物流の現場で「システムが業務に合わない」「カスタマイズに時間とコストがかかりすぎる」とお悩みではありませんか?物流DXを進めたいけれど、IT人材不足や予算の制約で思うように進まないというケースも少なくありません。
倉庫管理システム(WMS)は物流業務の効率化には欠かせませんが、従来型のWMSでは現場の変化に素早く対応できず、システム改修のたびに多額のコストと時間がかかってしまいます。
そこで注目されているのが「ローコードWMS」です。プログラミング知識がなくても、現場担当者が直感的な操作で業務フローをカスタマイズできる次世代の倉庫管理システムです。
この記事では、ローコードWMSの強み・課題から、導入に適した企業の特徴、おすすめベンダーの比較、そして成功事例まで徹底解説します。読み終わる頃には、自社に最適なローコードWMSの選び方が明確になり、導入検討の次のステップに進むことでしょう。
2025年5月3日 執筆:東 聖也(ひがし まさや)
ローコードWMSとは、専門的なプログラミング知識がなくても、視覚的なインターフェースを使って倉庫管理システムの構築・カスタマイズができるプラットフォームです。ドラッグ&ドロップやテンプレートを活用した直感的な操作で、倉庫業務のフローや画面設計、帳票などを現場担当者自身が作成・変更できるのが大きな特徴です。
従来のWMSでは、新しい機能追加や業務フローの変更にエンジニアの介入が必須でしたが、ローコードWMSでは現場の担当者が「自分たちの手で」システムを進化させていくことが可能になります。
プログラミングは「完全に不要」というわけではありませんが、日常的な業務変更や画面カスタマイズなど、多くの作業はコードを書かずに実現できます。複雑な連携や特殊な処理が必要な場合は、一部コーディングが必要なケースもありますが、その割合は従来型と比べて大幅に少なくなっています。
ローコードWMSが注目される背景には、物流業界が直面する複数の課題があります。
国内の物流システム市場においてローコードWMSの導入はまだ黎明期にありますが、急速に普及しつつあります。特に中小規模の物流企業や、自社物流を強化したい製造業・小売業などで導入事例が増えています。
市場調査によると、2025年までに国内WMS市場におけるローコード型の割合は20%程度まで拡大すると予測されており、「IT人材不足」と「変化対応力の向上」を理由に導入を検討する企業が増加傾向にあります。
すでに導入した企業からは「現場主導でシステム改善ができるようになった」「エンジニアへの依頼が減り、改修のリードタイムが大幅に短縮された」といった声が聞かれています。
ローコードWMSには従来型と比較して、いくつかの大きな強みがあります。導入を検討する際の判断材料としてご確認ください。
ローコードWMSの最大の強みは、現場担当者が直感的な操作でシステムを変更できる点です。例えば、以下のようなケースで威力を発揮します。
現場の「こうしたい」を即座にシステムに反映できるため、業務改善サイクルが格段に速くなります。物流現場の変化スピードが加速する中、この「即応性」は大きな競争優位になります。
ローコードWMSの導入により、次のようなコスト削減効果が期待できます。
例えば、従来型WMSでは「画面に一項目追加するだけで数十万円、納期も1ヶ月」といったケースが珍しくありませんでしたが、ローコードWMSでは担当者が数時間で対応できるようになります。
また、「まずは小規模に導入し、効果を確認しながら段階的に拡大」といった柔軟な投資も可能になるため、投資リスクを抑えられる点も魅力です。
ローコードWMSは、視覚的にデータをマッピングすることもできますので、既存システムとの連携が容易です。
例えば「受注データを基幹システムから取り込み、出荷実績をERPに返す」といった連携も、コードを書かずに実現できるようになります。システム間の「サイロ化」を防ぎ、データ活用の幅を広げられる点も大きなメリットです。
メリットが多いローコードWMSですが、導入検討時には以下の課題も理解しておく必要があります。
現状のローコードWMSには、次のような技術的な制約があります。
例えば「1万SKU以上を扱う大規模物流センターでの高度な在庫最適化」や「複雑な商品仕分けロジック」などは、完全なローコードだけでは実現が難しいケースがあります。このような場合は、ローコードとプロコード(従来型の開発)のハイブリッドアプローチが必要になるでしょう。
現場主導でカスタマイズできる利便性の反面、以下のようなリスクも存在します。
これらのリスクを回避するためには、「誰がどこまで変更できるか」の明確なルール策定や、変更管理プロセスの確立が重要です。
ローコードWMSと従来型WMSには以下のような違いがあります。
従来型WMS:
ローコードWMS:
従来型WMS:
ローコードWMS:
従来型WMS:
ローコードWMS:
すべての企業にローコードWMSが適しているわけではありません。以下のような特徴を持つ企業・組織に特におすすめです。
次のような特徴がある企業には、柔軟性や拡張性が求められるため、ローコードWMSが特に有効です。
例えば、急成長中の電気部品メーカーでは、毎年売上が130%成長しており、倉庫の拡張や物量に合わせて物流オペレーションを最適化する必要がありましたが、ローコードWMSの導入により、IT部門を介さず現場主導で物量や拠点増加に合わせた最適なオペレーションを実現できるようになりました。
以下のような課題を持つ組織には、ローコードWMSの導入効果が高いでしょう。
例えば製造業の物流子会社では、親会社のIT部門に依頼すると優先順位が低く改修に時間がかかるケースが多いですが、ローコードWMSの導入により自社判断でのシステム改善が可能になります。
物流DXを推進する中で、次のようなアプローチを取りたい企業に適しています。
ローコードWMSは「現場発のDX」を実現するツールとしても有効で、トップダウンだけでなくボトムアップの改善活動を支援します。
インターストックは国内発のローコードWMSプラットフォームで、以下のような特徴があります。
強み:
導入しやすい業種:
料金体系:
ローコード対応度:
インターストックのローコードWMSを導入した企業の成功事例をご紹介します。
導入前の課題:
導入後の成果:
具体的な活用ポイント: 現場担当者が商品特性に合わせてピッキングリストのレイアウトを自ら変更。また、毎月の棚卸では、ハンディターミナルが足りませんでしたが、購入すると高額であり、棚卸時しか利用しないため、スマフォで簡単に棚卸の応援ができるアプリをローコードで作成しました。
導入前の課題:
導入後の成果:
具体的な活用ポイント: 本社が基本テンプレートを作成し、各拠点が地域特性に合わせてカスタマイズする「分散型開発モデル」を実現。拠点発の改善アイデアを他拠点にも展開しやすくなりました。
導入前の課題:
導入後の成果:
具体的な活用ポイント: 荷主企業ごとに専用画面や独自の業務フローを現場担当者が設計。特に出荷検品や棚卸業務など、顧客ごとに異なるルールにも柔軟に対応できるようになりました。
ローコードWMSの導入を検討する際、以下のポイントを重点的に確認することをおすすめします。
ベンダー選定時には、どの領域までローコードで対応できるかを細かく確認しましょう。
例えば「画面カスタマイズは簡単だが、業務フロー変更は専門知識が必要」といったギャップがあるケースもあります。実際の操作を体験できるデモ環境での確認が望ましいでしょう。
非エンジニアが使いこなせるかどうかは、UIの使いやすさに大きく依存します。
「ローコード」と謳っていても、実際には複雑な操作が必要なケースもあります。現場担当者自身にデモ環境を操作してもらい、使いこなせるかを確認することが重要です。
システム導入後の自走力を高めるためには、サポート体制も重要なポイントになります。
特に初期段階では手厚いサポートが必要になるため、「導入後すぐに自社だけで運用できるか」という視点での評価が大切です。
導入するだけでなく、効果的に活用し続けるためのポイントも押さえておきましょう。
現場主導でカスタマイズできるからこそ、一定のルール作りが重要になります。
「自由に変更できる」環境が「無秩序な変更」につながらないよう、適切なガバナンス体制の構築が必要です。
ローコードWMSを最大限に活用するには、現場のスキルアップも欠かせません。
「やりたいこと」を「システムで実現する方法」に変換できる人材を増やすことが、ローコードWMSの価値を最大化します。
導入効果を持続・拡大するための仕組み作りも重要です。
「システムを現場に合わせる」だけでなく、「より良い業務フローを実現するためにシステムを活用する」という視点で改善サイクルを回すことが理想的です。
ローコードWMSは、変化の激しい物流環境において、ユーザー主導の柔軟な対応を可能にする次世代の倉庫管理システムです。IT人材不足に悩む企業や、迅速な業務改善を実現したい企業にとって、特に有効なソリューションといえるでしょう。
ただし、すべての企業や倉庫に適しているわけではなく、自社の業務特性や課題、IT運用体制などを踏まえた検討が必要です。特に重視すべきは「ローコード対応範囲」「操作性」「サポート体制」の3点で、実際のデモや試用を通じた確認がおすすめです。
導入後は適切な「変更管理ルール」と「継続的な改善サイクル」を確立し、現場のデジタルスキル向上と合わせて進めることで、真の効果を発揮します。
物流DXを加速させるための有力なツールとして、ローコードWMSの活用を検討してみてはいかがでしょうか。まずは資料請求やデモ体験から始めることで、自社に最適なシステム選定への第一歩となるはずです。