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2019年11月06日配信分
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在庫マネジメントの潮目が変わる!”在庫見える化”から”利益最大化”へ

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画像素材:Graphs / PIXTA

 

<目次>
1.在庫マネジメントの究極の目的とは何か
2.どの在庫に引き当てれば利益が最大化するのか?
3.顧客ニーズとコストの観点から在庫を引き当てる
4.まとめ

 

●1.在庫マネジメントの究極の目的とは何か

 

これまで、多くの企業では物理的な現象としての在庫を統制し”見える化”のための在庫マネジメントを行っていました。
そのため在庫マネジメントは戦術の域を超えず、企業戦略の中枢として語られることはあっても、経営として実践される
ことは少なく、この分野で日本は出遅れているも言われています。

サプライチェーンマネジメント(SCM)において在庫管理はその核となるものです。
SCMは製造業の話。と思われている方が多いようですが、実は物流領域がSCMの中枢です。
荷主企業と複数の配送キャリア(運送会社・3PL)、複数の物流センターとの関係はまさしくサプライチェーンそのものです。

TOC理論は物理的現象でしかなかった製造資源のマネジメントを戦略レベルまで押し上げて世界中でその成果が確認されました。
制約条件(ボトルネック)を特定し、その制約条件に合わせて生産をコントロールすることで、スループット(処理能力)を最大化するというこの方法は、何も製造業だけに有効なものではありません。

TOC理論についての詳細は割愛させて頂きますので、興味ある方は以下の著書を読んで見てください。
TOC理論を学ぶのに最も手っ取り早い「ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か」です。

 

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製造業向けの本と思われていますが、ロジスティクスやマーケティングなどチーム活動によって成果が求められる分野であれば、何にでも応用出来ると筆者は考えています。
特にロジスティクスとは相性が良いと思います。

TOC理論を例として取り上げましたが、在庫マネジメントは常に経営視点と現場視点が複雑に絡み合います。
この複雑な絡み合いは、管理者の経験と勘という暗黙知として蓄積されてきました。
だからこそ、在庫マネジメントは”見える化”から”利益最大化”する為の戦略へとシフトしていくことが重要なのです。
そして今、その潮目が変わる時が来ているのです。

 

●2.どの在庫に引き当てれば利益が最大化するのか?

 

実店舗を保有する企業がオンラインで商品を販売して、売り上げを急増させた事例をネットや雑誌の記事で良く見かけます。
そうした企業のオンライン販売サイトを覗くと、各社「当日配送」や「送料無料」を宣伝文句に他社と差別化を図っているようです。

こうした企業はオンラインの顧客から入ったオーダーを一体どこの在庫に引き当てしているのでしょうか?
関東にある物流センターでしょうか。それとも最寄りの実店舗でしょうか。
オンラインで利益を急増させているということは、きっと会社の利益が最大になる在庫が引き当てされる仕組みが働いているのではと想像してしまいます。

実店舗を保有しながら、オンラインでも販売するオムニチャネル戦略で成功している企業の多くは、全国にある実店舗と複数拠点に点在する保管型物流センター(DC)の在庫を一元管理しています。

オンラインで注文を受けると受注オーダーを管理するシステムが、顧客の指定した納期を満足することが出来る在庫を抽出します。
そこからさらに、運賃等を加味したトータルコストが最も安くなる在庫を選んで出荷指示を出します。

実は、今後のWMS(倉庫管理システム)市場においては、このトータルコストを加味した在庫の引当機能が大変重要な意味を持ちます。
ERPや在庫管理システムの導入によって、見える化が進んでサプライチェーン上のどこからでも出荷できるようになりました。
すると今度は、注文をどの在庫に引き当てればトータルコストが最も安くなり、利益を最大化することが出来るのかという視点が生まれたのです。

こうした機能については、これまで既存のシステムには全く無い機能でした。
そして各社がシステム構築を急いでいます。
以下の図はオムニチャネルにおけるネットワーク在庫の構成です。
図中のネットワーク在庫の階層でサプライチェーン上の全ての在庫を見える化して一元管理しています。
物流センターの在庫だけでなく、実店舗にある在庫、移送中の在庫、さらには発注済みの入荷予定の在庫まで全てが引当対象になっています。

 

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●3.顧客ニーズとコストの観点から在庫を引き当てる

 

ネットワーク上の全ての在庫(物流センター・実店舗・移送中・入荷予定)に対して、どの在庫を引き当てれば、トータルコストを最小化し、利益を最大化出来るのでしょうか。
このような議論は漠然と物流部門やロジスティクス部門で検討されることはあっても、実運用の中で管理対象として取り上げられることはありませんでした。
しかし、欧米では荷主企業のフルフィルメント部門がそうした実務を行うことが一般化しています。
国内企業でこうした部門が設置されている例は稀です。

では、実際にサプライチェーン上に実在する全てのネットワーク在庫を引き当てる際、どのような判断基準とパラメータが必要になるのでしょうか?
以下の図は在庫を選択する上で考えられる一般的な判断基準を優先順で表したものです。

 

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1.拠点キャパシティ

各拠点の1日当たりの出荷可能量を超えた在庫引当が行われると、実際に現場で出荷が出来なくなってしまいます。
よって、このパラメータが最優先されます。

 

2.輸送キャパシティ

拠点によって利用する配送キャリアは異なります。
同一のキャリアであっても、エリアによって輸送可能なキャパシティも異なります。
最近では出荷量制限をかけるキャリアも増えていますので、このパラメータの重要度は高まっています。

 

3.リードタイム

顧客のニーズを満足するリードタイムが可能な在庫を引当します。
この場合、リードタイムが最短であるかどうかではなく、顧客のニーズを満足しているかどうかが重要です。
可能なリードタイムと顧客のニーズに余裕がある場合は、最短のリードタイムで出荷するのではなく、出荷量の少ない曜日等にスライドして引き当てを行うといったより高度な引き当てを行うことも可能でしょう。
手持ち在庫が無い場合は、調達リードタイムを含めたトータルリードタイムを判断基準とします。

 

4.輸送コスト

コストは判断基準の中で最も優先度の低いパラメータとなります。
但し、リードタイムとコストのどちらを優先するかは、企業の戦略によっても変わります。

 

運賃の値上げによって企業のコストバンランスは根底から崩れてしまいました。
どこの在庫を引き当てるのかといった判断次第で、利益や売上が大きく左右されるようになりました。
ここで注視しなければならないのは、上記の2~3までのパラメータは全て配送キャリアが主導権を握っているという事実です。
つまり、TOC理論に準えるとボトルネックは配送キャリア(運送会社)と言えます。

配送キャリアを中心にフルフィルメントを設計し、トータルコストを抑え、利益を最大化する先端的な倉庫管理システム(WMS)がいま求められているのです。

 

●4.まとめ

 

今回ご紹介したような最先端の在庫引当システムを導入している企業は国内ではまだほとんどありません。
先進企業でもネットワーク在庫を一元管理して見える化するレベルにとどまっています。
在庫見える化は必要条件に過ぎません。
トータルコストを加味して利益を最大化する引当システムを構築しなければ、企業の利益は物流に飲み込まれてしまうことでしょう。

 

輸快通快④