共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~カスタマージャーニー~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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共同物流によるグリーン・ロジスティクスへの挑戦 ~カスタマージャーニー~

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 画像素材:Rawpixel/PIXTA

<目次>

1.カスタマージャーニーでプロセスを組み立てる

2.誰を顧客に設定するのか?

3.クリティカル・プロセスを捉える

 


1.カスタマージャーニーでプロセスを組み立てる

 

企業は顧客のニーズを満たし、貢献することで存続することが出来ます。自社の製品やサービスを選ぶかどうかの決定権は100%ユーザー側にあります。
企業はその決定をサポートすることは出来ても、決定する権利は1%もありません。つまり、当たり前のことかもしれませんが、顧客のニーズを満たし、顧客に貢献することを重視しなければ、企業は市場から沙汰されてしまいます。そこで手を抜くと、競合他社にあっという間にマーケットシェアを奪われてしまいかねません。顧客のニーズを探り、どのように貢献するかにフォーカスし続けると、どのような製品やサービスを提供すれば良いか、知ることができます。

共同物流は、顧客の満足追求を目的とした「物流サービス」を、コスト、品質、時間、環境からそれを提供するモノ、情報、サービスのプロセスを顧客の目でみて、顧客の満足度を評価する方法で組み立てなければなりません。顧客の目で自社のプロセスを見る方法に「カスタマージャーニー(顧客の旅)」というフレームワークがあります。これは決して新しいフレームワークではなく、2010年代のデジタルマーケティングで頻繁に用いられてきました。だからといって、使い古された時代遅れのフレームワークということでもなく、マーケティング以外でも例えば、顧客サポートセンターのサービスプロセスの設計等に用いられたりもしています。当然、物流サービスプロセスの設計にも利用できるわけです。

「顧客のことを考えて物流サービスを設計するのは当たり前だ!」といつものように叱られそうですが、ここで重要になるのは、どのように顧客のことを考えるかという視点です。1人で物流サービスを組み立てるのであればこのようなフレームワークは必要ないかもしれません。
しかし、物流サービスの設計、ましてや複数の荷主や物流事業者が一緒になって取り組む共同物流では、みんなが同じ視点で顧客のことを考えるというのはまず不可能です。そこで顧客の行動・思考・感情を時系列で見える化し、顧客とのタッチポイントを洗い出し、適切な場所・タイミングで適切なサービスや情報を提供する方法を見つけ出そうというのが、カスタマージャーニーです。適切なサービスや情報見つかるのはいいけれど、やることが増えてしまうと困ると考える人もいるかもしれませんね。しかし、サービスを付け加えるだけではなく、不要なサービスも見つけることができるのがこのフレームワークの利点です。顧客のニーズや欲求を深いレベルで理解するに従って、自社が提供するサービスや情報が顧客に対してあまり価値がなかったということにも気付けるのです。下図は物流サービスを例にカスタマージャーニをマップ化したものです。こうしたマップをジャーニーマップと言います。

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2.誰を顧客に設定するのか?

 

そしてもう一つここで重要なのが誰を顧客に設定するかです。通常の物流サービスであれば、物流事業者からみれば、荷主が顧客になります。自社で物流をするメーカーであれば、卸売業者や最終消費者ということになるでしょう。では、共同物流ではどうでしょうか?荷主が顧客である点については変わりないですが、複数の物流事業者が共同で行う場合は、物流事業者も顧客ということになります。本来であれば競合関係にある物流事業者が、共同物流を組み立てる際には、顧客として設定され、そこの満足追求をカスタマージャーニーを用いて設計することを推奨します。

顧客の目でそれをみると、顧客のニーズを満たす、顧客に貢献できる業務プロセスがみえるようになります。物流の業務フロー図を作成している企業も多いかと思いますが、そこには部、課といった命令系統や、モノの流れが書いてあるだけなので、どこで顧客の不満が生まれているのか、どういったニーズが潜んでいるのかが分かりません。当然それは、組織図や財務諸表を見たところでわからないのです。

業界は違いますが、弊社は現在同業他社の開発ベンダーとOneTeam体制を構築して企業の物流DXをサポートしています。物流でいえば共同物流のようなものです。同業他社と一緒になって、ユーザー企業の物流DXをサポートするわけですが、この場合の弊社からみた顧客はユーザー企業と開発パートナーということになります。弊社では、開発をお手伝い頂く開発パートナーを顧客に設定し、彼らがいかにすれば気持ちよく仕事ができるかを常に模索しています。Win-Winというのもすでに使い古された言葉かもしれませんが、そこを追求することでより良いチームを一緒になって作ることができ、それが結果としてユーザー企業の満足に繋がっています。そしてこのような取り組みや姿勢は、なかなか目には見えません。だから他社にはなかなか真似ができません。しかし、ユーザー側はそれを肌で感じとってくれます。共同物流も同じではないでしょうか。一緒になって物流を行うお互いが、自社の利益ばかりを考えて、信頼関係が構築されていない状態で一緒に物流をやったところで、上手くいくはずがありません。そしてそれは、ユーザーにも伝わります。ユーザーは敏感にそういった雰囲気を肌で感じ取るからです。

このように、カスタマージャーニーを用いる過程において、誰を顧客に設定するのかというのは共同物流のように多くの関係者が一緒になってサービスを提供する際にはとても重要になってきます。顧客を設定したら、その顧客の満足を追求するために、顧客の目線で、自社の提供するサービスの業務プロセスを見直します。


3.クリティカル・プロセスを捉える

 

顧客の目線で自社が提供するサービスをカスタマージャーニーマップで俯瞰してみると、自社の業務プロセスのどこに問題があるか、どこを改善したら顧客の満足が得られるかがわかってきます。これをクリティカル・プロセスと言います。

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このクリティカル・プロセスは現場の方には分かりません。自分の働いている部署の最適化のみを考えています。日々の業務に追われて、自社のサービスを顧客視点で俯瞰して見ることができません。またそのような教育も一切受けていないので、そもそも無理なのです。毎日ピッキング作業に奔走している人は、ピッキングの作業を時間内に処理することで頭が一杯です。カスタマージャーニーマップなどを活用して、「顧客の満足なくして企業の存在はない」という意識を植え付けることが大切です。
そうすることで、現場の人が顧客満足度追求に対する問題点を見つけ出し、全員参加でクリティカル・プロセスの改善を行えるようになることが理想です。試しに自社のジャーニーマップを作ってみてはいかがでしょうか。

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