“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~管理階層とリスク管理~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~管理階層とリスク管理~

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 画像素材:metamorworks/PIXTA

<目次>

1.ロジスティクス管理の管理階層

2.ロジスティクス管理の組織構造

3.リスクマネジメントの方法

4.ロジスティクスのリスクとは?

 

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1.ロジスティクス管理の管理階層

 

物流部門では、生産したモノを最終顧客に納品するまでを管理します。そして今日では、これらに加え、ロジスティクスとして市場動向に俊敏に対応する商品供給の観点から、資材調達から生産、流通、販売に至る一連の供給管理を求められます。ロジスティクスという用語の普及とともに、管理しなければならない対象は広範にわたり、それを実行するのは容易ではありません。そこで、管理を簡単にするために階層を設けて管理する方法がとられています。ロジスティクスを管理する場合、管理階層は「戦略管理」「運営管理」「作業管理」の3階層に分けて考えます。

1.戦略管理階層
「戦略管理階層」では、中長期的な視点からロジスティクス全体の計画を立案します。経営戦略、マーケティング戦略、流通政策がまず立案され、これらを実現するためにロジスティクスはどう在るべきか(To be)を見定めます。この戦略階層では、資材調達・生産・流通・販売などの各部門を、企業価値向上にベクトルを合わせるという調整機能をもつことが必要となります。これは経営トップのスタッフ的な役割を担うということです。

2.運営管理階層
「運営管理階層」では、戦略管理階層から指示されたこと、または現場のボトムアップにより行うべきと判断したことから計画を立案します。また下の階層である作業管理階層からの結果報告や実施結果から、問題点を整理して改善を行います。その結果を一つ上の戦略管理階層に報告します。運営管理階層は戦略管理階層と作業管理階層の間に位置するため、ロジスティクス管理において中枢機能といえます。

3.作業管理階層
「作業管理階層」では、運営管理階層から指示されたこと、および日常業務を処理するために毎月すべきことから、月別の計画を立案します。この階層はコストに直結しています。日々、要求される品質を保ちながら、発生するコストを低減することが求められるため、予算統制される典型的なライン型組織で構成しましょう。

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2.ロジスティクス管理の組織構造

 

上記の3つのそれぞれの階層は、まったく異なる組織に位置づけることが可能です。例えば、「戦略管理」は経営企画の中に、「運営管理」と「作業管理」は営業部門の中にといった形です。ただし、このように組織した場合、ロジスティクス管理と倉庫業務や輸送業務の間の連携が弱くなることが懸念されます。

急速に進むグローバリゼーションに伴い、大手企業ではその企業規模、事業の種類、製造・販売地域の拡大が急速に進みました。その一方で企業間競争は激化し、消費市場の急速な変化に対応するために、ロジスティクスの変化対応力が求められるようになりました。したがって、物流実務と関連組織間の連携をもっと強める必要が生じました。そこで経営トップ直結のポジションに戦略管理を置いて、その下位組織として運営管理、作業管理を設けるのが一般的となりました。


3.リスクマネジメントの方法

 

楽天モバイルから基地局設置業務を受託し、業績が急拡大していた日本ロジステック(東京都千代田区、売上高405億円)が不正を行い、物流業界での大型倒産が話題となりました。このような企業による不正取引や粉飾決算といった不祥事を防止するため、一定規模以上の企業は、2008年以降内部統制の構築が義務づけられました。内部統制とは、業務の有効性および効率性、財務報告の信頼性、事業活動にかかわる法令等の遵守、資産の保全の4つの目的が達成されていることの保証を得るためのプロセスのことです。

内部統制は、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリングおよび情報技術への対応の6つで構成されます。内部統制のシステムを社内に構築するには、リスクを洗い出し、それらへの対応方法を検討するだけでなく、リスク抑制の観点で社内環境整備が必要になります。また、リスク発生を早期に発見するための監視機能(モニタリング・システム)の構築も必要になります。

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4.ロジスティクスのリスクとは?

 

“リスク”とは、組織目標の達成を阻害する要因のことです。企業の経営活動において、考えられるリスクは沢山あります。それらをあらかじめ洗い出し、事前に対応方法を定めることによって、経営の健全性を担保します。米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO)のリスクマネジメントにおけるフレームワークでは、企業におけるリスクを下表のように分類しています。

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(出典:COSO ERM 2004年資料より)

ロジスティクスにおけるリスクというと、大地震やそれに対応したBCP(事業継続計画)を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、リスクはそればかりではありません。何か問題が発生するたびに「想定外」という言葉が聞かれますが、それはリスク管理が機能していない証拠でもあります。リスク管理が機能しない要因として、リスクについての認識が甘いという点があげられます。どのようなリスクが存在するのか、緻密な検討が必要です。リスクはさまざまな個所に存在し、立場によって対象とする内容や範囲が異なります。リスクは、漏れなく洗い出すことが望ましいですが、実際にはそれは困難です。起こり得るトラブルを、想像力を働かせて大小に関わらず抽出することが第一歩となります。続いて、リスクを適切に識別します。組織目標の達成に影響を与える可能性のある事象を把握し、そのなかにどのようなリスクがあるのかを特定します。リスクは、全社的なレベルから業務プロセスのレベルまで、さまざまな段階で存在しますので、各段階において適切にリスクを識別することが重要になります。

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