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2019年12月10日配信分
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経営者が知っておきたい物流拠点戦略の実践的なノウハウ

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画像素材:麦わら帽子 / PIXTA

 

<目次>
1.運賃値上げ時代による物流コスト増の打開策
2.物流拠点戦略の2つの形態
3.物流サイズをスモール化
4.拠点分散化時代を支える新たなサービス
5.まとめ

 

●1.運賃値上げによる物流コスト増の打開策

 

「運賃値上げによる物流コスト増で困っている」。
物流デジタル化の為のIT導入支援を行っている筆者の元には、全国からこのような相談が相次いで寄せられます。

例えば、つい先日の関西物流展のセミナーに参加頂いた美容品の販売会社から「物流コストが年々上昇して、打つ手がないが皆さんどうしているのか?」と藁をも掴む思いで相談がありました。

随分と困っていらっしゃるようでしたので、早速展示ブース内に設置してあった小さなイスに座って頂きゆっくりとお話を聞かせて頂くことにしました。
詳細に話を伺うと、この2年で運賃が2倍に増えてしまったというのです。
追い打ちをかけるように取引先の小売業者からは、同類の商品を扱っている競合卸売会社の金額を引き合いに厳しい値下げ交渉をされて困っているとのことでした。

物流の機能を大きく分類すると、「保管」・「荷役」・「配送」に分かれます。
JILS(日本ロジスティクスシステム協会)が作成した2018年度の物流コスト調査報告書によると、保管費が14.2%、荷役費が31.2%、配送費が54.6%で配送費が最も割合が高いことが分かります。
この結果を見れば、物流コストを抑えるには配送コストを削減することが一番効果的だということが一目瞭然です。

 

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(出典:日本ロジスティクスシステム協会作成2018年度物流コスト調査報告書)

 

過去には配送コストを削減する為に、運送会社に過度な値引き要求を行う企業も少なくありませんでした。
つまり、それが荷主企業にとっては一番手っ取り早い物流コスト削減戦略(?)だったのです。
しかし、物流が売り手市場となってしまった今では運送会社との料金交渉は、これ以上の値上げ要求を受けないように注意を払う程度でしょう。
配送コストを削減するもう一つの方法は物流拠点の再構築です。
拠点再構築で着目すべき点は、保管コストの低減・配送距離の短縮化・拠点統廃合による物流管理コスト削減です。

 

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●2.物流拠点戦略の2つの形態

 

物流拠点戦略には、大きく2つの形態があります。「集約型」「分散型」です。

集約型は工場近辺、空港や港の周辺に大型物流センターを設置して、在庫を集約する方法です。
集約型のメリットは在庫管理コストが削減され、在庫も圧縮させることでキャッシュフローの向上が図れる点です。
在庫拠点を削減すれば、各拠点で持つ必要のあった安全在庫が1点に集約されるため、その分在庫は減ります。
デメリットは遠隔地への配送コストが上昇する点です。

一方、分散型は全国の顧客企業や消費地の近隣に比較的小規模な物流センターを設置する方法です。
分散型のメリットは、配送リードタイムを短縮し、配送コストを削減できる点です。
デメリットは在庫を複数の拠点に分散させるため、全体としての在庫量が増えること、またその在庫管理コストや集約センターから各拠点への在庫補充の運用が負担となる点です。

また同一商品であっても、拠点毎によく動く商品、あまり動かない商品が発生することから、各拠点で安全在庫や発注点を設定して運用する必要があるため、高度な在庫マネジメントが要求されます。

今から10年ほど前はSCMやキャッシュフロー経営の普及によって、「在庫=悪」という概念が広がり、在庫削減の取り組みが強化されたことから拠点集約型の戦略が主流でした。
しかし、ここ数年は運賃値上げによって従来のコストバランスが大きく崩れてしまったことにより、在庫コストよりも配送コストやリードタイム短縮を優先する企業が増えており、分散型へシフトしています。

 

●3.物流サイズをスモール化

 

物流拠点を分散化するもう一つの大きなメリットは、1拠点の物流サイズをスモール化することが出来る点です。
昨今の物流労働人口の減少により、庫内スタッフの確保は各企業頭を抱える大きな課題です。
集約型で必要となる大型物流センターでは、多くの庫内スタッフを確保する必要がありますが、分散型では少数スタッフで運用が可能になります。

もう一つ重要な考え方が、輸送費が上がっても、物流コストが上がらなければ結果としてOKというもの。
つまり輸送費が上がった分を他で削減すれば良いわけです。
物流センターには必要最小限の在庫しか置かないようにして、顧客の出荷需要に合わせて必要な量を必要な拠点に補充する仕組みが構築できれば、集約化と同レベルの在庫量で配送コストを削減し、物流コストを下げることも可能になるのです。
こうしたトータルコストアプローチにはITによるデータ活用が不可欠です。

また輸配送のインフラを小さく区切って使い分けを行うことでコスト削減が可能です。
納品エリアを「遠方」「地場」「首都圏」の3つに区切って、それぞれに適した輸送方法を組み立てるといったアプローチです。

例えば、「遠方」エリアは路線会社による納品、「地場」は自社配送による納品、「首都圏」は専門の物流会社による共同配送の利用といった具合です。

 

●4.拠点分散化時代を支える新たなサービス

 

先日の関西物流展で、倉庫のマッチングサービスをネットで展開している株式会社soucoの中原社長とお会いしました。
soucoのマッチングサービスでは、非常に短いリードタイムで小規模な保管スペースからマッチングが可能ということで、全国で利用が広がっているそうです。
従来は、荷主企業が倉庫を探すとなるとなかなか自社の要件にあった物件を見つけることは困難でした。
荷主と倉庫をマッチングするのはとても難しいとされていました。
同社のサービスでは、賃貸物流施設を区画単位で借りる方法と、既に稼働している営業倉庫と契約する方法の2通り選択可能です。

物流の労働人口が減少する中、庫内スタッフやシステムの手配を必要とせず、営業倉庫のスペースのみをすぐに借りれるというのは、拠点分散化が進む時代のニーズにも非常にマッチすると思います。
こうした次々に生まれる新たなサービスを積極的に活用するのも重要なことです。

 

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●5.まとめ

 

物流というのは、荷物を保管して運ぶだけのシンプルな機能ですが、その物流の管理やコントロールは非常に複雑であり、高度な知識と仕組みが必要とされます。
海外ではロジスティクスを専門に学んだ学生が優良企業に好待遇で採用されるのが当たり前となっています。
物流はサプライチェーンマネジメント(SCM)やロジスティクスの専門的な知識と、それを支えるシステム(IT)が融合して初めて企業の競争力となります。
今回ご紹介した物流拠点戦略は非常に基本的なことですが、こうした戦略が世の中の物流事業者から荷主企業に提案されるケースはほとんどありません。

であれば、自社の物流をどのように設計するかは、経営者がしっかりと知識を蓄え戦略に落とし込んでいかなければならないということです。
物流拠点を分散化し、物流サイズをスモール化することでトータルコストを抑え、運賃値上げ時代でも利益を確保することが可能です。
本稿を参考に、自社の物流を根本的に見直し、事業の成長につなげていただければ、筆者としてこれに勝る喜びはありません。

 

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輸快通快⑤