デジタル技術が生み出すスピード経営 ~Amazonの物流戦略を探る~|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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デジタル技術が生み出すスピード経営 ~Amazonの物流戦略を探る~

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 画像素材:elevartuch /PIXTA

<目次>

1.”つながる”ことが重要な時代

2.あえて難しいことにチャレンジする

3.フルフィルメントオプション

4.ロボットによる自動化

5.そしていよいよ製造へ


1.”つながる”ことが重要な時代

 

今、世界中の企業はデジタルによる変革を迫られています。テクノロジーによる創造的破壊が、世界中のあらゆる国、業界で起こっています。
それは世界の大企業であっても、存続を左右するものと言えます。デジタルトランスフォーメーションには、新しいスキルとIT投資のシフトが必要です。

破壊的に変化できなければ競争から取り残されてしまうのです。デジタルトランスフォーメーションの構成要素は増え続け、時間とともにより安価で強力になっています。「このような時代にビジネスを変革する方法は?」これは多くの経営トップが頭を悩ませる問題です。

一つ、重要なキーワードがあるとすれば、”つながる”ことが重要な時代が到来したということです。大型コンピューターが主役の時代、小型のパーソナルコンピュータは「子供のおもちゃ」として、市場で過小評価されていました。しかし、その一台一台がつながりを持つことでインターネットが誕生し、お互いが”つながり”を持ったことで爆発的に普及し、絶大なる力を持つようになりました。

デジタル技術は今やビジネスの中心にあります。誰もがデジタル技術を使うことでゲームチェンジャーになれるのです。変化するビジネスニーズに迅速に対応し、優れた顧客体験を提供できる企業が生き残る時代です。ほとんど手間がかからず、わずかな時間で大規模なシステムを簡単に統合することができるようになりました。さらに今後は”つながる”ための技術開発は益々進み、かつて月単位の時間を要していた統合プロジェクトが、日単位でできるようになるでしょう。これにより俊敏性が向上し、新製品やサービスを迅速に提供できるようになります。


2.あえて難しいことにチャレンジする

 

サードパーティーとの連携も急速に増えています。その最たる事例がAmazonです。Amazonの売上の50%はサードパーティの販売者によってあげられています。
彼らの物流に目を向けると、海上コンテナ輸送を中心に各国企業の物流が混乱する中、Amazonは物流の内製化戦略によりその混乱に巻き込まれずにいます。
Amazonは数年前から中国で海上運送事業進出、独自の航空貨物輸送網の構築に加え、貨物船のチャーターや自社コンテナの製造などに取り組んでおり、その輸送費は約7兆円以上と言われています。その物流コストは年々増加していますが、「顧客利益の最大化」方針に基づく積極的な物流事業への投資戦略を続けており、その手を休める気配はありません。

■Amazonの自社専用のコンテナ

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(出典:ヒューストン港、G2オーシャンのHPより)

海上輸送では貨物船をチャーターすることで海運業者に依存しない体制を構築したり、中国で自社専用のコンテナを1万個以上製造しています。航空貨物事業では、
15億ドルを投じてケンタッキー州に航空貨物輸送用の大型ハブを建設しました。ラストワンマイル輸送についても、宅配事業の起業支援プログラム「デリバリー・サービス・パートナー」を始めています。Amazonは世界で最も物流に投資している企業であり、EC事業者が物流を内製化しているという風に見るよりも、もはや物流事業者が世界中に物流プラットフォーム構築し、そこであらゆる物を流通させているという風に見る方が自然でしょう。

Amazonの物流内製化戦略は、当初批判的な意見が多かったのです。しかし、Amazonはあえて難しいことにチャレンジする戦略をとりました。また難しいことにチャレンジする中で、テクノロジーの活用を発展させているようにも見えます。多くの企業は、ついいつもの簡単な方向にながされてしまいます。最初は大きな夢を抱いてスタートした変革プロジェクトが、いつの間にかスケジュールや予算が優先されて、簡単な方へ簡単な方へ流れていくのです。そこを変えない限り真の意味でのデジタル活用、デジタルトランスフォーメーションは生まれないと感じます。


3.フルフィルメントオプション

 

Amazonは販売者に2つのフルフィルメントオプションを提供しています。1つはFBA(Fulfillment by Amazon)で、もう1つはFBM(Fulfillment By Merchant)です。
FBAは、Amazonが販売者にフルフィルメントセンターの機能を丸ごと提供するサービスです。販売者の商品をAmazonの倉庫で預かり、注文に応じて梱包、発送、カスタマーサービスを提供します。FBMは、販売者が出荷の全プロセスを販売者自身で管理・実行する方法です。よって、Amazonへのサービス料やAmazon倉庫への商品の配送はありません。


4.ロボットによる自動化

 

ロボットによる物流自動化はAmazonの未来です。AmazonはKivaを購入することで、倉庫でのピッキング作業を自動化しました。彼らはその後AmazonRoboticsを立ち上げ、2020年にはロボットを45,000台にまで増やしたのです。さらに、Amazonは配達用のドローン開発に投資しています。彼らはそれをAmazonPrimeAirと呼んでいます。このドローンは、2Kg以下の商品をAmazonフルフィルメントセンターから10マイル以内の場所に約30分以内で配達します

■Amazonが開発中のドローン

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自動化は、Amazonサプライチェーン戦略の1つにすぎません。Amazonはその広大な倉庫と流通ネットワークにより、圧倒的な短納期で顧客に商品を届けることで高い評価を得ています。Amazonには、世界中に175のフルフィルメントセンター、北米に25の仕分けセンターがあります。これらは全てAmazon独自のものであり、20年間の運用を通じてこれを構築してきました。


5.そしていよいよ製造へ

 

Amazonはついに、製造を開始しました。メモ帳、バッテリー、バックパック、充電器などをAmazonブランドとして製造しているのです。彼らはこれを他社の数分の1のコストで製造するため、より低価格で販売でき、もちろん自社の物流でそれを顧客に届けるため、圧倒的なコストメリットを提供できるようになります。

自社で製造、販売、物流まで全てを自社オリジナルの世界ネットワークを構築することが今後のAmazonのビジョンとなるでしょう。そうなれば、世界中のありとあらゆる商品がAmazonと価格競争に陥ることになるでしょう。そして、何よりの脅威はやはり彼らが「テクノロジーによる創造的破壊者」であることです。

Amazonは、トラックのネットワークを介した配送をメタヒューリスティクスなどの技術によって最適化して、商品を最適な方法で運ぶことができます。AmazonはUSPSおよびUPSと提携しているだけでなく、場合によっては個人のバン、自転車、またはロボットによってラストワンマイルまで配達されます。また彼らの飛行機のネットワーク、世界の20の空港で飛行することができます。このようにあらゆる配送方法を適時増やしていきながら、それをデジタル機能で最適化しているのです。

Amazonでも良く売れる商品もあれば、あまり売れない商品もあります。Amazonはこうしたデータを当然知っているので、注文数が最も少ない商品群を保管する専用倉庫があります。それだけではありません。Amazonには、プライム配送、1日配送、ファーストクラス配送、無料のスーパーセーバー配送の有無に応じて、特定の商品用の特定の倉庫があります。更には確率レベルの需要予測を提供するAmazon Retail Analytics(ARA)もあります。このようにして、どの倉庫にどのような商品をいくつ在庫すれば一番最適なのかを彼らは知っているのです。こうした機能を一切持たない企業が、独自の商品力のみで争うことがいかに厳しくなるか、想像に難くありません。

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