこれまで、FAXで受信した入出荷指示をWMSに自動で入力する方法はないかと多くの相談が寄せられてきました。
※WMS・・・倉庫管理システム(WarehouseManagementSystem)の略称

そこで、今回はそんな悩みを解決するRPAとFAX-OCRを活用した物流オペレーションの自動化についてご紹介したいと思います。
RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略称であり、事務処理などをはじめとするホワイトカラー業務をロボットが自動で操作して、効率化を図ることです。
ロボットと言っても、実際にはソフトウェアです。Excel等のマクロ自動実行の進化版と考えて頂くとイメージし易いかもしれません。

FAX-OCRは昔からある技術ですが、最近はOCRの識字率が格段に上がってきています。
またAI(人工知能)による手書き文字をスキャンできるOCRも登場し始めています。
受信されたFAX帳票をOCRスキャンし、印字されている文字をテキスト変換する技術です。
※但し手書きOCRについてはまだまだ未解決の課題が多く残されているため、特定条件下でなければ実運用は難しいです。

 

●RPAとFAX-OCRでWMSに指示を自動登録

 

さて、それでは早速具体的なイメージを見ていきましょう。ここではINTER-STOCKというWMSで解説します。
荷主から出荷依頼がFAXで送信されるオペレーションを例にします。
荷主からFAXで出荷指示が物流事業者に送信され、FAXを受信するとその内容をINTER-STOCKに手入力します。
その後、ピッキングリストをINTER-STOCKから出力して出荷作業に移行します。
例えFAXで受信するデータが日に数十件だとしても、その為に専任の事務処理担当者が必ず一人必要になります。
また手入力による作業の為、入力ミスや入力忘れも発生する可能性が高くなります。

 

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続いてRPAとFAX-OCRを利用した自動化のオペレーションを見ていきましょう。
今回利用するRPAは、株式会社タイタンコミュニケーションズ社ミラロボです。
日本国内だけでも数百のRPAが存在していると言われていますが、そのどれもが高額であり、操作に関してもプログラミング知識が必要であったり、海外製品に関しては日本語表記でないものもあり中小企業が気軽に導入するには少々ハードルが高いものでした。
しかし、ミラロボは安価且つ操作性に優れ、中小企業が手軽に導入できるRPAとして注目を集めています。

荷主からFAXで出荷指示を受信するとまずFAX-OCRで原稿を自動スキャンし、テキストに変換します。
ミラロボがそのテキストをコピー&ペーストしながら、INTER-SOTCKを起動し、出荷指示を入力していきます。
処理スピードは1件あたり10秒~20秒程度で決して早くはありませんが、全て自動実行で行われる為、人の手を介在しません。

 

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実際のオペレーション動画を作成しましたので、是非ご参考下さい。

 

ミラロボ

 

●RPAとFAX-OCR活用時の注意事項

 

RPAとFAX-OCRを活用するとこんなにも便利なソリューションを構築することが可能になるのですが、導入する際にいくつか
注意点があります。3点ほど以下にご紹介します。

 

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1.チェックを簡素化する

FAX-OCRのスキャニング精度は100%ではありません。
活字であっても稀に誤って認識してしまうことがあります。そのような場合に誤ったままWMSに入出荷指示データの登録を行ってしまうケースを極力無くさなければなりません。
かといって人が全てチェックしていたのでは、自動化にはなりません。人のチェックは出来るだけ簡素化する仕組みが必要です。
品番の誤認識であれば、WMSの品目マスタと照合することでチェック出来ます。
指示数量のチェックは、WMSの過去の実績データを参考にすることで、ある程度のチェックをすることが可能です。
対象の取引先の過去の実績数量を参考にすることで、イレギュラー値を判別し、怪しい場合は警告リストを出力するといった方法です。
作業者は警告リストが出力されたデータに対してのみ、FAX-OCRによる誤認識がないかチェックします。

 

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この辺りのチェック機能については今後AI(人口知能)を活用したソリューションが主流になるとは思いますが、WMS側でいくつかのチェックロジックをいれるだけでも十分に機能します。

こうしたイレギュラー時の対応方法を明確にし、人的なチェックを極力簡素化することが大切です。
また取引先から受信されるFAX帳票のレイアウトが変わる際の対応方法などもルールを明確にしておくと良いでしょう。

 

2.帳票定義の設定が煩雑

FAX-OCRは導入してすぐに利用というわけにはいきません。
最初にスキャニングする帳票の全レイアウト定義をFAX-OCR側に設定させなければなりません。
実はこの設定作業が意外に大変なのです。また最初に設定しても、新らたな取引先や帳票が発生すれば都度レイアウト定義の設定が必要になります。
但し、プログラミングの知識等は必要ないので、ユーザー側で頑張って設定することも可能です。
帳票の種類が不特定であったり、コロコロ変わるような場合はFAX-OCRは不向きと言えます。

 

3.対象業務を絞り込む

RPAは大変便利ですが、なんでもかんでもRPA化をしようとすると思わぬところでつまづいてしまいます。
まずはしっかりと対象業務を絞り込むことが重要です。FAX-OCRについても、事前に取引先との協議が必要です。
FAX-OCRを活用する旨を伝えた上で、手書き等のFAXがあれば、活字に変えて頂く等の協力を要請します。
また本来であれば、極力FAXのやり取りは撤廃していくことが望ましいので、FAX在りきで検討を進めるのではなく、上流、下流のシステムによる対応を検討し、どうしてもFAXで受信が必要な業務についてのみ利用するようにしましょう。

 

●まとめ

 

いかがだったでしょうか。物流オペレーションにおけるFAXデータのデジタル化はどこの企業も頭を悩ませています。
精度が高まりつつあるOCRと、事務処理を人に代わって操作してくれるRPAを組み合わせることで、物流オペレーションを自動化することが可能になります。
最近でもこうしたソリューションを導入する際によく費用対効果を気にされる企業が少なくありません。
しかし、今後物流オペレーションの自動化、省人化は必須要件であって、費用対効果云々で検討している場合ではありません。
今後まだまだ労働力が不足し、人件費が高騰していきますので、現状だけを見て費用対効果を算出すること自体ほぼ無意味です。
コストではなく、どれだけ自動化出来るかという視点でIT化、デジタル化に取り組まなければならない時が来ているのです。

 

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