経営者のための物流DX実践ガイド⑩ ~物流ドローン編~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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経営者のための物流DX実践ガイド⑩ ~物流ドローン編~

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 画像素材:metamorworks/PIXTA

<目次>

1.空の産業革命に向けたロードマップ2020

2.物流ドローンが抱える課題

3.期待される物流DXの先兵的役割

 


1.空の産業革命に向けたロードマップ2020

 

物流DXは単なるシステム化やIT投資の話ではなく、ビジネスを全く新しいやり方にするためにデジタルを活用することが
本来の意味であることはこれまでに何度もお伝えしました。しかし、物流DXを実現するためには、まず既存のアナログ業
務をデジタル化することが大前提となります。そして私たちベンダーの役割は、物流デジタル化による新たな世界観をみ
せていくことで、物流DXのアイディアの具現化をお手伝いすることだと思っています。

そこで、今回は物流ドローンの世界観について触れてみたいと思います。経営者の皆さんの物流DXのアイディアを膨ら
ませていただければ幸いです。

ドローンは、そもそもは軍事用途に開発されたものですが、近年はスマートフォンやインターネットと連携することによって、
その利用用途が急速に拡大し、ロジスティクス分野での実験や応用も始まっています。ECによる小型商品の宅配、離島な
どの遠隔地への食料品や医薬品の配送、災害時の生活必需品の配送など、ドライバー不足の解決策の一つとしてさまざ
まな選択肢が考えられています。

海外ではその実用化が先行しており、ドイツポスト傘下のDHLや米国のUPS、Amazonなどがすでに一部サービス範囲を限
定した格好で実用化を成し遂げています。ドローンにAI(人工知能)を搭載し、複数の配送先の経路探索、優先順位を判断
させて配送するところまで進んできています。一方国内では、物流ドローンの実用化に向けた取り組みが本格化したのは
2015年で、当時の安部首相が「3年以内にドローンを使った荷物配送を目指す」と方針を示しました。そして令和2年7月に
「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」が開催され、「空の産業革命に向けたロードマップ2020」が公開さ
れました。以下はそのロードマップの中で物流分野について記載されたていた図を抜粋しました。

■物流分野における空の産業革命に向けたロードマップ

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(出典:小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会作成 「空の産業革命に向けたロードマップ2020」より抜粋)

このロードマップによれば、2022年以降都市を含む地域における荷物配送を実現することになります。ドローンには飛行レベル
が4つに整理されています。目視内での操縦飛行がレベル1、目視内での自動飛行がレベル2、無人地帯での目視外飛行がレ
ベル3、有人地帯での目視外飛行がレベル4です(下図参照)。物流領域でのドローンの活用が本格化するには、レベル4に達
しなければなりません。国内のドローン実験レベルは現段階では3であり、今後レベル4に相当する都市部での実験が本格化
します。

■ドローンの飛行レベル

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(出展:KDDI)

2021年6月、KDDIは千葉県の幕張メッセで開催された「ジャパンドローン2021」に出展し、都市部での目視外飛行 (レベル4) に対応した
スマートドローンプラットフォームを展示しました。このプラットフォームは、航空機や他のドローンとの衝突回避機能を実現する管制シス
テムや、モバイル通信で遠隔でドローンを監視・制御する運航監視システムを備えています。(下写真)

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(出典:KDDI)


2.物流ドローンが抱える課題

 

このように官民が一体となって進めている物流ドローンの実現ですが、実用化に向けてはまだまだクリアしなければならない課題
が山積みです。1つは積載重量の問題です。一般的なドローンが運べる最大重量は10キロが限度であるため、運べる荷物は限ら
れてしまいます。もっと重たい荷物を運ぼうとするとドローンの本体を大きくする必要があり、そうなるとドローン本体の価格が大幅
に高くなってしまいます。本体が大きくなればその分飛行リスクも高くなります。

バッテリー容量の問題もあります。10キロの荷物を運ぼうとすると、20キロメートルが限度です。そして何より最大の課題は飛行の
安全性確保です。機体や搭載荷物の落下リスクが最も懸念されます。また悪天候時でも安定して飛行できる安全性も必要になり
ます。

法整備も進めていかなければなりません。航空法をはじめ、道路交通法や電波法などさまざまな法律を整備しなければ、物流ドロ
ーンを飛ばすことは叶いません。安全性を担保することが大前提となりますが、規制緩和や法の改正が急がれます。


3.期待される物流DXの先兵的役割

 

経済産業省は、令和3年度(2021年度)予算案で、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」に約40億円を充てることを決定しました。2020年度に続いて同じ名目での予算計上となりますが、2021年度から「空飛ぶ車」に関する内容が追加されています。また政府は2022年の有人地帯での目視外飛行(レベル4)の実現を目指し、ドローンの社会実装に向けて我々企業が活用可能な予算事業を以下の通り取りまとめています。

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(出典:経済産業省 「経済産業省ドローン関連予算」より抜粋)

昨年11月、佐川急便は離島や山間部におけるドローンを用いた複数拠点間輸送に関する実証実験を行うことを発表しました。
島根県の美郷町や香川県の土庄町、福井県の越前町などの地方自治体の協力の下、遠隔地から目視外ドローンを飛ばす計画
です。日本の物流ドローンの実用化は、まずは離島や過疎地といった配達効率の悪いエリアが対象となることは間違いないでしょう。
また交通弱者である地域住民や医療機関に生活物資や医薬品を供給する手段として重用されることが期待されます。

さらに今後の物流ドローンに期待される技術としては、ビッグデータの収集と分析機能、機械学習機能の搭載、IoTデバイスとの連携、
自動運転トラックやAGVとの連動、画像認識を用いた危険予測認知等です。物流ドローンの開発がレベル4まで進めば、物流DXの
先兵的役割を担い、物流の現場における省人化、無人化が一気に加速することでしょう。

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