“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~業種別の在庫管理を知る~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~業種別の在庫管理を知る~

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 画像素材:Jake Images/PIXTA

<目次>
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1.物流が在庫管理の舵を握る時代

2.川下(小売業)で求められる在庫管理

3.中間(卸売業)で求められる在庫管理

3.川下(製造業)で求められる在庫管理

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1.物流が在庫管理の舵を握る時代

 

物流センター運営の管理レベルを語る上で、「在庫管理」は欠かせません。多くの企業は、商品を製造したり、仕入れたりしながらその商品を販売し、元手を回収することで利益を得ています。回収された元手と利益を使って、また商品を製造したり仕入れたりしながら販売し、再び元手を回収して利益を得ます。商品を販売することを生業としている企業は日々これを繰り返しています。

在庫管理の目的は、欠品がなく過剰でもない適正量に在庫を維持・管理することです。そのため、市場の需要にいかに柔軟に対応させる
かというのがポイントになります。物の入りと出を適正に管理することだけでは、ただの「商品管理」です。(※保管管理とも言います。)物流センターの機能として、高いレベルで商品管理を行うことは最低条件です。ミスなく入荷、出荷の作業を行うことで、在庫の狂いを無くすことが求められます。そして、その次のステップとして、「在庫管理」を目指しましょう。荷主から預かる商品をただ保管管理するだけではなく、適正量に維持・管理する仕組みを持つのです。その為には在庫の補充(発注)をコントロールするしかありません。在庫管理を理解する上で、最も重要なことは、コントロールできるのは「入」しかない、ということを理解することです。「出」はコントロールできません。「出」は市場の需要なので、そこをコントロールすることは、どんな企業でも不可能です。

在庫管理は、物流からロジスティクスへと管理概念が進化したことによって、最も大きく変化した領域でもあります。ロジスティクスで求められる在庫管理は、言い換えれば「需給管理」と言い換えることもできるでしょう。物流部門における在庫に関する裁量権を拡大することで、工場が作り過ぎた在庫を勝手に送り込んできたり、調達部門がリベート欲しさに大量に購入したり、営業部門が勝手に特売を打って欠品をさせたりといったことを防ぐのです。しかし、物流部門は「商品管理」には長けていても、「需給管理」についての知識は不足しています。「それは販売部門の仕事でしょ」と我関せずです。ロジスティクスの管理概念においては、物流部門が在庫管理の知識を学び、モノの入りをコントロールする舵を握ることが求められるのです。

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2.川下(小売業)で求められる在庫管理

 

一言で在庫管理と言っても、荷主企業のサプライチェーンにおけるポジションによって、求められることが違ってきます。サプライチェーンを川上、中間、川下の3つに分けて解説します。まず、サプライチェーンのもっとも下流に位置するのが、直接消費者に商品を販売する小売業者です。小売業における在庫管理は、扱う商材、規模によってさまざまです。アパレルなどに見られる製造小売りの場合は、製造はメーカー、配送センターは卸の在庫管理に準じます。小売業者では、消費者のニーズの多様化により少量多品種の品揃えに加え、商品のライフサイクルも短くなってきているため、緻密な商品分析によるバイイングが求められます。

大量生産大量消費の時代はとうの昔の話。少子高齢化、GDPの減退、ECの躍進、消費者行動の変化など、モノがあまっている今、需給管理はますます難しさを増しています。消費者が望む商品を、過不足なく適正な水準で管理したいと一番強く望んでいるのは小売業者といってもよいでしょう。

小売業者にとっては、売れる商品を沢山在庫し、売れない商品は極力見切りをつけて在庫をなるべく持たないようにすることが利益を上げるための基本原則です。また小売業者はバックヤードの倉庫スペースもせまく、商品の陳列棚という限られたスペースにどれだけ高回転の商品を並べられるかが勝負です。それを実現するには、個々の商品について、売れているのか、売れていないのかをタイムリーに把握できる仕組みが不可欠です。在庫の動きを単品で追って在庫回転数を計算し、粗利率との掛け算により「交叉比率」を出すことで、その店舗の利益にどの商品がどれだけ貢献しているかを把握できるようにしましょう。

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3.中間(卸売業)で求められる在庫管理

 

卸売業者の在庫管理の特徴は、川下の小売業者と川上の製造業者(メーカー)に挟まれ、上と下の状況を把握しつつ、在庫を適切に管理しなければならない点です。サプライチェーンマネジメント(SCM)の観点で言えば、チェーン全体のモノの流れを効率的にするかどうかは、卸売業者の需給管理能力にかかっていると言っても過言ではありません。特に日本は欧米に比べ、中間流通が多いのでその果たす役割は非常に大きいと言えます。

卸売業者の最も重要な能力の一つが「マーチャンダイジング」です。業界用語ではMDと略して使われます。これは、どのターゲットに、どんな商品を、どれだけの品揃えで、いくらで、どうやって販売するかを決めることです。MDに基づいて、商品を仕入れ、在庫し、小売業者に納品することで、小売業者の売上に貢献するのが卸売業者の存在価値です。しかし、この業界の課題の一つに、1人当たりの管理アイテムが多すぎるというのがあります。1人で1千商品以上の在庫をチェックし、仕入れしている事例もあります。当然ながら、きめ細かな商品の動きに目が届かず、過剰在庫や欠品を招きやすいです。一般に担当者1人できめ細かく発注量を決定できるのは200~300アイテムが限界です。従ってアイテム数に応じてMD担当者の人数を増やすことが有効な対策となりますが、そう簡単に人を増やすことも難しいのが実状です。AI(人工知能)などを利用した発注管理システムなどを導入することで、最小の人員で適切なMDを実現することも可能です。


4.川下(製造業)で求められる在庫管理

 

完成済み製品、あるいは仕入れた部品や原料などが製造業者における在庫になります。ここで非常に重要なのは、製造業における在庫は、小売業と違い、生産活動と市場における需要のギャップを埋めるための在庫であるという点です。サプライチェーンの川上に位置する製造業者の場合、消費者に近い川下の小売業者から、中間の卸売業者をとおして販売の情報が伝わってくるため、どうしても実需要に疎くなりがちです。工場が必要以上に在庫を作り過ぎてしまうのはそのためです。最終消費者の需要が現在どちらの方向を向いているのか、中間・川下の各企業と協力して常に情報収集する姿勢と仕組みを持つことが、適正な在庫を維持するために非常に重要になります。

最近ではD2C企業が急増しています。D2CとはDirect to Consumerのことで、メーカーが中間流通を介さず自社のECサイトなどを通じ、商品を直接消費者に販売するビジネスモデルのことです。彼らは自分たちで製造した商品を自らの手で販売するため、ダイレクトに消費者のニーズや需要を把握することができます。よって商品開発だけではなく、在庫管理の面でも非常に有利であり、高収益を上げている企業が多いのもそうした理由からです。

以上、簡単に業界別に求められる在庫管理のニーズについて解説しました。物流の立場でロジスティクスをサービスとして提供することを目指すのであれば、商品管理(保管管理)の枠を超えて、在庫管理(需給管理)を提案できる企業を目指しましょう。その為には、荷主企業の業種に、どのような在庫管理が求められるのか、その基本をしっかりと理解することが最初の第一歩となるのです。

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