デジタル技術が生み出すスピード経営 ~WMSの導入とトップの役割~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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デジタル技術が生み出すスピード経営 ~WMSの導入とトップの役割~

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 画像素材:bankrx /PIXTA

<目次>

1.何をしたいかの経営意思を明確にする

2.業務の標準化を基本とし、例外処理を検討する

3.WMSパッケージはオープンソース

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1.何をしたいかの経営意思を明確にする

 

倉庫管理システム(WMS)」とは、物流領域のマネジメント・スタイルを変革し、リアルタイム経営を目指す経営コンセプトを実現するためのシステムです。WMSを構成する要素は大きく2つあります。1つはモノの流れを管理するための「物流作業システム」としての役割、もう一つは情報を管理するための物流情報システムとしての役割です。物流作業システムが業務支援型であるのに対して、物流情報システムは、経営支援型であると言えます。

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「WMSパッケージ」は、そのソフトウェアの短期導入を狙って採用されることになります。WMSパッケージを導入する上で、トップが経営意思を明確にすることが重要です。その理由は、経営者はリアルタイム経営を実現するための経営支援ツールを期待しますが、WMSを導入する部署は、業務支援ツールとして捉えるので議論がかみ合わないのです。これによって、導入の遅れや計画の見直しを余儀なくされるだけではなく、最悪の場合はシステムそのものが利用できないといったことになります。往々にしてよくあるケースが、トップは理想を形にしようとし、現場は今現在の実作業に合わせようとします。例えば、以前こんなケースがありました。

とある製造メーカーのMWS導入をご支援させて頂いたときの話です。社長が言うには、WMS導入の第一目的は、現品をリアルタイム管理することによる在庫精度の向上でした。「高い買い物をするのだから、必ず在庫差異を0%にするんだ」と社長は私たちベンダーに気合を入れます。ほどなくして要件定義がスタートすると、現場から入荷品の1品1品にバーコードを貼り付けることなど出来ないという意見が出ました。「パレット上で品目混在、ロット混在がないのであれば、パレット単位でバーコードを貼り付けしましょう」と提案し、その案で現場の方に納得を頂いたまでは良かったのですが・・・。後日社長から呼び出しがあり、「どうしてそのような運用で提案するのか!」とお叱りを受けました。一品一品にちゃんとバーコードを貼らないと、正しい現品管理にならないではないかというのが社長の意見です。

この場合、どちらの意見もそれぞれの理屈があり、間違ってはいません。しかし、両方を実現することはできないので、どちらかの理屈
は妥協する必要があります。しかし、いずれにしても1品1品にバーコードを貼り付けたからといって在庫差異がゼロになるわけではありません。WMSパッケージを導入すると、自然に在庫差異がなくなる、在庫が削減されると考える経営者もいますが、実際WMSは何もしてはくれません。WMSパッケージを導入すれば、直ちに業務改革が実現できるわけではありません。過度な期待は禁物です。経営者の意思で新しい物流管理スタイルを導入しなければ、今までと何も変わらないのです。

まずは経営トップが経営意思を明確にし、これをやらないと生き残れないという問題意識を、全社員と共有することが必要です。そして、企業戦略を達成しようとする明確な目的意識をもち、いったん導入すると決めたら、トップのリーダーシップで強力に推進することです。
これまでのような、部分的な改善施策ですんだ時代は終わりました。これからは、全社的な物流最適化を追求するトップの姿勢が何よりもも必要です。物流部門長や情報システムの担当部署にも、WMSの導入を成功させる権限はありません。なぜならば、全社的な最適化による業務改革が目的である以上、部門長の権限を越えるからです。


2.業務の標準化を基本とし、例外処理を検討する

 

業務を標準化することができれば、1人が管理できる範囲が飛躍的に広がります。同時に経営意思決定のスピードを早めることにもつながります。そのために、WMSパッケージを導入して、そこに組み込まれている多種多様な標準機能を有効活用し、自社にとって最適な運用方法を模索しながら導入を進めることが必要です。WMS導入の成否は、例外処理をどうするかによって決まるといっても過言ではありません。
例外処理には切り捨ててもよいものと、切り捨てると死活問題となるものがあります。これらを区別して、全社に最適なシステムを構築して頂きたいと思います。

WMSパッケージ導入のポイントは、いかにしてカスタマイズを減らすかにある、とよく言われます。しかし、これは決してカスタマイズが悪であるというわけではありません。システム導入の目的を果たすために必要なカスタマイズであるかどうかは十分に検討を行う必要があります。

カスタマイズを行えば、コスト増大、導入期間の延長、メンテナンス費用の増大といったデメリットが発生します。それを踏まえた上で、本当に必要な機能であればカスタマイズを行います。よく「現場の使い勝手を優先」という話を聞きますが、これは一見正しいようで実は誤りです。

WMSの導入には相当なコストと時間がかかります。「現場の使い勝手」を良くするためにそれだけの投資は行えません。実際にシステムは現場の方に利用されなければ意味がありません。よって、使う方の勝手を優先したい気持ちはすごく分かります。しかし、たとえ使い勝手が悪くなっても、それが全社の標準化につながり、1人当たりの管理範囲が拡大し、経営の意思決定がスムーズになるのであれば、そちらを優先すべきです。
優先すべきは、「現場の使い勝手」ではなく、「企業の経営効率を高める」ことです。

WMSパッケージは、現場の使い勝手を改善するための道具ではありません。企業の経営効率を高め、顧客満足を追求するためのツールです。
現場の使い勝手を無視するということではありません。そこ点については常に十分な配慮が必要です。しかし、使い勝手が悪いから使わないというのは単なるわがままです。企業のために犠牲を払うことも時には必要です。全体として何が最適化を常に念頭に置いた上で、全社員がシステム導入に関わる雰囲気の醸成は、トップの重要な役割でもあるのです。


3.WMSパッケージはオープンソース

 

物流領域は、DXの波、さらにコロナの影響で常に変化が求められています。しかし、システム開発のスピードが追いついていないのが実状です。
また自社のIT部門は、システム開発をベンダーの開発力やパケージ製品に頼り、業務の大半の時間を既存システムの運用保守に費やしています。
結果として、自社のIT部門が事業部門の悩みを解決出来なかったり、経営トップの経営改革に最適なIT提案が出来ないといったことがDXの課題として浮き彫りになっています。

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WMSでは、倉庫の統合、拠点分割、M&A、物流会社との契約変更などなど、実に様々な変化に対応することが求められます。このような状況に柔軟に対応するには、完全に開発ベンダーの世界に閉ざされたパッケージシステムを導入することは、物流DXの足かせになりかねません。自社のIT部門でもソースが見て触れ、事業変化にシステムを追従させるための体制構築が必要です。そのような理由から、弊社では、WMSパッケージのソースをユーザー企業に完全に公開しています。また単に公開するだけではなく、ユーザー企業で内製化できるための支援サービスも行っております。
自社で全てをやるというよりも、ベンダー企業と共同で開発を行えるような体制が理想です。そうすることで、IT部門が自社の悩みを把握したり、解決する能力を養うことが出来ます。また常に開発する力を持っておくことで、スピーティな経営の意思決定をITで実行する力を持つことが出来るようになります。

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