データドリブンの母、ナイチンゲールに学ぶデータ活用法とは!?|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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データドリブンの母、ナイチンゲールに学ぶデータ活用法とは!?

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 画像素材:星野スウ /PIXTA

データを具体的なアクションに変えるには、意思決定プロセスを仕組み化することが重要です。この点については、これまで何度も述べてきたとおりです。
長い間属人化していた意思決定プロセスにデータ分析を組み込むことで、意思決定の精度を向上させ、リスクを回避することで成功率を高め、競争優位性を獲得することができるのです。そして、データ分析を用いて意思決定プロセスを仕組み化する上で役に立つのが、「シナリオ設定」です。19世紀のイギリス、フローレンス・ナイチンゲールはクリミア戦争で負傷兵の看護にあたりました。当時、病院は非衛生的な環境であり、多くの兵士が病死していました。ナイチンゲールは、死亡率の統計分析を行い、病院の衛生状態改善の必要性を訴えたのです。今回はナイチンゲールが問題に対してどのようにデータを活用し、正しい意思決定を促したのか、その背後にあるシナリオ設定がどのようになされたのかを考察することで、皆さんのデータドリブン思考を鍛えていきたいと思います。

2024年2月25日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)

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<目次>

1.ナイチンゲールはデータドリブンの母?

2.データ分析を問題解決につなげるフレームワーク

3.物流の最適化問題を解決するLFA


1.ナイチンゲールはデータドリブンの母?

 
クリミア戦争(1853年~1856年)は、ロシア帝国とイギリス、フランス、オスマン帝国の連合軍との間で行われた戦争です。この戦争で、約50万人の兵士が死亡したと推定されています。当時の軍隊病院は、非衛生的な環境でした。換気が悪く、病室は過密状態であり、病原菌が蔓延していました。劣悪な環境の影響で、病院での死亡率は非常に高く、戦傷よりも、病死の方が多かったのです。ナイチンゲールは、これらの問題を解決し、兵士たちの命を救いたいと考えました。

病院の状況や患者に関する統計データを収集・分析することで、問題を明らかにし、効果的な対策を講じることの重要性について訴え、換気や清掃を徹底し、病室の環境を改善することで、病原菌の蔓延を防ぎ、死亡率を下げることができると提言したのです。

陸軍省の衛生委員会は、ナイチンゲールの報告どおり、病院内を衛生的に保つことを命令し、2月に約42%まで跳ね上がっていた死亡率は4月に14.5%、5月に5%にまで改善されました。クリミア戦争での負傷兵たちへの献身や統計に基づく医療衛生改革により著名となった彼女は、統計学の業績について高く評価され1858年には王立統計学会初の女性会員となったのです。

彼女は数多くの統計資料を作成しましたが、特に有名なものとして、死者の数を死亡原因ごとにひと目で分かるように工夫した、「コウモリの翼」や「鶏の鶏冠」と呼ばれる、多角形のグラフです。当時はまだ円グラフも棒グラフもなかった時代です。このグラフは今日では、クモの巣チャート(レーダーチャート)と呼ばれています。

■ナイチンゲールが考案した「鶏のとさか」と呼ばれる円グラフ
■ナイチンゲールが考案した「鶏のとさか」と呼ばれる円グラフ

 


2.データ分析を問題解決につなげるフレームワーク

ナイチンゲールの事例は、データ分析を問題解決につなげるベストプラクティスと言えます。彼女は統計学を用いたデータ分析から問題解決までのステップを描いたのです。
すなわち、データ分析により予測や仮説が生まれ、その予測や仮説により正しい意思決定を促し、それにより課題が解決し、問題が解消したのです。
ナイチンゲールが実際に行ったことを、逆方向から4つのステップに整理すると、「問題を定義する」⇒「課題を整理する」⇒「意思決定の促進」⇒「データ分析」となります。
この一連の流れを「データドリブン・シナリオ」と呼ぶことにします。このシナリオに沿ってナイチンゲールが実際に行ったことを、改めて整理すると以下の図になります。
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いかがでしょうか。データ分析で実際のビジネスの問題を解決につなげるイメージが少しは湧いてきたのではないでしょうか。そして、このシナリオで重要な点は思考する時点と、実際の行動の時点では逆の流れになるということです。思考の時点でいうと、ナイチンゲールはまず「死亡率が高い」という問題に着目し、「病院環境が劣悪」という課題に気付き、「関係者に提言する」ために、「データを分析」してその事実を明らかにするということを考えたと思います。そして、実行においては全くその逆を行います。
データ分析し、関係者に提言し、課題を解決することで、問題を解消したのです。

このデータドリブン・シナリオは思考(アイディア)フェーズと、実行フェーズで流れが真逆になるというのがポイントです。このシナリオ設定がしっかり頭に入れば、皆さんのデータドリブン思考はかなりのレベルに達したと言っても過言ではありませんよ。
 


3.物流の最適化問題を解決するLFA

では、実際に物流コストの課題について、シナリオを作成してみましょう。どの企業にとっても運賃の高騰は最も頭の痛い悩みの一つです。以下の例では「運賃の高騰」というビジネス上の問題に対してデータドリブン・シナリオを定義しました。この問題に対して課題はいくつかあります。分かりやすい課題としては、運送会社の運賃値上げですが、この課題は自社ではどうすることもできません。そこで、自社で取り組める課題という視点で運送会社の選定に着目しました。現場の責任者が経験と勘で選択している属人的なプロセスです。どの倉庫から、どの運送会社で出荷するかという意思決定プロセスを自動化することにします。そのために、データを活用して運賃と納品リードタイムと在庫状況の観点から最も最適な倉庫と運送会社を導き出すデータ分析を行います。
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このシナリオにそって開発された私たちのソリューション、「輸快通快(ゆかいつうかい)」は、Logistics Force Automation(LFA)の原則に基づいて開発されたパッケージです。
LFAは物流領域において作業の自動化と効率向上を追求する技術やプロセスの統合を指し、そこを汎用性の高いパッケージソリューションとして提供する目的で「輸快通快」が生まれました。

「輸快通快」は、複数の運送会社の運賃マトリクス、多様な納品条件、複数の倉庫における在庫状況など、膨大なパラメータの中から最適な出荷手配を導き出す意思決定支援ソリューションです。

■主な特長

1.運賃の最適化

「輸快通快」は複数の運送会社の運賃マトリクスを網羅し、最適な選択を自動的に行うことで、運送における最適なコスト効率を実現します。

2.多様な納品条件への適応

納品先の様々な条件に柔軟かつ効果的に対応し、顧客の要求に合わせた最適な納品計画を策定します。

3.在庫最適化

複数の倉庫における在庫状況をリアルタイムで把握し、物流コストの観点から効率的な在庫の配置と管理を実現します。

4.膨大なパラメータの分析

大量のマスタデータやパラメータを瞬時に分析し、最適な出荷手配を行うことで、迅速で的確な意思決定をサポートします。

「輸快通快」は、物流業界における複雑な最適化問題に挑戦し、データドリブン型の意思決定によって作業効率を飛躍的に向上させる先進的なソリューションです。
当ソリューションを導入することで、ユーザーの物流プロセスを革新し、競争力を高めることができます。是非この機会に資料をご請求ください。

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