“今すぐ実務に役立つ” 物流センター運営の教科書 ~物流サービス管理~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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"今すぐ実務に役立つ" 物流センター運営の教科書 ~物流サービス管理~

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 画像素材:tiquitaca/PIXTA

<目次>

1.マーケットインの発想で基本を見直そう

2.物流サービスを理解するための2つのポイント

3.物流サービスをPDCAで管理しよう

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1.マーケットインの発想で基本を見直そう

 

物流センターの運営において、物流サービスを管理するということは、荷主に対する顧客サービスの重要な要素になり、顧客満足を大きく左右する重要な要素です。まずはそのことをしっかりと理解した上で、物流サービスを適切に管理するためのPDCAサイクルを学び、実行しましょう。とは言っても、物流業界の内情に目を向ければ、この業界は危機的状態にあります。業界の99%を占める中小企業は苦しい経営が続き、疲弊の色が増し、物流サービスの安定供給に黄色信号が灯っています。顧客満足、荷主満足に繋がる物流サービスの重要さを頭では理解しつつも、物流サービスを管理している余裕などない、というのが多くの企業の本音ではないでしょうか。

しかし、現状を打開しようと本気で思うのであれば、まずは思考停止に陥らないことです。衰退を防ぎ、物流サービスの安定供給を実現
するには、自らが置かれた状況を知り、物流センターが今やるべきことは何なのかを明らかにして、一つずつ実践していくしかありません。

物流サービスを管理する上で、まず行うことは自社のポジションを理解し、自らが抱えている問題や顧客である荷主が抱えている問題を
把握して、やるべきことを整理していくことです。厳しい時だからこそ、マーケットインの発想で自らの立ち位置を知ることは、とても
重要なことです。残念ながら疲弊している物流の多くは、このようなマーケットインの発想がありません。自社がどのポジションに立ち、自社の顧客がどんな問題を抱えているのかを掴むことでしか、物流チキンレースから脱する方法は無いと考えて下さい。

物流サービスを考える上で、一つ注意が必要な点があります。物流サービスの「平均値」は一部の企業によって高く引き上げられてしま
っているため、中小企業の物流センターがいきなりそこを目指すとかえって現場が疲弊してしまいます。まずは物流サービスの基本をし
っかりと定め、その基本を徐々に底上げしていく管理を行うとよいでしょう。


2.物流サービスを理解するための2つのポイント

 

物流サービスを理解するためには、前提となる二つのポイントを押さえておくことが肝要です。1つは、サービスと売上との関係です。
物流サービスはそのレベルが高ければ高いほど顧客満足度が向上し、売上も増える可能性が高くなります。しかし、一方で物流サービス
を上げると、それにつれて物流コストも増えます。理論的には物流コストが増える以上に、売上増による利益が増えるようにサービス水準を設定することが正しいと言えます。物流の各機能間にはトレードオフの関係が常にあるので、一つのロジスティクス変数を変えると、他の機能に予測し難い変化をもたらすことがあります。ここをしっかりと検討せずに、顧客に言われるがままに過剰サービスで疲弊している企業は少なくありません。したがって、物流サービスの実行が物流全体に与える影響を見極めることが必要です。

2つ目は、物流サービスとして何を行うかです。物流が提供するサービスにはどのようなものがあるのかを見定める必要があります。下図は物流サービスの一例です。

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これらを見ながら、それぞれのサービスにおいて物流サービスレベルを事前に取引先と取り決めを行います。多くの企業が受け身で仕事をしてきたので、荷主の要求に従って商品を運ぶ「御用聞き」が当たり前になっています。荷主企業はなるべく物流コストをかけないように安さを追求します。その荷主の御用聞きをやっている多くの物流会社は仕事を維持するために、荷主の要望をそのまま受け入れるか、安価な下請け、孫請けに流してその場を凌ぐかの二択しかありません。やがて荷物の取り合い合戦は激化し、荷待ちや荷積み、荷降し、その他の付帯業務の無償サービスを生み出しました。タクシーを待たせると、待ち時間きっちりと乗車料金に加算されますが、トラックはいくら待たせても料金が発生しないという悪しき習慣が常態化してしまいました。

こうした無償サービスが求められたりすることを少しでも減らすために、自社が行うサービス内容を明確にしてメニュー化し、契約書上に細かくサービス内容とサービスレベルを記載する必要があります。


3.物流サービスをPDCAで管理しよう

 

物流サービスを管理するにはPDCAサイクルを用います。以下の図は物流サービス管理をPDCAサイクルで回す概略です。

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まずは物流サービスの実態を調査するところからスタートします。荷待ちや荷役など無償サービスがどれだけ行われているかをしっかりと金額に換算して把握しましょう。契約書に記載された内容がその通りに守られているか、どのようなイレギュラーケースがあるか、なぜそれが起きるのかなどを調べましょう。同時に競合他社のサービス水準も調べましょう。競合他社に見劣りするサービスでは、売上やシェアに影響をしてしまいます。そして重要なのがマーケットインの発想です。顧客が物流に何を求めているのか、そのニーズをしっかりとヒアリングして把握することが重要です。

続いて、物流サービス水準を設定します。物流サービス水準の設定は、物流センター全体のシステム化の基盤となります。物流サービス実態調査によって明らかになった顧客ニーズや競合他社のサービスレベルと、それにかかるコスト、売上へのインパクト等を考慮して決定します。物流サービス水準が定められたら、その基準値をKPIとして設定し、それを達成・維持するために、必要なシステム等を導入します。また新たな物流サービス水準を社員や顧客に周知します。顧客へのアナウンス、現場への運用ルールの周知をしっかりと計画して実行しましょう。

設定した物流サービス水準が守られているかどうかを、定期的にチェックしましょう。物流サービス水準が守られない場合は、その原因を究明し、改善を行います。作業プロセス上に問題がある場合は、プロセスを改善します。人に問題がある場合は、教育や、人事考課基準の変更などを行いましょう。

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