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2019年10月15日配信分
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在庫を最適化して利益を生み出すための管理指標

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画像素材:tashatuvango / PIXTA

 

<目次>
1.ユナイテッドアローズ経営の最重要課題
2.在庫マネジメントの要件が変化
3.利益を生み出すための管理指標
4.まとめ

 

●1.ユナイテッドアローズ経営の最重要課題

 

全国に約230店舗のセレクトショップを展開する業界最大手のユナイテッドアローズは在庫戦略を経営の最重要課題としています。
何故なら同社の売上高は毎年右肩上がりで成長していますが、利益は在庫水準と反比例するかのように激しく変動しているからです。
同社の2014年度の売上高は約1300億円で利益は過去最高となる約137億円でした。
このときの在庫回転期間は1.7ヶ月です。その後も売り上げは増収傾向でしたが、利益は減収に転じていったのです。
2018年度の売上高は約1600億円ですが、利益は110億円でした。このときの在庫回転期間が約2ヶ月です。

売上が上がっても在庫回転期間が延びることで利益が縮小していることが分かります。
12年末以降に急激に進んだ円安も利益縮小の要因の一つではあるのですが、14年から全商品の値上げを行った結果、消費者の間で高値のイメージが強まり、在庫が増加し、在庫回転率が低下したことが一番の要因です。

在庫の回転率が小売業の事業経営に与えるインパクトの大きさを物語る事例の一つです。

 

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●2.在庫マネジメントの要件が変化

 

在庫管理はよくダイエットに例えられます。一時的に在庫が減ったとしても、すぐにリバウンドしてしまうからです。
経営層からの指示で在庫削減を行っても、結局在庫マネジメントのベースがこれまでと同じなので、これまで通りの日々の運用によって数か月後には元に戻ってしまうのです。

そうならないために、在庫の運用プロセスの中に在庫を監視、抑制する仕組みが必要です。
適切な在庫で持続可能な最適化マネジメントを実現するためのセンサーを設けるのです。

在庫管理の為の管理指標は一般的なものから、少しマニアックなものまで沢山あるのですが、今回は利益を生み出すための管理指標としてこれだけは抑えておきたいという指標について3つ皆さんにご紹介したいと思います。

ここ最近、在庫マネジメントの要件が変化してきています。
在庫削減や業務効率化などの従来のテーマに加えて、在庫を経営判断に用いたいといった要件です。
在庫をモノとして管理するだけでなく、金額として捉えて事業経営に活かしたいということです。

確かに在庫を数量だけで管理していると、需給調整には成功しても利益が出ないという事態に陥ってしまいます。
在庫を計画、マネジメントする際にモノとカネの両面で捉えていく必要があります。
在庫をこの両面で捉えることによって、経営層や財務部門は適切な意思決定を下せるようになるのです。

 

●3.利益を生み出すための管理指標

 

在庫を管理するにあたり、最も基本となる指標は「在庫月数」「在庫回転率」です。
在庫月数と在庫回転率はどちらも自社の在庫効率を測るための数値です。
どちらを使うかは自社で効率が把握しやすいと思った方を利用すれば良いです。

 

1.在庫月数

在庫月数は売り上げに対して何ヶ月分の在庫があるのかを測定する指標です。
金額ベースで求める場合と数量ベースで求める場合があります。以下の式で求めることが出来ます。

 

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たとえば、在庫金額が1000万、月間売上金額が500万とすると、1000万÷500万で在庫月数は2となります。
つまり自社にある在庫を全て売るには、理論上2ヶ月かかるという算段になります。

在庫月数は、分母を「売上原価」や「製造原価」にして利用することも可能です。
売上ベースで見るか、仕入・製造ベースで見るかの違いになります。
また分子となる在庫の方は、前月末在庫と当月末在庫の平均値をとる方法と、月末在庫をとる方法があります。
会計的には平均値をとる方法が正しいですが、実務上は月末在庫でも問題ないでしょう。
こちらも自社で運用しやすい方法で構いません。

 

2.在庫回転率

在庫回転率は在庫月数の分母と分子を逆にしたもので、以下の式で計算します。

 

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こちらも在庫月数と同様に金額ベースか数量ベースかを選択します。

在庫金額が1000万、月間売上金額が500万とすると、500万÷1000万で在庫回転数は0.5となります。
つまり、一ヵ月間で在庫を0.5回転させることが出来ると言うことになります。
表している結果は在庫月数と同じですから、在庫月数と在庫回転数の両方を指標として設定する必要はありません。
どちらか一方を選択して下さい。

 

3.在庫交叉比率

在庫をキャッシュ収支の視点から捉えるのに最も簡単に活用できるのが「在庫交叉比率」です。
売上を確保するために在庫不足が起こらないようにする一方で、在庫を持ちすぎるとキャッシュ収支が悪化します。
売上上位の商品が実はキャッシュ収支を悪化させていたというのはよくある話です。

しかし、上でご紹介した在庫月数や在庫回転率は、在庫をどれくらい持っているかを把握することは出来ますが、その在庫が儲かっているかどうかを判断する指標にはなりません。
在庫がキャッシュを生み出しているかどうかを見るための指標が在庫交叉比率であり、以下の式で計算します。

 

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在庫回転率は金額ベースで計算した結果を用います。粗利益率は売上粗利益額÷売上額で算出します。
キャッシュを生み出して儲かっている商品ほど在庫交叉比率は高くなります。
在庫交叉比率はこれまで小売業において重視される指標とされていましたが、多品種少量の現代ビジネスにおいては製造業でも重視される傾向にあります。

 

●4.まとめ

 

厳しい経営環境のなかで、企業はさらなる経営の効率化、コスト削減が求められています。
こうした企業の課題の中で「在庫管理」というテーマはますます重要度が増してきており、高いレベルのマネジメントが求められるようになってきました。

筆者はこのような時代に「在庫管理は経営」であると主張するとともに、高度な在庫マネジメントが企業の喫緊の課題であるとあらゆる場面で啓蒙しています。
キャッシュフロー重視、スピード重視が求めらる経営環境において在庫管理の重要性は高まるばかりだからです。

まずは今回ご紹介した3つの数字を管理するだけでも、自社の在庫水準を知り、在庫を最適化するための道標になるはずです。
少しでもみなさまの在庫管理の参考になれば幸いです。

 

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<参考文献>
伊橋憲彦著「上手な在庫管理のやさしい手引き」中経出版
石川和幸著「在庫マネジメントの基本」日本実業出版社
光國光七郎著「在庫と事業経営」日科技連