「医療機器、介護入浴装置、リハビリ機器というのは特殊性が高い。品質の問題や精密機器特有の運ぶ時の難しさ、薬事法からみの問題もある。」
精密機器を運ぶにはトラックにエアサスがついていれば運べる。しかし医療機器や福祉機器はそう簡単にはいかない。医療や福祉の機器類は非常に繊細且つ高価だ。またもし運送中に破損・故障が発生すると人命にもかかわる大問題となってしまう。
さらに医療や福祉機器は精密機器でありながら、意外と簡易梱包である商品が多いという。トラック輸送時に絶対に荷崩れしないように固縛(こばく)する特別な技術も必要になってくる。
瀬戸内事業部の井上 寿夫部長の言葉には長い間、親会社であるオージー技研株式会社の医療機器や福祉機器の物流を支えてきた自信が感じられる。
オージー物流の親会社であるオージー技研は岡山市中区の海吉に本社を構え、生産から保管、出荷まですべてを本社で行う小さな医療機器メーカーであった。
第一号製品の低周波治療器から始まり、電動型間欠牽引装置、マイクロ波治療器など、医療の現場で強く望まれている商品を積極的に開発することで着実に実績を重ね、時代の流れとともに福祉分野のリハビリ機器へと業務を拡張していった。
「オージー技研の売上が急速に伸び、製品の在庫もそれに比例して急増した。」
製品群も増えてきて、本社機能、工場機能、倉庫機能全てを海吉にある本社だけでまかなうことが不可能となり、同県にある瀬戸内市の邑久町に第二工場を作って機能を分散した。
その後も業務の拡張はさらに進み、邑久町の第二工場を第一倉庫、第二倉庫、第三倉庫、第四倉庫と増築を進めた。
もともとオージー技研の営業部の中に物流課(業務課)があったが、売上急増にともない物量が増えてきたことで、邑久に増築された第四倉庫がオージー物流の倉庫となり、この2016年2月で7期目を迎えることになる。
邑久の第四倉庫にオージー技研で生産された製品を保管し、得意先へ出荷する業務を請け負う形でスタートした同社は、2012年に同県の早島に低温物流センターを新設した。同センターではドライから冷蔵、超冷凍までの食品を保管する設備を備えており、今後は医療機器などの特殊機器だけではなく、食品物流にも力を入れていく構えだ。
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また当初はオージー技研の製品のみを取り扱っていたが、資材や補修部品(サービスパーツ)の取り扱いも準備を進めており、製品の最終工程だけでなく構内物流まで幅広く業務を拡大していく。
「物流のプロとしてもっとIT化し、品質や効率を上げる必要がある。物流データの一元管理も技研(親会社)ではなく、物流側で主導権を握ってもっとスピード化を図らなければ、競争力がなくなる」(井上部長)
「技研の方は大手システムベンダーよりERPを導入している。総合的な機能は色々あるが、機能が偏っており、特に物流に関する機能については、現場では使えない」ことから、基幹システムであるERPとは切り離した形で倉庫管理システム(WMS)の必要性を強く感じ始めていた。
ERPにも在庫管理の機能はあるが、ロットのトレーサビリティやフリーロケーションの機能がない。ERPはその性質上、販売系に依存しているため、ピッキング指示やどの便で出荷するなどの、物流としてこだわりたいところも機能として足りていない。
こうした機能はカスタマイズによる作り込みになるが、ERPに機能を拡張するとなると時間も費用もかかる。また技研側の開発プロジェクトが優先される為、グループ会社でありながら、物流側で必要な機能を開発する為の予算取りや開発リソースの確保は困難を極め、やらなければならないことが沢山ある中で、それを自社で思うようにコントロール出来ない歯がゆさがあった。
そうした思いから、倉庫管理システム(WMS)の導入を本格的に検討するプロジェクトをスタートした。
大阪に本社を構えるデジタルピッキングとデジタルアソートシステムのメーカーである株式会社アイオイ・システムと広島に本社を構える倉庫管理システム「INTER-STOCK」のパッケージメーカーのオンザリンクスにシステム開発を委託した。
ERPの導入では、要件の定義に数ヶ月をかける。また要件定義で全てが決まってしまうため、導入後に機能を変更することが出来ない。今回のプロジェクトを通して開発期間の短縮や開発コストの面で、ERPとの大きな差を感じたと言う。
ある程度倉庫管理パッケージとしての標準機能で業務の大枠は捉えられており、システムを使っていきながら、運用に合わない箇所を修正していくというアジャイル方式に近い形での導入がとても上手くハマった。
「事前の要件定義フェーズが少なかった分、実際の導入時に現場運用と合わない場面もあり、そこは反省材料として残っている」としながらも、現場で運用に合わせながら柔軟な対応が行えたことに満足を見せる。
デジタルピッキングシステム(DPS)、デジタルアソートシステム(DAS)、倉庫管理システム(WMS)を邑久部材センターに一気に導入をすると、続いて同センターから車で7分程の場所に本格的な営業倉庫として豆田ロジスティクスセンターを新設した。ここでも「INTER-STOCK」を倉庫管理システム(WMS)として導入した。
結局この豆田ロジスティクスセンターは後に営業倉庫としてではなく、製品倉庫としてその役割を変えたため、倉庫管理システム(WMS)の機能をフル活用することができなかったが、それでも新しい物流センターで運用を少し工夫すれば、システムがすぐに利用できたという実績は今後の、展開への自信にもなった。
「担当者が代わってもシステムの操作を覚えるだけですぐに利用できる。アナログからデジタルになり、今はまだ第一歩、二歩の段階。オンザリンクスさんに柔軟な対応をしていただいて、自分達も導入して初めて気づく点なども多かった。そうした中で自分達も色々と物流の勉強をしながら、もっとああしたい、こうしたいと思いながら、ここまでやってきた。ようやくシステム的なことが色々と自由度を高めて出来るようになってきたので、今後は1つのアイテムでどれくらい作業に時間がかかっているかなど、生産性向上につながるような改善を行っていきたい。色々とお願いしたいことがあるので、これからも色々お願いしたい。」(吉岡課長)
「物流側で情報の主導権を握ることが出来たことにより、出荷ABC分析でロケーションを変えてみるとか、そういったことが好きに試せるようになったことは大きい。」(井上部長)
アナログだった物流から、入荷検品はハンディターミナルでリアルタイムに在庫計上し、ピッキングをデジタルピッキングで効率化し、最終の仕分け作業はデジタルアソートで目視作業を撤廃した。
こうしたシステム化を短期間で実現できたことが布石となり、現在はオージー技研の資材品の物流を管理する為の機能拡張を行っている。
「オージー技研の製品の運送は他社の物流会社も嫌がるくらい高度な運送技術が求められる。
そうした運送をこれまで高い品質で支えてきた自信がある。
我々が培ったノウハウで、他社の精密機械など、保管から輸送まで一手に任せてもらえるような物流を手掛ける事と、岡山県と言う土地の利を生かし県内はもとより中四国及び関西地区を見据えた広範囲な物流提案に取り組み、躍進する年にしたい」
(瀬戸内事業部 内田 裕治課長)
人の命を預かる医療機器、福祉機器の物流を通して、「心と心が通い合う空間」、「人と人との繋がりを
大切にした医療・福祉環境」を創造していく為に、同社は安全な品質と確かな技術で事業を拡大していく予定だ。