アフターコロナでどうなる!?最新の米国Amazonの物流戦略を探る!|オープンソースの倉庫管理システム(WMS)【インターストック】

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アフターコロナでどうなる!?最新の米国Amazonの物流戦略を探る!

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 画像素材:metamorworks/PIXTA

<目次>

1.常に進化を続けるAmazonの物流戦略

2.マザータイプからリージョナルタイプへ

3.拡大モードから一転、倹約モードにシフト

4.効率と配送の分野で常に世界トップ

 

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1.常に進化を続けるAmazonの物流戦略

 

米国でAmazonは、書籍のネット通販を開始してから販売品目を著しく拡大して驚異的な勢いで売上を増加してきました。Amazonはネット通販企業として著しい成長を続けてきましたが、Amazonについて常に注目されてきたのは物流戦略です。

Amazonは創業当初から物流の重要性を認識しており、優れた物流システムを提供することで競争力を強化し、他社と差別化を図ってきました。ネット通販では、物流センター機能とラストワンマイルの配送機能の進化が求められますが、Amazonは必要な物流の機能を自前で調達する努力を続けてきました。

本稿では、常に物流を高度化する取り組みを積極的に行うAmazonの最新の物流戦略について探ります。


2.マザータイプからリージョナルタイプへ

 

Amazonはコストを削減し、配送速度を向上させるために、全国に主要なフルフィルメント・センターを配置するマザータイプ(集約型)から、各地域にフルフィルメント・センターを配置するリージョナルタイプ(分散型)への移行を行いました。

※マザータイプ、リージョナルタイプについて詳しくは以下の記事も参考にしてください。
 「物流アセット戦略の基本」~拠点施策の考え方と物流不動産について

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<各物流施設の開設>

・インバウンド・クロスドック・・・港湾周辺や鉄道貨物駅周辺に立地し、調達した商品を一次受けする施設。仕分け後、各施設に送る。
・フルフィルメント・センター・・・マザーセンター。自社便で直接消費者に配送や、UPSに配送委託。
・エア・ハブ・・・航空貨物を取扱う施設で空港周辺に立地。全米で9つのエア・ハブを保有。
・ソーティング・センター・・・郵便番号別に仕分けを行う仕分専用施設。
・アマゾン・フレッシュ・パントリー・・・生鮮食品専用のアマゾン・フレッシュとパントリーの専用施設。冷蔵・冷凍機能を持つ。
・デリバリー・センター・・・大規模都市の周辺に立地し、都市内のラストマイルの配送を行う。最近急激に増やしている。
・プライム・ナウ・ハブ・・・全米の大都市中心部付近に設置され、プライム会員向けに商品を取扱う小規模な物流施設。

Amazonは、コロナ過でネット通販需要が過熱したため、約2年かけてフルフィルメントネットワークの規模を2倍に拡大しました。しかし、新しく拠点が増えたため、各物流拠点間の効率は悪化してしまいました。そこで、Amazonは在庫配置戦略を見直し、商品を最終消費者の近くに配置することでこの非常事態に対応しました。各地域に8つの倉庫接続された物流拠点を設置し、在庫配置、物流システム、物流オペレーションに大きな変更を加えることで、各小さな地域で自給自足で商品を顧客に供給できる仕組みを構築したのです。

「フルフィルメントセンターと輸送ネットワークのすべてのプロセスを精査し、多くのプロセスと仕組みを再設計した結果、安定した生産性向上とコスト削減を実現した」と同社CEOのアンディ・ジャシー氏は述べています。

以前のマザータイプでは、注文された商品がフルフィルメント・センターに在庫がない場合、他の物流拠点から発送する必要がありました。そのため、配送リードタイムは長くなり、注文を処理するためのコストも増加していました。

リージョナルタイプに移行したことで、注文された商品は最終消費者に最も近い物流拠点から出荷されるため、翌日および同日に配達可能になりました。アンディ・ジャシー氏によると、2023年にプライム会員向けに史上最速の配送速度を実現できようになります。また、「移動距離が短いということは、サービスコストが低く、環境への影響が少なく、顧客が商品をより早く受け取れることを意味する」と彼は述べています。

 


3.拡大モードから一転、倹約モードにシフト

 

これまで旧CEOのジェフ・ベゾス氏によって拡大路線を貫いてきたネット通販の巨人Amazonは、新CEOのアンディ・ジャシー氏の新体制になり、コスト削減による倹約モードに一転、戦略をシフトしています。アンディ・ジャシー氏は、最近の収支報告で、フルフィルメント・サービスを提供するためのコストを削減することが最優先事項であると述べました。 その言葉通り、99の物流施設を計画中止・延期、または閉鎖し、30の州で約3230万平方フィートの物流スペースが削減されることになりました。(注:計画中であったスペースを含む)

■中止、閉鎖、延期となったAmazonの物流施設

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パンデミックに後押しされたネット通販ブームに対応するための物流施設増設ラッシュの後、同社のフルフィルメント・ネットワークの過剰なキャパシティが収益性を圧迫しました。コスト削減は今後も実施される見込みです。米国以外の5か国の21の施設も閉鎖、キャンセル、または延期されています。ピッキング、梱包、発送を行うフルフィルメント・センターと、最終配送のために注文を準備する配送ステーションは、コスト削減策の影響を最も受けた施設です。しかし、こうしたコスト削減を継続しながらも、ビジネスニーズにしっかり適合させ、従業員、顧客、パートナー、ドライバーの満足度を向上させる方針です。

 


4.効率と配送の分野で常に世界トップ

 

Amazonは物流を絶えず進化させることで、世界中のネット通販市場を完全に支配しようとしています。現時点で時価総額は5,000億ドル。米国のネット通販市場の約44%を保持しています。もはや同業他社はAmazonとの競争はあきらめ、いかに共存繁栄していくかを模索し始めています。
Amazonの物流の凄さは、鋭い適応能力です。効率と配送の分野では常に競合他社より数年先を行っているように見えます。他社はAmazonが行っているフルフィルメント・サービスに数年後に追いつくのがやっとという状況です。ある調査によると、同日配送が利用できない場合、買い物客の約4分の1がカートを放棄することがわかりました。これは顧客は現在でもますます短納期を期待していることを示しています。

現在は閉鎖や中止の話ばかりが聞こえてくるAmazonの物流戦略ですが、実は、合計8,200万平方フィートを超える231の施設を開設する計画はまだ残っています。そして、これらの施設の半分以上がデリバリーセンターになる予定です。より早く顧客に商品を届けたいという同社の戦略が見えてきます。
今後もAmazonの物流戦略に目が離せませんね。また機会があれば、Amazonの最新の物流戦略情報をレポートしたいと思います。

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