経営環境の変化のスピードに対応するためのデジタル戦略とは!?|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営環境の変化のスピードに対応するためのデジタル戦略とは!?

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 画像素材:PRISM/PIXTA

企業を取り巻く経営環境は絶えず大きな変化を経験しています。この変動は単なる一時的なものではなく、むしろ経営環境が大きく変わることが当たり前です。
規制や保護による参入障壁、産業ピラミッド、雇用慣行なども絶えず変化しています。経営環境が変わること自体は今昔を問わず変わりませんが、変化のスピードは著しく向上しています。以前は年単位で変化していた事象が、現在では月単位での変動が一般的となっています。今後もこの変化の速さは一段と増すことでしょう。

私たちがデジタル化戦略において「これからはエンドユーザーが主役となる時代です」と強調しているのは、企業が変化に対応するための手段としてデジタル化が重要であるためです。組織内外で情報が円滑に流通する仕組みを構築するためには、情報システム部門やITベンダーが、この仕組みを築く過程でエンドユーザーのニーズを充分に考慮することが不可欠です。この取り組みを通じて、企業は変化に柔軟かつ迅速に対応できるようになります。変化のスピードが今後も加速する中で、エンドユーザーの要望を把握し、それに応じたシステムをより早く構築することが企業の競争力を維持する鍵となります。

2023年11月18日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)

2023.09.05

<目次>

1.経営環境の変化に対応するために

2.情報システムの役割の変化

3.内製?vs外製?

4.物流システムはバックオフィス系?

 


1.経営環境の変化に対応するために

 

デジタル化が企業の重要戦略となった今、よりオープンな環境のもとでの競争が求められるようになります。依然としてコスト削減も重要課題になりますが、
市場競争力を強化していくために、企業自身の構造改革を行い、新商品やサービスの開発、それを推進するための創造的で俊敏な組織への変革を行う必要があります。情報システムは、企業経営と密接不可分の関係になっており、これまでの業務効率化に加えて、AI(人工知能)の進化によって、重要な意思決定を行う為の手段の一つとしても用いられるようになりました。従来の情報システムは、一部の社員のみの利用を想定し、特定のベンダーや情報システム部門が主導権を握って導入・運用されてきました。しかし、経営環境の変化にスピーディに対応するためには、ユーザーが主導権を握る必要があります。

近年の経営環境の変化としては、以下のようなものが挙げられます。

(1)デジタル化の加速

インターネットやクラウドコンピューティングなどの技術革新により、ビジネスのあり方が大きく変化しています。企業は、デジタル技術を活用して業務効率
化や新規事業の創出を図る必要があります。

(2)国内への回帰

新興国との賃金差の縮小や、地政学リスクの回避から、製造拠点やサプライヤーを国内で選択する企業が増えつつあります。

(3)人口構造の変化

少子高齢化の進展により、労働力不足や人材の質の変化が進んでいます。企業は、人材戦略の見直しや、AIなどのテクノロジーを活用した業務自動化を図る必要
があります。

(4)環境・サスティナビリティ意識の高まり

気候変動や社会格差などの環境・社会課題が顕在化しています。企業は、持続可能な社会の実現に貢献するための取り組みを進めていく必要があります。

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2.情報システムの役割の変化

 

情報システムは、これらの経営環境の変化に対応するための重要な手段となります。情報システムを活用することで、企業は以下のメリットを享受することができます。

(1)業務効率化

業務の自動化やデータの分析により、業務の効率化を図ることができます。

(2)新規事業の創出

データの収集・分析やAIなどの技術を活用して、新たなビジネスの創出を図ることができます。

(3)グローバル競争力の強化

グローバル市場での情報共有や協業を円滑に進めることで、グローバル競争力を強化することができます。

(4)人材戦略の見直し

AIなどのテクノロジーを活用して、人材の配置や育成を最適化することができます。

(5)持続可能な社会の実現

環境・社会課題の解決に貢献する新たな製品・サービスを開発することができます。

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従来の情報システムは、限られた社員層の利用を前提とし、特定のベンダーや情報システム部門が主導権を握って導入・運用されてきました。しかし、これからはエンドユーザーが主役となる時代です。エンドユーザーのニーズを十分に反映させることで、情報システムをより効果的に活用し、経営環境の変化に適応した競争力強化を実現することができます。エンドユーザーニーズを反映させるための具体的な取り組みとして有効なのは、情報システムをユーザー主体で設計、開発していくことです。

そうすることで、個々の企業の戦略に合った独自のシステムを素早く、低コストで用意できます。システムの全容を把握できるため、環境変化に応じたシステムの改良も、トラブル時の対処も、どちらもスピーディです。結果として競争力が向上します。こうした利点については、もう何年も前から指摘されており、一貫して内製を続けている企業もあれば、その利点に気付き、内製に切り替えた企業もあります。システムを内製化できれば、プログラムのロジックやデータベースのどの部分を変更すればいいのかすぐに分かります。これを都度ITベンダーに頼んでいたら、時間もコストもかかります。

 


3.内製?vs外製?

 

ただし、何でもかんでも自分たちで内製化すればよいのかと言えば、少し違います。私たちの考えは、バックオフィス系のシステムは外製のパッケージを導入し、フロントエンド系のシステムは、内製化するというものです。フロントエンド系のシステムは顧客サービスに直結しますし、システム機能そのものが競争力になるからです。一方で、経理や給与計算のようなバックオフィス系のシステムは、既存のパッケージをそのまま導入する方が効果的です。

このアプローチにより、企業は戦略的な分野であるフロントエンド系のシステムに資源を集中し、同時にバックオフィスの業務効率を向上させることができます。バックオフィスの業務は一般的に標準的であり、外部パッケージを利用することで迅速かつ効果的に運用できます。一方で、フロントエンド系のシステムは企業独自の価値を顕著に表現するため、内製化が競争優位性の向上に寄与します。この戦略的なデジタル化のアプローチにより、企業は賢明にリソースを活用し、競争力を向上させることが可能です。

 


4.物流システムはバックオフィス系?

 

では、物流システムはバックオフィス系でしょうか?それともフロントエンド系でしょうか?答えはどちらもYESです。その企業の業態や企業戦略によって、物流システムはその特性を変えます。物流で差別化を図ろうとしている企業であれば、物流システムはフロントエンドに寄ります。この辺りを考慮して、外製にするか、内製にするか検討することがとても重要です。

物流システムを外製にするか、内製にするかの検討においては、企業の具体的な事情や目標を考慮することが非常に重要です。例えば、物流が企業の主要な競争要因である場合、自社で開発したり特定の要件に合わせてカスタマイズしたりすることで、競争上の優位性を確立できる可能性があります。逆に、汎用的な物流機能を求める場合は、外部の専門ベンダーから提供されるパッケージを活用することが適しているかもしれません。

システムを内製すれば、計画が持ち上がってから、実際にシステムを動かすまでのスピードを引き上げることができます。ベンダーに主導で開発をしてもらうとなると、まずビジネスモデルや現場運用を理解してもらう必要があります。その後、要件を利用部門を交えて詰めたり、コストや納期を交渉したりするための打ち合わせが延々と続きます。
また、大きな案件ともなれば、より有利な条件を引き出すため、複数のベンダーから見積もりをとり、その準備や打ち合わせにさらに時間がかかってしまいます。これだけでも、計画から数ヶ月、場合によっては1年以上要する場合があります。変化のスピードがどんどん早まる経営環境において、そんなに時間をかけているわけにはいきません。

物流システムにおいても、日々多くの変化が生じます。荷主である小売店の契約を獲得すると、EDI(電子データ交換)で小売店のシステムと自社システムを接続します。
その際には、荷主側のシステムに合わせて、自社の物流システムを修正する必要があります。その修正に時間がかかるため、荷主との取引開始が数ヶ月遅れるといったことが起こります。昨今は物流データの価値向上に伴い、物流システムに対して、経営陣や利用部門から特定の条件に基づいたデータの抽出と分析を求められることが増えています。
このようなニーズに対しても、ベンダーが主導権を握っている状態であれば、数ヶ月待たなくてはなりません。しかし、依頼者側としては今日にでもそのデータを活用したいわけです。自社の情報システム部門が物流システムのデータベース構造を知り尽くしていれば、わざわざ機能を作らなくても、必要なデータを抜き出して提供してあげることだってできます。

必要なデータに誰でも簡単にアクセスできる環境が整えば、それは企業のデジタル文化の形成に大いに寄与するのです。

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