物流・倉庫改革の夜明け

WMSのロケーション管理とは?固定・フリーロケーション・ハイブリッドの違いや導入方法を解説!
- ピッキングに時間がかかり出荷が遅れてしまう
- 在庫数のズレによる発送ミスでクレーム対応が減らない
- ベテラン社員しか商品の保管場所を把握しておらず新人が作業に苦労している
倉庫作業でこんな悩みを抱えていませんか?在庫がどこにあるかすぐに分からないと、出荷が遅れたり誤出荷が発生したりします。そのままでは生産性の低下や顧客からの信頼低下につながりかねません。
本記事を書いている私は、800社以上のWMS導入実績を誇るインターストック社の代表です。数多くの物流現場を見てきた経験から断言できますが、倉庫の効率化にはロケーション管理(在庫の保管場所を管理する仕組み)が欠かせません。
本記事では、WMS(倉庫管理システム)におけるロケーション管理について、基礎から導入方法まで分かりやすく解説します。
この記事を読めば、ロケーション管理を活用して倉庫内作業を効率化し、ミスを減らし、コスト削減につなげる方法をはっきりとご理解いただけるでしょう。
WMSのロケーション管理とは?
ロケーション管理とは、簡単にいえば倉庫内で「何がどこにあるか」を正確に把握するための管理手法です。
商品ごとに保管場所(ロケーション)を割り振り、在庫の所在地を明確にします。
これにより、倉庫内の作業スピードが上がり、ミスも減少します。庫の置き場を決めて体系的に管理することで、「特定のベテランしか場所を知らない」といった属人化も防ぐことに繋がります。
倉庫では通常、ゾーン・列・棚(連)・段・間口といった要素でロケーション番号(住所)を構成します。
例えば「A-03-2-4-02」のようにコード化すれば、初心者でもコードを頼りに指定の棚を見つけやすくなります。ロケーション番号を棚や在庫棚卸リストに表示しておくことで、誰でも直感的にどのエリアのどの棚に商品があるかを把握できるのです。
ロケーション管理の仕組み

ロケーション管理は多くの場合、WMS(倉庫管理システム)の機能として運用されています。
入庫時に商品のバーコードと棚のバーコードをハンディ端末でスキャンして、商品と保管場所(ロケーション番号)を紐付け、WMSに登録します。
例えば、商品Aを棚Bに収納した場合、その場で棚Bと商品Aのバーコードを読み取ることでシステム上に「商品Aは棚Bにある」と記録されます。これにより、作業者は迷うことなく商品を取り出すことができます。
このようにロケーション管理を徹底すると、在庫数や保管場所の情報が常に正確に更新されます。倉庫スタッフ全員が共通のシステムで在庫情報を確認できるので、在庫不足や過剰在庫の防止にも役立ちます。
また、棚卸作業の効率も大幅に向上し、帳簿上の在庫と実在庫の差異を減らすことができます。
ロケーション管理は倉庫内のあらゆる業務効率に直結する重要な仕組みなのです。
ロケーション管理のメリット
ロケーション管理を導入すると、倉庫運営において次のようなメリットがあります。
- ピッキング作業の効率化
- 在庫管理の精度向上
- 顧客満足度の向上
ピッキング作業の効率化
商品の保管場所が明確になることで倉庫内の移動がスムーズになり、ピッキングにかかる時間が大幅に短縮されます。無駄な動きや探す手間が減り、結果として人件費の削減やミスの減少にもつながります。
在庫管理の精度向上
商品の所在地と在庫数を正確に管理できるため、出荷時のピッキングミスが激減します。帳簿上の数と実際の在庫数のズレ(棚卸差異)も少なくなり、在庫切れや在庫過多の防止に役立ちます。
顧客満足度の向上
在庫状況をリアルタイムで把握できるため、注文に対して迅速かつ正確に出荷対応できます。欠品や発送遅延などのトラブルを減らし、リードタイム短縮によって顧客からの信頼獲得につながります。
ロケーション管理の種類(固定ロケーションとフリーロケーション)
ロケーション管理には、大きく分けて固定ロケーションとフリーロケーションの2種類の運用方法があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを理解し、自社に合った方式を選ぶことが重要です。
固定ロケーション管理とは?
固定ロケーション方式では、特定の商品を決められた一つの保管場所(棚やパレット)に固定して管理します。常に決まった場所にあるためシンプルな管理方法で、新人スタッフでも商品配置を覚えやすいという特徴があります。
また、在庫数は多いが商品の種類が少ない在庫管理に適していて、WMSを導入していない倉庫で多く見られる方法です。
【固定ロケーションのメリット】
- 保管場所が固定されているため、新しいスタッフでも場所を覚えやすく即戦力になれる
- 商品の位置が変わらないのでピッキング作業が効率的に行える
【固定ロケーションのデメリット】
- 商品が売り切れて棚が空いても、そのスペースを他に使えないため空間に無駄が生じる
- 商品の入れ替わりや季節変動に対応しづらく、在庫レイアウトの柔軟性に欠ける
フリーロケーション管理とは?
フリーロケーション方式では、商品ごとに保管場所を決めず、倉庫内の空いているスペースに柔軟に収納します。
SKU(品目数)が多く商品入れ替えが頻繁な現場で採用されることが多く、この運用にはWMSを活用してリアルタイムで在庫位置を管理することが必須です。
【フリーロケーションのメリット】
- 空いているスペースを有効活用でき、倉庫容量を最大限に使える
- シーズンごとの需要変動や新商品の追加にも柔軟に対応できる
【フリーロケーションのデメリット】
- システムで場所を管理しないといけないため、運用が複雑になりやすい(WMSの導入が前提)
- 同一商品が複数ロケーションに分散する可能性があり、ピッキング動線が長くなる場合がある※
※例えば、商品Aが「棚B」と「棚D」の両方に少しずつ保管されているとします。出荷指示で「商品Aを10個ピック」と出たとき、作業員は棚Bで5個、棚Dで5個を取る必要があります。結果として、1か所で済むはずの作業が複数箇所を回る非効率な動線になってしまうという意味です。
ハイブリッド運用(ダブルトランザクション方式)
倉庫によっては、固定とフリーのハイブリッド型で運用するケースもあります。
その代表例がダブルトランザクション方式です。
これは、
- ピッキングエリア:固定ロケーション
- ストックエリア:フリーロケーション
とする手法で、固定とフリーの長所を組み合わせています。
ピッキング動線を短く保ちつつ保管効率も高められるため、大量多品種の在庫を扱う現場でも効率的に運用できるのが強みです。
【固定ロケーションのピッキングエリア(出荷用の棚)】
ピッキングエリアとは、出荷効率を最優先にしたエリアです。出荷頻度が高い商品を、決まった棚(固定ロケーション)に置きます。作業員がすぐ取り出せるように配置されており、動線が短くスピード重視です。
在庫は少量で、足りなくなるとストックエリアから補充します。
【フリーロケーションのストックエリア(保管用の棚)】
ストックエリアとは、保管効率を最優先にしたエリアです。商品を空き棚に自由に(フリーロケーション)保管します。出荷頻度が低い商品や、ピッキングエリアの補充用在庫を置きます。
倉庫スペースを最大限に使うのが目的です。
自社に適したロケーション管理方式の選択
- 固定ロケーション
- フリーロケーション
- ハイブリッド
のうちどの方式が自社に合うかは扱う商材や在庫特性によって異なります。
固定ロケーションがおすすめの企業・倉庫
- 取り扱う商品の種類(SKU)が少なく、同じ商品を大量に扱う倉庫
- 作業者の入れ替えが多い現場
- 紙・表計算ソフトや簡易WMSで運用したい企業
「SKU(品目数)」が少ない=管理が単純、「定番比率が高い」=扱う商品があまり変わらないため、棚を固定してもムダが出にくく、作業効率が安定するという特徴があります。
フリーロケーションがおすすめの企業・倉庫
- SKU数が多い・季節・新商品が多い業態(雑貨・アパレル・EC総合)
- 入出庫の波が大きい/在庫量の偏りが激しい(プロモ・セール・キャンペーン品)
- 保管スペースを限界まで使いたい(高地代・自動倉庫・多段ラック運用)
- 同一SKUのロット・有効期限が多い
上記の特徴に当てはまる企業は、フリーロケーションがおすすめです。
ただし、WMSがない企業や作業者の入れ替えが多い企業は不向きです。
ハイブリッドがおすすめの企業・倉庫
ハイブリッドは、SKU数が多く、出荷頻度に差がある(売れ筋と滞留品が混在する)倉庫におすすめの方法です。
向いている倉庫としては以下の特徴があります。
- 売れ筋と非売れ筋の差が大きい倉庫
⇒よく出る商品だけ固定ロケに置き、他はフリーで保管 - SKU数が多く、在庫回転がまちまち
⇒一部の商品は固定で補充し、変動の大きい商品はフリーで対応 - ピッキング効率と保管効率を両立したい現場
⇒出荷エリアは動線短縮、ストックエリアは棚効率最大化 - WMSを導入している中〜大規模倉庫
⇒フリー側の在庫追跡や補充タイミングをシステムで管理できるため最適
逆に、SKUが極端に少なく、固定ロケーションで十分管理が可能な場合や、システム未導入で、ロケーション管理が手作業の倉庫には不向きです。
WMSを活用したロケーション管理の導入6ステップ
最後に、WMSを活用したロケーション管理の導入手順を確認しましょう。
適切な計画と準備を行うことで、スムーズにシステムを定着させることができます。
1.倉庫の現状分析
現状の作業フローや在庫管理の方法、課題を洗い出します。現場スタッフへのヒアリングも行い、ボトルネックやミスの原因を明確にしましょう。
この分析結果をもとに、必要なWMSの機能要件も見えてきます。
2.WMSの選定
自社の業務に合ったWMSパッケージを選びます。
既存システムとの連携が可能か、必要な機能を備えているか、ベンダーのサポート体制は十分か、導入・運用コストは適切かなど、多角的に評価します。
3.システム設定とロケーション番号の付与
WMS導入後、商品マスタ(SKU情報)の登録やロケーション番号の発行を行い、倉庫内すべての棚に固有のロケーションコードを割り振ってバーコードに印字し棚に貼り付けます。
あわせて、効率的な倉庫レイアウトを設計し、商品の配置場所を最適化します。
4.従業員へのトレーニング
新システムと運用ルールについて十分に教育します。ロケーション管理の目的とWMS操作方法(ハンディ端末での入出庫やピッキング手順など)を実践的に訓練し、トラブル発生時の対処法も共有します。
全員が正しく使えるようになるまで時間をかけましょう。
5.テスト運用(パイロット運用)
実際の業務フローで一定期間テスト稼働させ、問題点を洗い出します。WMSが期待通り動作するか確認し、不具合があれば修正します。
テストで見つかった改善点はリストアップして本稼働前に調整しましょう。
6.本稼働と継続的改善
テスト運用で問題をクリアしたら、本番稼働に移行します。本稼働後も定期的に運用状況を振り返り、必要に応じて設定変更や社員教育の強化を行います。
新商品の追加やレイアウト変更などに伴い、ロケーション設定も更新し続けることが大切です。
PDCAサイクルを回しながら、継続的に倉庫内の改善を図りましょう。
WMSとロケーション管理についてよくいただく質問に回答
それでは、WMSとロケーション管理について弊社で無料相談やヒアリングを行った際によく頂く質問に回答いたします。
弊社インターストックのWMSは、ローコード対応による柔軟なカスタマイズ性、ソースコードの公開、物流の内製化・伴走支援といった強みがあります。
WMSの導入に関して、疑問や懸念点があったり、どのような機能が自社倉庫に必要なのか言語化できていないなどの悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
1.ロケーションの階層(ゾーン・棚・段など)はどの粒度まで管理できますか?
A.倉庫、エリア(ゾーン、ブロック、棚(列・段)の粒度で管理可能です。
2.商品のサイズや重量に応じて、最適なロケーションを自動提案する機能はありますか?
A.標準機能ではありませんが、カスタマイズモジュールにて対応可能です。
3.フリーロケーション運用時、棚の空き状況や補充優先順位は自動で判断されますか?
A.標準機能ではありませんが、カスタマイズモジュールにて対応可能です。
4.誤ピッキングや誤入庫を防ぐためのバーコード・スキャン運用の仕組みはどうなっていますか?
A.入出荷指示データに対して、ハンディターミナルのバーコード照合と、指示数量のチェックが可能です。
5.棚の空き状況をリアルタイムで把握できるマップや一覧機能はありますか?
A.標準機能ではありませんが、カスタマイズモジュールにて対応可能です。
6.固定・フリー・ハイブリッドの各運用を同時に設定することは可能ですか?
A.標準機能で対応可能です。自社に最適なロケーションの運用提案も実施ています。
7.ピッキングエリアとストックエリアの補充ルール(タイミング・優先順位)はどう設定しますか?
A.ピッキングエリアに補充点を設定します。ストックエリアの発注点と同じような扱いです。
8.同一SKUが複数ロケーションに分散した場合、自動的に統合指示を出せますか?
A.1つの出荷指示データでロケーションが割れた場合は、それぞれのロケーションがハンディにガイダンスされます。
9.誤棚入れ(誤ロケーション登録)を防ぐための検知機能はありますか?
A.棚入れ処理時にハンディターミナルでチェック機能があります。
10.ロケーションごとの滞留在庫(動きのない在庫)を可視化できますか?
A.一定期間(指定可能)動きのない在庫を一覧で抽出可能です。
11.ロケーション単位の生産性(ピッキング頻度・作業回数)を分析できますか?
A.ロケーション単位の生産性の分析は標準機能ではありませんが、カスタマイズモジュールにて対応可能です。
12.一時ロケーション(仮置き・検品中エリア)を柔軟に管理できますか?
A.ロケーションマスタで柔軟に設定可能です。引当不可のロケーションも設定可能です。
13.出荷頻度に応じたロケーション再配置(ABC分析に基づく)機能はありますか?
A.標準機能ではありませんが、カスタマイズモジュールにて対応可能です。
14.ロケーション単位で在庫の有効期限・ロット・残量を一覧できる画面はありますか?
A.在庫一覧画面でロケーション単位、ロット、有効期限の単位で在庫確が確認できます。
15.固定ロケーションからフリー/ハイブリッドに移行する際の運用負担は大きいですか?
A.システムの方は設定とデータ変更のみですが、実際の運用では棚替えが発生するので、現場負担は軽くはありません。
16.TMSや販売管理システムとの連携は標準で可能ですか?
A.DB連携、テキスト連携、API連携が可能です。
まとめ
倉庫作業の効率化や精度向上の鍵となるのがロケーション管理です。
在庫が「何がどこにあるか」を誰もが把握できるようにすることで、ピッキング時間の短縮や在庫精度の向上、ひいては顧客満足度の向上に直結します。
本記事で解説したように、WMSを活用したロケーション管理の導入によって、倉庫内のムダを省き生産性を高めることが可能です。
ぜひ早めに適切なロケーション管理を取り入れ、貴社の物流現場の改善に役立ててください。