多くの倉庫管理システム(WMS)の運用方法を私が間違っていると思う理由|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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多くの倉庫管理システム(WMS)の運用方法を私が間違っていると思う理由

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 画像素材:Graphs/PIXTA

<目次>

1.WMS導入後に発生する運用問題

2.硬直化する倉庫管理システム

3.第三者の視点で「硬直化型」から「成長戦略型」へ

4.監査の対象と監査方法

 


1.WMS導入後に発生する運用問題

 

企業にとって、倉庫管理システム(WMS)あるいは在庫管理システム(IMS)といった物流システムは、既に多くの企業
が導入して当たり前のものになっています。しかし、自社のWMSに満足していないというような声も多く聴きます。

実際に私たちにご相談頂く案件でも、自社のWMSに満足していないのでそっくりやり替えたいといったご相談の割合
も少なくありません。しかし、詳しく理由を聞いてみると、実はWMSの問題というよりも運用方法に原因がある場合
がほとんです。

企業にとって、WMSは物流の足回りを支援する重要なシステムでありながら、財務や販売などの基幹システムと比べ
ると、戦略性や運用方法の考え方の点で大きく遅れをとっているようにも感じます。

皆さんも「WMSベンダーの営業が提案する内容のままで導入したにも関わらず成果が出ていない」と悩んでいませんか?
WMSは導入してからが本当の改革の始まりです。導入はその一歩にしか過ぎません。

本稿では、倉庫管理システム(WMS)の運用に関して私が日頃感じている問題点を少しまとめてみました。


2.硬直化する倉庫管理システム

 

倉庫管理システムを導入する多くの企業は、導入費用、スケジュール等の必須要件から、システムに必要な機能要件を
整理し、なんとか本稼働にこぎ着けます。しかし、システムローンチ後に安定稼働まで事が運ぶと、あとの運用は情報シ
ステム部門、ベンダーに委ねられます。

自社の物流を支援する倉庫管理システム(WMS)や在庫を管理する在庫管理システム(IMS)は、そのシステムリスクを第三者
の視点で網羅的にチェックされることがほとんどありません。

倉庫管理システム導入後に、計画的に第三者視点でシステムが監査されるているのは一部の企業だけでしょう。

しかし、私は経営者やシステムの利用者による第三者がWMSやIMSを監査する有効性を感じるからこそ、今後はそうした
視点を多くの企業が広げていってもらえたらと思っています。

ベンダーや情報システム部門の視点だけに基づくと、目に見えない様々なリスクをシステムが抱えることになります。
第三者から網羅的な視点でシステムをチェックしてもらったり、モニタリングしてもらったりすることは、システムの
硬直化を防ぎ、リスクを抑えるために大変有効です。

こうしたチェック体制がないと、現場の利用ユーザーは不満を抱えたまま我慢してシステムを利用することになります。
現場の利用ユーザーは稼働当初はそうした不満を情報システムやベンダーに課題としてあげますが、だんだんと不満を
言わなくなってきます。主な理由は以下の3つだと考えています。

1.課題であげると追加費用がかかるので、上司に嫌がられる
2.今となっては、そんなに大きな問題ではないと思っている
3.ベンダーや情報システムとのやり取りが面倒

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経営者はシステムが本稼働すると、すっかり安心して無関心になります。情報システム部門は日々のメンテナンスや
運用に振り回されて現場の意見を聞いたり、新たな提案をする暇がなくなります。ベンダーは不具合やシステムトラ
ブルがあった場合にのみ対応を行う保険としてしか機能しなくなります。こうして、倉庫管理システムは導入当時の
まま硬直化が続き、効果性がどんどん低くなっていくのです。


3.第三者の視点で「硬直化型」から「成長戦略型」へ

 

従来の監査スキームでは、まず必須要件をチェックします。倉庫管理システムを導入する際に、次のようなリスクが
経営者や情報システムから指摘されると思います。

1.システムが運用にのらないリスク
2.稼働が遅れるリスク
3.開発予算がオーバーするリスク

続いて、機能の要件についてチェックされます。ハードウェアの要件や現場に必要な機能が細かくチェックされます。
これらの指摘は、言い換えるとベンダーや情報システム部門がシステム導入プロジェクトを成功させるためのものであり、
システムの効果性を高めるためのものではありません。

本来はこれらに加えて、経営者の視点、現場ユーザーの視点に基づく様々なリスクについて検討がされるべきです。
例えば、経営者の視点からWMSを監査した結果を想定すると、「想定した投資効果が得られているか」、「WMSのデータ
を活用して、経営との融合が図れているか」、「WMSを利用した新たなサービスを顧客に提案出来ているか」などが考え
られます。こうした拡張要件をローンチ後に定期的にチェックする監査体制が重要になります。

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現場の利用ユーザー視点では、「UIの改善が必要な処理がないか」、「WMSの機能で利用されていない機能がないか」、
「認知されていない機能がないか」、「データが貯まって処理スピードが落ちている個所はないか」などのリスクを
チェックします。

こうした視点を織り交ぜて、WMSを監査すると、例えば次のような指摘になると想像できます。

「システム導入前の在庫削減の目標値に達していない。在庫精緻化には成功したが、削減に至っていない理由は何か。」
「利用率が低い機能がある。なぜ利用率が低いのかについて分析し、利用率を上げていく方法の検討が必要だ。」

従来のシステム監査では、システムを提供する視点でリスクを洗い出すのが一般的でした。経営者や利用者の視点を入れて
ローンチ後に定期的に監査されるケースは稀です。

ところが今や、WMSの監査はシステム導入前のチェックだけでは十分ではありません。物流を取り巻く経営環境の変化は
目覚ましく、数ヶ月単位で現場のオペレーション環境は変わっています。経営者、サービス利用者、情報システム部門、
ベンダーといった幅広い視点に基づき、WMSの有効性、効果性を定期的に監査して頂くことで、「硬直化」から「成長戦略型」
へと変貌を遂げることができるのです。

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4.監査の対象と監査方法

 

では、最後にWMSを監査する際のチェック対象項目と監査方法について簡単にご説明して終わりたいと思います。監査対象に
ついては、細かく挙げると沢山ありますが、主に「効果性」「効率性」「利用状況」「稼働状況」の4つに分類して対象項目
を整理すると良いでしょう(下図)

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監査を行う対象項目を整理出来たら、監査の方法について検討します。まずは監査計画として、検証する対象を絞ります。
「まずは利用状況の検証から始めよう」といった具合に対象を絞り込み、検証する期間を定めます。

続いて検証対象の実地調査を行います。実地調査については、誰が行うのかを明確にしておきましょう。検証期間が終わる
と、調査報告書をまとめて監査報告会を実施します。その後、改善が必要な個所については対策案と予算案をまとめて、
対策を実行に移していきます。

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以上の手順に沿って自社のWMSの監査を行い、変化に対応しながら成長し続けるシステムを目指して頂きたいと思います。

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