データを宝に変える!データドリブン企業への変革を阻む3つの壁|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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データを宝に変える!データドリブン企業への変革を阻む3つの壁

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 画像素材:jazzman/PIXTA

昔々、ローマ帝国が繁栄していた頃、彼らは国の防衛を傭兵に任せ、領土を拡大しました。(※傭兵とは、ローマ市民ではなく、お金によって戦闘を代わりに行う軍隊)傭兵たちは金銭報酬を求め、その力を貸してくれましたが、時として彼らは国の統一性や忠誠心に欠けることもありました。戦闘で不利な状況になると逃亡したり、敵側に寝返ったりすることもありました。実際、ローマ帝国末期には、傭兵の反乱や敵への寝返りが頻発し、帝国の軍事力は大きく低下し、やがて滅びてしましたとさ。

企業がアウトソースを行う場合、ローマ帝国の傭兵との類比が思い浮かびます。周辺諸国との戦争を通じて、帝国の威信と軍事力を誇示していたローマ帝国にとって、軍隊はまさにコアコンピタンスであったはず。その軍隊をアウトソースしたわけですね。デジタル化社会の今、多くの企業にとって、デジタル技術はコアコンピタンスです。
デジタル化のためのスキルや、リソースを持たない場合、外部の専門企業に頼ることになります。彼らはデジタルの専門家であり、プロジェクトを成功に導くために雇われますが、ここで注意が必要です。傭兵と同様、外部のデジタル専門企業が、自社の文化や価値観を理解していない場合、自社の競争力が大きく低下してしまうことが懸念されます。

2024年2月11日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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<目次>

1.変革に向けて自己決定能力を取り戻せ

2.人材の壁:データ活用スキルの不足

3.部門の壁:データの縦割り管理と部門間の連携不足

4.経営の壁:コミットメント不足と短期的な利益重視


1.変革に向けて自己決定能力を取り戻せ!

 
イギリスの歴史家であるアーノルド・トインビー博士の大著「歴史の研究」の中で彼は、挫折した文明の共通項に「自己決定能力の喪失」をあげました。大国の衰亡あるいは滅亡につながる最も厄介な要因が自分で自分のことを決められないことだと書いてあります。自分の事を自分で決めれなければ、たとえ大国であってもすみやかに滅びるというのですね。このトインビーの自己決定力の喪失に関する理論が、ローマ帝国の滅亡に一定の関連性を持つのではないかと推察します。

企業がデジタル変革を進める上で、デジタル専門企業にアウトソースすることは、決して悪い選択肢ではありません。自己決定能力が自社にあるかどうかが重要です。近年、DXを阻む要因の一つとして、ベンダーロックインが語られることが多いですが、このベンダーロックインこそ、トインビーの自己決定力の喪失に関する理論が当てはまります。
激動の時代を生き抜く私たちにとって、トインビーの「挑戦」と「応戦」の理論は、重要な示唆を与えてくれます。

デジタル化を完全に他社に丸投げせず、内部の人材を養成し、自らも進化させることが重要です。またデジタル専門化企業と戦略的なパートナーシップを築きつつ、内外の力を結集していくことが、データドリブン企業への変革への第一歩となります。

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2.人材の壁:データ活用スキルの不足

 

企業がデータドリブン企業に変革する際、自己決定能力を有することの重要性についてご理解いただけたでしょうか。これは私たちが様々な企業の物流デジタル化支援を行う中で感じたことです。かつて、ドイツの哲学者ヘーゲルは言いました。「社会の重要な問題の成否を論じる際の判断の原理は、全て歴史の中にある」と。歴史や古典は重要
なエビデンスであることはもちろんですが、そこに自らの経験を重ね合わせることが大切です。

自己決定能力を有することの重要性について、私たちは「ユーザーが主役」というキャッチーな表現でお伝えするようにしています。本稿を読んでくださっている皆さんが主役となり、データドリブン企業に変革することが大切です。さて、続いてデータドリブン企業の変革を阻む3つの壁について解説しましょう。

一つ目は人材の壁です。読者の皆さんもデータを活用することの重要性は十分に理解されていることと思います。しかし、それがなかなか実現されないというのが本音のところ
でしょう。”変革はまず組織から”と言います。デジタル化を推進するための専門組織を作る企業も増えてきました。「デジタル推進室」「IT戦略室」「DX推進事業部」など、こうした肩書のついた名刺を頂くことも増えてきました。先日社員5名のベンチャーの製造業に伺った際に、「データアナリティクス研究室長」という肩書の名刺を頂戴しました。
この企業がデータ活用に力を入れているということが伝わってきます。「具体的にどのような研究をされるのですか?」とその方に伺ったら、「それを今決めているところです(苦笑)」という回答でした。

日本企業は長らくITをコストダウンの方法の一つくらいにしか考えていませんでした。そのため、データを活用して企業を大きく成長させるという意識がそもそも欠如しています。
最近でもDXというと、ペーパーレス化や、属人化の撤廃、自動化による人手不足対策などがセットで語られています。しかし、これらはコストダウンに関連するものであり、DXではありません。またデータドリブンかと言われると、ちょっと首をかしげたくなるような内容が殆どです。

 


3.部門の壁:データの縦割り管理と部門間の連携不足

 

多くの企業では、データが部門ごとに管理されています。そのため、必要なデータが異なる部門に分散していたり、データフォーマットが統一されていなかったりして、データ分析が困難になることがあります。データドリブン企業では、部門間の連携が不可欠です。しかし、部門間のコミュニケーション不足や情報共有の不十分さによって、データ分析結果が部門間で共有されず、意思決定に活かされないことがあります。

組織の壁を越えた業務変革については、社内の抵抗に阻まれてなかなか進まないというのが一般的です。また大きな企業の方がこの縦割り意識が強く部分最適に陥りがちです。
既存のビジネスモデルを変革することがDXの本質ですが、部門の壁がそうした全体最適を阻むのです。


4.経営の壁:コミットメント不足と短期的な利益重視

 

データドリブン企業を目指すのであれば、現場だけではなく経営の意思決定にもデータを活用したいところです。しかし、現場の意思決定でデータを活用するよりも、さらに難易度としてはあがります。そもそも経営判断型の意思決定はプロセスが完全に暗黙知です。経営者の頭の中で判断されるので、そこにどのようにしてデータ活用を組み込むのかが見えてきません。少し余談ですが、高収益日本一で有名なキーエンスの社員に「なぜ、社長が変わっても成長し続けることができるのですか?」と聞いたことがあります。返ってきた答えは「経営層の意思決定プロセスを仕組み化しているからです」というものでした。さすがにこれにはビックリしました。仕組み化が強い企業とは思っていましたが、まさかそこまでとは。

いずれにしても経営判断型の意思決定にデータを活用するには、この暗黙知をいかに形式知化するかがポイントになります。また難しいのは、経営判断には往々にして政治が絡むということ。人の欲が絡んで、組織の為ではないことが分かっていても、自分のためになる方を選択するといったことがおきます。そのような欲にまみれた人が、組織のためにデータを活用することは難しいでしょう。人間の損得勘定の力はいつの時代も組織にとっては百害あって一利なしです。

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