“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~プロジェクトの進め方~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~プロジェクトの進め方~

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 画像素材:SoutaBank/PIXTA

<目次>

1.人手不足で庫内作業に黄信号

2.誰と手を組むのか?

3.提案の評価の仕方

4.スケジュールの作成の仕方

5.本稼働後の運用と保守

 

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1.人手不足で庫内作業に黄信号

 

人手不足で多くの物流センターの庫内作業の運営に黄信号がともっています。事業の継続を担保するには、IT技術と自動化設備を活用して属人的な作業を極力ゼロに近づけていくしか方法はありません。しかし、物流センター内にIT技術やマテハン設備を適切にエンジニアリングできる人材などいません。一体どのように自動化プロジェクトを進めていけばよいのでしょうか?どこまで自動化すれば、今後の人手不足に対応できるのでしょうか?どこまで投資すれば・・・。悩みは尽きませんね。本稿では、物流センターを自動化するプロジェクトの進め方について、要諦を解説します。

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2.誰と手を組むのか?

 

物流センターを自動化するためのプロジェクトを社内で立ち上げると同時に、開発を依頼するベンダーの選定を行います。自社の物流センターの「在るべき姿」を5年先、10年先を見据えて検討します。「自社の物流をどうしたいのか」、これは誰と手を組むのかを決める最も重要な要素になります。物流センターはバリューチェーンに欠くことのできない経営インフラですから、自社の事業のコア戦略を起点として、その役割と機能を定義しなければなりません。ただ、モノを入れて、出すというだけで考えてはいけません。

さらには、このプロジェクトを機会に社内全体の物流への関心を高めて、全員で物流について考えるようにしたいです。誰と手を組むのかは、とても重要です。大手のベンダーだから上手くいくという単純な話ではありません。成果はその会社によってもたらされるというよりも、多くの場合、担当者個人もしくはチームに依存します。いくら実績のある大手ベンダー企業であっても、担当者の能力が低いとプロジェクト全体で影響が出ます。同じ企業でも担当者によってかなり幅があります。ベンダーを選定する際は、その企業のネームバリューや実績よりも、自社を担当するPMやメインのエンジニアの仕事の姿勢や考え方を注視して、選択するように心がけましょう。

それと同時に、ベンダーに依存するのではなく、社内に物流をエンジニアリングできる人材を育成、確保することが不可欠です。


3.提案の評価の仕方

 

ベンダーを選定する際、5社から10社程度でコンペを行うことが多いです。まずはベンダー各社の見積書・提案書を書類審査して3社から5社程度に絞り込みます。場合によっては、提案されたシステムや設備を導入した現場を見学して、ユーザーの声を聴いて提案内容と稼働状況を比較します。その後、担当役員が出席する評価検討会を開催します。ROIやEVAを評価し、どのベンダーを選定するのか、もしくは導入を先送りにするのか、あるいは事業継続を重視して導入に踏み切るか、経営判断が問われるところになります。

提案を評価する際は、導入後の処理能力と想定される生産性の側面から比較した表を作成し、損益計算書における比較表、さらにはEVA(経済的付加価値)における比較表を作成して比較することをお勧めします。これらはベンダーに丸投げするのではなく、自社で作成することで人材の育成にもつながります。


4.スケジュールの作成の仕方

 

プロジェクトのスケジュールは、「企画」「ベンダー選定」「設計」「施工・稼働」の大きく4期に分けて考えます。第一期の企画では、提案依頼書(RFP)を作成して、第二期のベンダー選定でコンペを実施して発注先のベンダーを選びます。提案依頼書の作成方法については、
“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~RFPの作成手順~をご参考ください。

第三期の設計では、プロジェクトマネジメントが必要になります。プロジェクトリーダーが中心となって専門分野のチームを管理します。ベンダーと実行内容を確認し、基本設計をまとめていきます。このようなプロジェクトは時間がかかり、納期もあります。納品までに6ヶ月以上かかるのが普通です。稼働予定日から逆算してPERT法に基づいてスケジュール化するようにしましょう。第四期の施工・稼働段階では、プロジェクトリーダーの情報量は格段に増えます。基本計画と照らして、不測の事態は起きていないか、計画との差異が発生した場合にはその対策を常にチームと検討します。本稼働については、当初の日付の設定は社内外のしがらみが多い中で決められているため、現実的に厳しい場合が多いです。無理やりその本稼働日に合わせて稼働を急ぐのではなく、稼働判定会議をプロジェクトメンバーとベンダー含めて協議し、延期が必要であれば早め延期を決定し周知することが大切です。

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5.本稼働後の運用と保守

 

事前に操作教育やシステムテストを繰り返していても、本稼働直後は必ずいくつかのトラブルに見舞われます。テストでは発見し切れなかったバグ(システム不具合)や、オペレーションミスによるトラブルはつきものと考えましょう。たまに「システムなのに計算違いがあるのはおかしい」と叱られる方もいますが、システムも人が作ったものなので、不具合はゼロではありません。WMSなども、カスタマイズしたソースコードの1文字が違うだけで、全く違った動きになります。全てのケースを想定してテストしていれば、不具合も発生しないかもしれませんが、すべてのケースを想定すること自体非常に難しいし、そんなことをしていたら、いつまでたっても稼働できません。稼働当初は7割~8割の機能が正常に動作すればせいぜいです。その後、発生した不具合や課題をベンダーと一緒になって対策していって、完成度を高めていけばよいでしょう。

またシステムや設備の保守費用はベンダーを判定する時点で評価項目に加えておき、事前に予算に組み込んでおきましょう。途中で契約を変更して保守料金を引き下げたり、保守契約を止めてしまったりする会社も散見されますが、後で必ずトラブルにつながります。結局、現場の首を絞めることになるので避けた方がよいでしょう。

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