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2019年10月01日配信分
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顧客のニーズを受け入れた市場主義の在庫戦略とは!?

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画像素材:ZARost / PIXTA

 

<目次>
1.製品ではなく、顧客にとっての価値を提供する
2.あなたの会社の在庫管理は市場志向?
3.曖昧なリードタイムの定義
4.まとめ

 

●1.製品ではなく、顧客にとっての価値を提供する

 

ローランド・ヒルはイギリス郵便制度の改革者であり、「近代郵便制度」の父と呼ばれています。
郵便制度はシーザーの古代ローマ時代から存在しており、帝国の隅々まで配達人たちが郵便物を届けていました。
十七世紀の半ばには、他のヨーロッパ諸国も神聖ローマ帝国にならい、ヨーロッパの偉大な書簡作家たちが多くの手紙を書きました。

しかし、当時の郵便料金は受取人払いであり、距離と重さによって料金が計算されていました。
料金は高く配達の時間もかかりました。いちいち重さを量らなければならなかった為です。
ローランド・ヒルは、この料金を距離に関わりなく一律にしました。料金は印紙を貼ることで差出人が前払いとしたのです。

このシステムにより、一夜にして郵便は便利で簡単になりました。
値段も安くなり、投稿さえすればよくなりました。こうして近代の郵便制度が生まれたのです。

このイノベーションの重要な点は郵便が便利になり誰でも利用できるようになったことです。
誰もが手紙や請求書を郵便で送れるようになり、爆発的な伸びを見せ、値段も無視できる水準になりました。

とても事業として成り立つとは思えなかった宅急便。
無謀ともいえた郵便小包へ挑戦し、現在の宅配の基礎を築いたのは「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である小倉昌男氏です。

宅急便は小倉氏の発案によって、昭和五十一年二月にスタートしました。
それまで家庭から荷物を送るには、郵便小包以外に方法がありませんでした。
宅急便はそこに殴り込みをかけたのですが、当時ヤマト運輸の試みは誰もが失敗すると考えていました。

個人の家庭の荷物を取り扱うと集配効率が悪いため郵便局だけが独占する個人宅配市場を奪うことは不可能だと誰もが考えたのです。
しかし、小倉氏は全国規模の集配ネットワークを築けばよいと仮説を立て、視察に訪れたマンハッタンの街角で活躍するUPSの集配車を見て成功を確信したのです。

顧客にとって「真のサービスとは何か」「真の効用は何か」を追求することで、顧客が目的を達成するうえで必要なサービスを提供することが出来るのです。

顧客の事情を顧客のニーズの一部として受け入れ、メーカーにとっての製品ではなく、顧客にとっての価値を提供する戦略です。
このような戦略はリスクを伴いますが、市場志向、市場中心でありイノベーションの値打ちとしては非常に高いものです。

 

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●2.あなたの会社の在庫管理は市場志向?

 

在庫管理といっても「ダブル瓶方」「三棚方」「不定量発注法」「3点管理法」など色々な管理方法があります。
実はこうしたすべての在庫管理方法は発注のタイミングと量を決めているだけなんですね。
つまり、在庫管理=発注管理であるといっても過言ではないのです。
ということは、在庫管理とはそもそもどれだけ売れるか、どれだけ売るかというのが管理の出発点になるわけです。

しかし、多くの企業では在庫管理ではなくモノの数量の管理する「保管管理」に終始してしまっています。
備品や消耗品の在庫管理であればそれで十分ですが、顧客に提供する製品や商品となるとそれだけでは足りません。
在庫とは顧客のニーズ(需要)を満足させるために持つものです。
であるならば、市場のニーズ(需要)に合わせて製品(商品)を過不足なく供給するための管理を目指さなくてはならないのです。
すなわち顧客にとっての価値を提供する在庫戦略です。

皆さんの会社の在庫管理は自社の都合を優先した保管管理になっていませんか?
保管管理では在庫を合わせること、記録に重点が置かれていますが、市場志向型の在庫管理では在庫数量のコントロールに重点が置かれています。

保管管理には「需要」という概念が管理の中に存在しません。
しかし、市場志向型の在庫管理では「需要」にフォーカスして管理します。これを「需要連動型在庫管理」と筆者は呼んでいます。

先に書いた通り、在庫管理が発注を管理することであるならば、いつ、どれくらい発注するかは未来の需要を予測するしか方法はありません。
つまり重要なのは需要情報なのです。
しかし、需要予測というと何か複雑で高額なシステムを導入しなければならないと考えがちですが、決してそんなことはありません。
エクセルで組める簡単な計算式でも十分に効果を発揮する需要予測が可能です。

その方法については、以下の記事を参考にしてください。

将来に向けた効果的なロジスティクス・マネジメントを推進しよう ~在庫管理マネジメント編~(4)
3点在庫最適化法とは?3つの数字を管理するだけで劇的に在庫が改善!!

※新商品や需要の変動が不規則で激しい商品の場合は専用の需要予測システムをお勧めいたします。

 

また上記の記事以外にも需要を予測するモデルを紹介した書籍は沢山ありますので、そちらをご参考下さい。
ここで少しだけ簡単に解説すると需要予測には大きく3つに分類されます。

 

1.人的予測

人の経験と勘で予測する方法です。実はこれも立派な需要予測なのです。
場合によってはこちらの方が精度が高いこともありますが、管理点数が100を超えたあたりから運用が破綻し始めます。

 

2.簡易な統計予測

簡易な統計予測で代表的なのは移動平均法・指数平滑方・季節変動法の3つです。
簡単な計算式でエクセル等でも作成可能です。多くの場合はこれだけでも十分に効果を発揮します。

 

3.高度な統計予測

数学モデルを駆使した高度な需要予測です。
自社で構築も不可能ではありませんが、専門のシステムを導入する方が無難です。
費用も高額なものが多く、導入に関しても専門のコンサルタントに依頼することをお勧めします。

 

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●3.曖昧なリードタイムの定義

 

在庫管理を市場中心で考え、顧客のニーズに応える為には「需要」の他にもう一つ重要な要素が必要になります。
それが「リードタイム」です。
多くの企業ではこのリードタイムを加味せず在庫を管理しています。加味していたとしても、定義が曖昧です。

リードタイムは管理する品目毎に要素分解し、在庫管理で取り込むべきリードタイムを明確に定義する必要があります。

リードタイムには「調達リードタイム」「製造リードタイム」の2つがあります。
調達リードタイムは発注してから納入されるまでの時間、製造リードタイムは製造指示から生産完了し、納入されるまでの時間になります。

場合によっては、リードタイムを固定値で管理できない場合もあります。
毎回リードタイムが変動する場合は、平均値を設定する方法、変動率をかけて安全リードタイムを加味する等して対応すると良いでしょう。

海外から調達する場合はリードタイムが数週間~数ヶ月に及ぶ場合もあります。
そのような場合には安全在庫が増えてしまいますので、常に在庫過剰の状態で管理することになってしまいます。

リードタイムを縮めるか、ある程度欠品を許容して安全在庫を抑えるしか方法はありませんが、欠品しそうになった場合に空輸などを使ってリカバリーできる方法を予め検討しておくのも有効です。

 

●4.まとめ

 

在庫管理を単なる保管管理で終わらせることなく、顧客のニーズを受け入れた市場主義の在庫戦略に昇華させるには、需要予測とリードタイムを在庫管理に組み込む必要があります。

在庫管理についても、顧客にとって「真のサービスとは何か」「真の効用は何か」を追求することで、顧客が目的を達成するうえで必要な価値を提供できるイノベーションを創出することが十分に可能なのです。

 

業種別物流改善20のヒント

 

<参考文献>
P.F.ドラッガー著「イノベーションと企業家精神」ダイヤモンド社
小倉昌男著「小倉昌男 経営学」日経BP社
野中郁次郎著「直観の経営」KADOKAWA
石川和幸著「在庫マネジメントの基本」日本実業出版社