トライアルカンパニー、日本のウォルマートを目指す急成長企業の秘密に迫る!|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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トライアルカンパニー、日本のウォルマートを目指す急成長企業の秘密に迫る!

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 画像素材:ごんちー/PIXTA

独自のビジネスモデルとそれを支える物流システムを構築するために、物流システムを内製する方針をとっている企業が増えています。主な理由としては、「競争優位性の確立」「コスト削減」「スピードの向上」の3つです。独自のビジネスモデルを構築することで、競合他社との差別化を図ることができます。
また、それを支える物流システムを内製することで、自社のニーズに合わせた柔軟な対応が可能になり、競争優位性の維持・強化につながります。

さらには、物流システムを内製することで、外部委託に比べてコストを削減できる可能性があります。これは、物流システムの設計や運用を自社で行うことで、無駄を省き、効率化を図ることができるためです。また、委託先との調整や意思疎通の時間が無くなることでスピーディーな対応も可能になります。

本稿では、物流システムを内製化し、いま急成長しているディスカウントスーパー、トライアルカンパニーの事例を交えながら、自社のビジネスを変える物流システムの構築について考察したいと思います。

2023年11月25日 執筆:東 聖也(ひがし まさや) 

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目次>

1.ニトリやウォルマートも物流システムを内製化

2.日本のウォルマートを目指す急成長企業の内製化に迫る

3.物流システムさらなる高度化に向けて

 


1.ニトリやウォルマートも物流システムを内製化

 

物流システムを内製化している具体的な事例としては、家具・インテリア用品販売のニトリが挙げられます。ニトリは、商品企画から製造、物流、販売までを一貫して自社で行う「製造物流IT小売業」という独自のビジネスモデルを構築しています。このビジネスモデルを支える物流システムも内製しており、迅速かつ効率的な物流を実現することで、顧客満足度の向上につなげています。

海外でも、独自のビジネスモデルとそれを支える物流システムを構築するために、内製する方針をとっている企業が増えています。例えば、米国の大手小売企業ウォルマートは、物流システムを内製しています。これは、ウォルマートが、顧客の需要の変化に迅速に対応するために、柔軟性と効率性を高めた物流システムを構築することを目的としています。

また、欧州の製造業では、サプライチェーンの最適化のために、物流システムを内製する動きが広がっています。これは、製造業におけるサプライチェーンの複雑化・高度化に対応するために、自社で物流をコントロールする必要性が高まっているためです。具体的な事例としては、ドイツの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンは、物流システムを内製しています。これは、フォルクスワーゲンが、サプライチェーンの最適化とコスト削減を実現するために、自社で物流をコントロールする必要性が高まっているためです。

 


2.日本のウォルマートを目指す急成長企業の内製化に迫る

 

内製化によりビジネス戦略を迅速に物流システムに反映させることで、ライバル企業と差別化を図れるメリットを享受できます。福岡県福岡市に本社を置く、トライアルカンパニーは、「システムが競争力と成長力の源泉」と強調し、日本のウォルマートを目指し、全国で285店舗のディスカウントスーパーを展開するまでに急成長しています。(※ちなみに筆者が住む広島では、2023年11月時点、1店舗しかありませんので、ほとんど知られていません。)しかし、トライアルカンパニーは、今後も全国展開を進めていく方針で、2025年までに店舗数を400店に拡大することを目標としています。

ウォルマートと同様に、毎日安売り(エブリデーロープライス)を掲げるため、商品を大量に仕入れ品切れをさせません。この方針を支えるため、物流・販売システムだけでなく、物流センターまで自前で構築して運営しています。もちろん商品の仕入れや配送コストの圧縮にも寄与しています。

仕入れと配送の効率を追求した結果、同社の物流センターには商品を在庫して各店舗に仕分けして配送する機能と、入荷した商品をそのまま店舗別のトラックに積み替える機能という異なる機能を同居させています。

商品を在庫して各店舗に仕分けして配送する機能は、商品を店舗ごとに在庫し、各店舗の需要に合わせて仕分けして配送します。入荷した商品をそのまま店舗別のトラックに積み替える機能は、入荷した商品をそのまま店舗別のトラックに積み替えることで、在庫スペースを削減し、物流コストを削減することができます。

このように異なる機能を同居させることで、トライアルカンパニーは、店舗ごとに異なる商品の需要に対応しつつ、在庫スペースを削減し、物流コストを削減しているので
す。これらのメリットにより、圧倒的な低価格を実現し、顧客満足度の向上につなげています。

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こうした特徴的な物流機能のため同社では、「きちんとサポートできるパッケージがない」「仕様を理解し開発できるベンダーがいない」という理由から、物流システムを内製しています。ロジックを頻繁に入れ替え、最適解を求めて日々トラインドエラーを繰り返しているのです。この点もウォルマートやニトリとよく似ています。

トライアルカンパニーは、圧倒的な低価格を実現するために、物流の効率化を重視しています。そのため、自社で物流システムを構築することで、物流のコントロールを自社で行うことができるだけでなく、物流コストの削減にもつなげています。トライアルカンパニーの物流システムは、商品の入荷・保管・出荷を管理するシステムです。このシステムは、トライアルカンパニーの独自のビジネスモデルに合わせて設計されており、商品の大量仕入れや品切れリスクの低減を実現しています。

また、物流システムの自動化にも積極的に取り組んでいます。自動倉庫や自動搬送機などの導入により、人件費や作業時間の削減を図っています。

 


3.物流システムさらなる高度化に向けて

 

物流システムの内製化により、トライアルカンパニーは、「物流の効率化」「物流コストの削減」「品切れリスクの低減」といったメリットを享受し、競争力を向上しているのです。具体的には以下のような機能を物流システムに備えています。

・商品の入荷管理
・商品の保管管理
・商品の出荷管理
・在庫管理
・配送ルートの最適化

これらの機能により、商品の入荷から出荷までの一連の流れを効率的に管理しています。どれも基本的な機能ですが、それぞれに同社の拘りが組み込まれており、日々ロジックが進化しています。これにより、商品の品切れを防ぎ、顧客の利便性を最大限に高めていけるのです。

今後も、トライアルカンパニーは、物流システムのさらなる高度化を図ることで、圧倒的な低価格の実現を目指すとともに、顧客満足度の向上につなげていくと考えられます。

システム開発の永遠の課題は、設計や開発のやり直し、いわゆる「手戻り」です。内製することでそのリスクを減らすことができます。なぜなら、情報システム部門が自社のビジネスや物流の業務を本気で理解すればいいからです。これは、ITベンダーにそれを理解させるよりもハードルが低いと言えます。

今後も、競争の激化や顧客のニーズが多様化する中で、独自のビジネスモデルとそれを支える物流システムを構築するために、内製する方針をとる企業はさらに増えていくと考えられます。

 

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